妻が出産すると女性として見られなくなる男性がいると聞いたことがありますが、もしかしたらうちの夫はそのタイプなのかもしれないと、私はひとりで悩んでいました。
仲良し夫婦に戻るための計画
どうにか昔のような仲の良い夫婦に戻りたいと思った私は、週末に娘を母に預けて、夫とデートに出かけようと考えました。おしゃれをしてふたりきりで出かければ、気分も変わるかもしれないと思ったのです。しかし、夫の反応は冷ややかなものでした。
「何がおしゃれしてデートだよ。いつまで女やってるつもりだ?」と全否定。
「いい加減ちゃんとした母親になれ! 女は捨てろ! いいオバサンなのによ……」とまで言われ、さすがの私もカチンときてしまい、大ゲンカになってしまいました。
子どもを持ったら、もう自分の身なりに気をつかうことは許されないのでしょうか。
女を捨てろと言ったのに自分は…?
デートに出かけるつもりだった週末の朝。夫は、私には「女を捨てろ」と言ったくせに、自分はお気に入りのジャケットを着て、いつもより早く起きてきました。どこかに出かけるのかと聞くと、「夜には帰る」とぶっきらぼうに一言。いつまでも鏡の前に立って、入念にヘアセットをしたりファッションチェックをしたりしています。
「夫は浮気をしているのではないか」と女の勘が働いた私。そういえば、子どもが生まれてからずっと帰りは遅く、私への態度も悪くなる一方です。居ても立ってもいられず、私は予定通り娘を実家に預けたあと、夫を尾行することにしました。
最寄り駅に到着した夫は、若い女性に向かって手を振り、親しげに合流。
「今日は露天風呂付きのいい部屋とってるからさ! 夜まで楽しもう♡」
耳を疑うような言葉が聞こえてきました。
思った通り夫はクロ! 私は物陰に隠れて、女性と親密に腕を組む姿を動画におさめ、その足で役所の宿直窓口で離婚届をもらってから帰宅したのです。
父親の自覚はあるの!?
深夜、ようやく帰宅した夫に浮気の証拠を突きつけた私。しかし、夫はうろたえるわけでもなく、飄々としています。
「あ、バレた? でも、ただの遊びだよ。外で発散してるだけだから仕方ないだろ。だって、母親はもう女じゃないじゃん」
悪いことをしている自覚が一切ない夫に、私は離婚届を差し出しました。
「もういい、離婚しましょう。今日、役所でこれをもらってきたから」
すると、待ってましたと言わんばかりの表情で鼻で笑った夫。
「ああ、わかったよ。俺も、口うるさい嫁といるより、自由になれるからラッキーだわ。これからは独身気分で楽しませてもらうよ」
夫はそう言い捨てると、迷うことなく署名し、あっさりと離婚に応じたのです。
あまりの身勝手さに言葉も出ませんでしたが、彼にとって私や娘は、もう自分の楽しみを邪魔する存在でしかなかったのでしょう。私たちはこうして、実にあっけなく他人になりました。
変わり果てた姿で再会
離婚から数年後。ショッピングモールを歩いていると、私の名前を呼ぶ声が聞こえました。振り向くと、そこにいたのはまさかの元夫! なんとなく面影があったからわかったものの、げっそりとやせ細って無精ひげを生やし、ボロボロのシャツを着ていて、数年前からは想像もつかない姿になっていました。
「ここで会えたのはきっと運命だ! 俺とやり直してくれ! 家族の大切さを思い知ったんだよ……」
そう言いながらボロボロと涙を流し始めた元夫は、近況を語り出しました。
離婚したあと、独身気分で派手にお金を使い込み、不倫相手にも愛想を尽かされて逃げられたのだそう。それでも見栄を張って生活レベルを下げられず、借金を繰り返した末に、ついには勤めていた会社にも居場所がなくなって自分から辞めてしまったとのことでした。
現在はアルバイトを掛け持ちして食いつないでいるとのことですが、かつての面影はどこにもありません。
もちろん隣にあの女性の姿はなく、ひとりぼっちで惨めな日々を送っているようでした。そんな話をされても、ヨリを戻すつもりなんて微塵もありません。私は冷ややかな視線を送り、その場を後にしました。
妻になって母になっても、一人の女性であることに変わりはありません。いつまでもきれいでいたい、夫に褒められたい……。そんな純粋な気持ちを踏みにじった報いなのでしょう。たった数年でここまで落ちぶれるなんて、因果応報はあるのだと実感した出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。