一方で、妹とは昔から折り合いがよくありませんでした。私の服や友人、好きなものまで横から手を伸ばしてくるようなところがあり、大人になってからは自然と距離を置いていました。
それでも結婚の報告はきちんとしようと、家族を集めて、彼を紹介したのです。
目の前に現れたのは、妹と私の彼!?
家族に彼を紹介してから数カ月後、家のインターホンが鳴りました。
ドアを開けると、そこに立っていたのはなぜか妹と彼。
二人が一緒にいることに驚いていると、妹はあっけらかんと笑って言いました。
「お姉ちゃん、ごめんね~私が彼のお嫁さんになるから。結婚式もそのまま私たちがやるね♡」
「結婚すること、どうせまだ身内にしか話してないんでしょ? 招待状も出してないなら問題ないよね?」
頭が真っ白になりました。
彼は目を伏せたまま、こう続けました。
「君より妹ちゃんのことが好きになってしまったんだ」
冗談であってほしいと願いましたが、二人は本気でした。怒りというより、全身が震えるほどの冷たい絶望が押し寄せました。
まず、私は両親に報告。当然、驚いていました。事情を伝えると、母は言葉を失い、父は「もう大人なんだから本人たちで決めればいい」とだけ言いました。感情的に怒るのではなく、家として積極的に関わることはしない、という姿勢でした。
「全力でお迎えしないと……」の意味
その夜、私は彼の母に電話をしました。事情を伝えると、しばらく沈黙が続きました。「……どういうこと?」声は明らかに震えていました。ひと通り話を聞き終えると、怒りを抑えたような低い声で言いました。
「そんなことをしておいて、結婚式? 親として恥ずかしいわ」
「破談なんて残念ね……じゃあ、しっかり言っておかないと」
その後、彼の母は妹と彼を家に呼んだそうです。事情をすべて知っていることを伝えたうえで、
「お姉さんと婚約していたのに、妹さんと結婚するなんて、何を考えているの!? 親族にどう説明するの。私たちは賛成できません。式なんてしなくてもいいでしょう」
けれど二人は聞き入れませんでした。
「もう決めたことだから」
「祝福されなくてもいい」
そう言って、式を強行することにしたそうです。
彼と妹は「ちゃんとした式にしないと、周りに何を言われるか分からない」「人数も多いし、ご祝儀である程度は戻るはずだ」と考えたようで、料理や装花、演出を次々とグレードアップしたといいます。
親の反対を押し切った以上、中途半端にはできない――そんな意地もあったのでしょう。
私を裏切った二人の結末
私と彼の両親は、親族に「婚約者が姉から妹に変わったこと」「自分たちは式に出席しないこと」だけを伝えたそうです。結果として、出席を辞退する親族が相次ぎました。「さすがに顔を出しづらい」「どう祝福していいのか分からない」そうした声もあったそうです。
私の両親は、父だけ出席し、母は欠席しました。
式は予定通り行われましたが、空席が目立ち、ご祝儀は二人が想定していた額には遠く及ばなかったといいます。人数が集まればある程度は回収できる――その見込みは大きく外れ、最終的な支払いは大きく膨らんだようです。
お互いの両親からの援助もなく、想定より少ないご祝儀と高額な請求だけが残った形になったふたりは、その後、金銭的な負担をめぐって言い争いが増え、ほどなく別居。
あれほど「祝福なんていらない」と言っていた二人は結局、誰の支えも祝福もないまますぐに離婚したそうです。
式には彼の会社の上司や同僚も招かれていました。以前私は彼の会社の同僚たちとの飲み会に顔を出したことがあり、挙式当日、新婦が私ではなく別人になっていたことでざわついたそうです。それ以来、「人としてどうなんだろう」という空気が社内に残り、彼を見る目が以前とは少し違っていると、人づてに耳にしました。
その後、私は……
妹の略奪婚によって婚約は解消となり、しばらくは眠れない夜が続きました。それでも時間がたつにつれ、「あのときでよかったのかもしれない」と思えるようになりました。
妹だけでなく、信じていた彼に裏切られた事実は、今も胸の奥に残っています。けれど、人生を共に歩む相手が彼ではなかったと、結婚前に気づけたのです。
そう思えば、あの出来事は不幸というより、これ以上傷つかないための転機だったのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。