ある朝、息子の夜泣き対応で寝不足のまま夫のお弁当を作ると、夫は「全部昨日の余り物じゃん」「主婦のくせに時間の使い方が下手」と私を責め立てました。私が少しでいいから育児を手伝ってほしいと頼むと、「月10万も稼げない役立たずが愚痴ばかり言うな」と私のささやかな仕事を鼻で笑う始末。
ここ最近の夫は、1年前に母を亡くし、身寄りがない私に対して「俺に捨てられたら終わりだろ」とモラハラまがいの発言も繰り返していました。
突然現れた祖父
そんな日々を過ごしている中、突然私の元に祖父を名乗る男性から連絡がありました。母は昔、実家と絶縁して父と駆け落ちしたため、私には祖父の記憶がありません。
最近になって母の訃報を知ったという祖父は深く悲しみ、母と絶縁状態のまま、一度も会いに行かなかったことへの後悔など、これまでの苦悩を話してくれたのです。そして「いつか……自分が死ぬまでには娘と和解したいと思っていたんだが、叶わなかった……」と涙ながらに語り、母に相続させるつもりだったという、祖父が所有する都内の別宅を私に譲りたいと申し出てくれたのです。それは資産価値にして、およそ1億円にもなる立派な戸建てでした。
この事実を知った夫は「すぐに引っ越そう!」と大興奮。荷造りなど面倒なことはすべて私に押しつけ、「手続きが終わったら、俺に名義変更しといて。そのほうが今後、何かと便利だろう」と命令まで……。
それからの夫はというと、わが家の家計では叶わなかった都内での暮らし、立派な戸建てでの生活を夢見て、ひとり勝手に浮かれていました。
私は税金や手続きについて、祖父と一緒に専門家に相談しながら進めていき……。
新居乗っ取り計画
そして、いよいよ迎えた引っ越し当日。夫は「引っ越し業者には俺が立ち会うから、お前は息子を連れてカフェにでも行って休んでてよ」と珍しく気遣いを見せました。そのため私は、新居近くのカフェで息子とお茶をして過ごすことに。しかし、作業が終わったころを見計らい連絡すると、夫から信じられない言葉が返ってきたのです。
「お前はもう帰ってこなくていい」
「1億の新居には彼女と住む! 息子を連れて出ていけ、離婚だ」
なんと、夫は不倫相手と新居を乗っ取ろうと企んでいたのです。
「私の家だけど?」
夫は自分名義の家になったと勘違いしていたようですが、家は私が譲り受け、私のものになる予定。実はまだ手続きは完了しておらず、正確にはまだ祖父のものでした。もちろん、夫名義に変更などしていません。それでも引っ越しを進めたのは、祖父の厚意。賃貸の更新時期が近かったため、手続きが終わる前から住ませてもらうことになっていたのです。
「は?」
夫は一瞬「どういうことだよ!?」と動揺したものの、その後すぐ「まぁどうでもいいか。お前を住まわせてやってもいいが、俺も彼女とこの家で暮らすからな! それでも一緒に住みたいか?」と。私はあきれ果て、何も言い返す気にはなれませんでした。それに私は、夫が不倫していることもすでに知っていました。
実は、贈与の手続きを進めるにあたり、私が祖父に「夫に言われたとおり、名義変更したほうがいいのだろうか」と相談したことをきっかけに、祖父が私と息子の将来を案じて探偵に夫の調査を依頼してくれていたのです。
そこで判明したのは、夫が長期間にわたり不倫をしており、しかも就業時間中に仕事をサボり、デートを楽しんでいたということ。事実を知って離婚を決意した私は、祖父と相談し、離婚で揉めないよう、贈与の完了は離婚成立後にすることにして、手続きはいったん止めていました。
身勝手な夫の末路
しかし、新居には強引に夫と不倫相手が住み始めています。仕方がなく私は、息子を連れ、しばらく祖父の家へ身を寄せました。弁護士を通じて離婚の準備をしていたところ……。
それは引っ越しからわずか5日後のことでした。夫は上司に呼び出され、すでに進んでいた社内調査の最終結果を言い渡されたそう。なんと、以前から社内では夫の勤務態度を問題視する声が上がっていたようで、夫に関する調査が行われていたのだそうです。
結果、解雇こそされなかったものの、田舎の小さな地方支店への異動辞令(降格処分)を受けた夫。その直後、不倫相手とは音信不通になってしまったとのこと。不倫相手との新生活は、たったの5日で終了。きっとお金目当てだった不倫相手は、地方へついて行く気などなく、減給されると知って、見切りをつけたのでしょう。
夫は「彼女とは別れた! 俺が間違っていた! この家で家族で一緒に暮らせるよう、転職もするし、これからは家事も育児も手伝う」と必死にすがってきましたが、私はきっぱりと拒絶しました。
その後、弁護士を通じて、私たちは無事に離婚が成立。きっちり慰謝料を回収し、養育費の支払いも約束させました。夫は義両親からも勘当され、ひとりさみしく地方へ引っ越していきました。
一方、私は祖父のサポートを受けながら、離婚成立後に正式に祖父から家を譲り受け、今は息子と穏やかに暮らしています。さらに、家事と育児の合間に、ライターの仕事を受けていた会社から声をかけていただき、息子が保育園に入園したタイミングで正社員として働き始めることもできました。これからは息子と一緒に、自分たちらしい幸せな時間を積み重ねていきたいと思います。
◇ ◇ ◇
家族を大切にせず、自己中心的な振る舞いや裏切りを繰り返せば、いつか必ず自分に返ってくるということなのかもしれませんね。身勝手な相手に対しては、泣き寝入りするのではなく、専門家や周囲の助けを借りながら、自分と子どもが心から笑って過ごせる環境を最優先に選び取る勇気を持ちたいですね。
【取材時期:2026年2月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。