フードコートで座席を確保した瞬間
週末、娘と一緒に大型ショッピングモールのフードコートへ行きました。お昼時の混雑で席がなかなか見つからず、ようやく一箇所空いたところを見つけたときのことです。
娘が先に椅子へ腰を下ろし、私がテーブルにバッグを置こうとした、まさにその瞬間でした。横から年配の女性グループが割り込むように来たのです。
驚いている間に椅子を引かれ、「ここは私たちが先に目を付けていたのよ」と強い口調で言われてしまいました。娘がすでに座っている状態だったにもかかわらず、そのままその席を使われる形になり、私は呆然とするばかりでした。
言い返そうにも、相手のあまりに威圧的な態度に言葉が詰まってしまいました。怒りと悲しみと、どうしていいかわからない困惑で、その場に立ち尽くすことしかできなかったのです。
ふと見ると、娘が不安そうな顔で私を見上げています。周囲の視線も気になり、このまま言い争うわけにもいかないと判断し、結局その場を離れて別のフロアへ移動することに決めました。
情けない気持ちで歩いていると、後ろから見知らぬママさんが追いかけてきました。そしてこう声をかけてくれたのです。
「さっきの、本当にひどかったですよね。あちらの席、私が確保しておいたのでよかったら先に使ってください」
驚いたことに、その方はご自身のご家族が使うはずだった席を、私たちに譲ってくださると言います。その方にもお子さんがいたのでとても申し訳ない気持ちになり、最初は断りました。しかし、「娘さん、さっきとても不安そうでしたよね。気になってしまって。うちの子たちはもう小学生なので大丈夫です」と笑顔で言ってくださったので、お言葉に甘えることに。
思いがけないやさしさに触れて、ショックで沈んでいた気持ちがすっと軽くなるのを感じました。怒りや悲しみで複雑な気持ちだった私にとって、こんなふうに誰かをそっと助けてくれる温かい人がいるのだと知れたことは、大きな救いでした。
あの日以来、私も公共の場では周りの様子をより意識するようになっています。もし困っている親子を見かけたら、あのときのママさんのように迷わず手を差し伸べられる自分でありたい。今はそう強く思っています。
著者:田中冬/20代女性/3歳の娘を育てている母親、会社員。両親との同居を検討中
イラスト:きりぷち
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年12月)