【医師監修】 肥満女性の妊娠、赤ちゃんへの影響や気を付けることは?

2019/10/12 12:30
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この記事では肥満女性の妊娠について、医師監修のもと解説します。母子ともに健康な体で出産するには、妊娠前から食生活に気を付けて体重管理をおこなうことが大切です。
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肥満のイメージ

 

肥満の女性が妊娠した場合、どのような影響が出てくるのでしょうか。この記事では、肥満の女性が妊娠した場合の影響を解説します。

 

「肥満」とはどういう状態?

肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積した状態のことで、標準より体重が多い状態のことをさします。BMI(Body Mass Index:肥満指数)が指標として一般的に用いられています。BMIは、体重(kg)を身長(m)で2回割った値で簡単に計算できます。

 

肥満の定義は国や団体によって多少異なりますが、WHOによる肥満の判定基準はBMI30以上、日本ではBMI25以上が肥満とされることが多いです。米国ではBMI25から30を「overweight:過体重」、30以上を「obese:肥満」と呼んでおり、肥満の多い米国では、BMI25から30までを病気として考えるかどうかについて、日本とは若干ニュアンスが異なります。

 

ただ単に「体重が重い」というだけでは肥満とはいえません。例えば同じBMI25の人については、身長160㎝なら体重64㎏(64÷1.6÷1.6=25)、身長150㎝なら体重56㎏、身長170㎝なら72㎏ということになります。仮に150㎝、160㎝、170㎝の人が3人いたとして、体重56㎏、64㎏、72㎏だったら、3人とも同じ「肥満度」になります。ここではBMI25 以上の人を「肥満」としてお話ししていきます。

 

肥満女性が妊娠したときの母体や赤ちゃんへの影響は?

肥満女性が妊娠した場合、妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病になるリスクが高いとされています。

 

妊娠高血圧症候群は妊娠中に血圧が上昇しタンパク尿を伴う状態のことをいいます。血圧が異常に上昇することによって、母体のけいれん発作(子癇/しかん)を誘発し母体死亡率が上昇するとともに、胎児発育不全・早産のリスクが高まります。発症のしくみはまだ不明の点もあるのですが、肥満の人に発症者が多いことが指摘されています。また、常位胎盤早期剥離という病気は妊娠中に胎盤が子宮からはがれて胎児死亡の原因にもなる重症妊娠合併症の一つですが、これも妊娠高血圧の発症者に多いとされます。

 

妊娠前から糖尿病と診断されている人は妊娠・出産に関してリスクが上昇するのは周知のところですが、妊娠前に血糖値が正常で、妊娠中の検査で初めて糖の代謝異常を指摘された人は妊娠糖尿病と呼ばれます。肥満は糖尿病や妊娠糖尿病と関連が深く、日本人約14万人の統計データによると、妊娠前のBMIが18.5未満、25未満、25以上の場合別で糖代謝異常の割合は、それぞれ1.0%、1.8%、10.4%です。

 

妊娠糖尿病を持っている人には巨大児(赤ちゃんの出生体重が4,000g以上)の出産が増えたり、また陣痛が微弱になることが多く、難産にともなう吸引・鉗子分娩の増加、帝王切開率の増加が認められています。産後の子宮収縮も悪くなり、分娩前後での出血量が有意に増加し出血多量となり、輸血をしなければ命が助からない状態になるリスクも増加します。

 

また一方で、妊娠中に胎児死亡を起こすリスクも肥満や糖尿病、妊娠糖尿病で増加することが知られています。胎児期の神経の形成に異常(神経管閉鎖障害)をきたすリスクも糖代謝異常がなくても肥満の妊婦で上昇します。糖尿病や妊娠糖尿病など糖代謝異常の母体から生まれた子は将来、肥満、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧になるリスクが高いことも近年明らかになってきました。

 

肥満女性が妊娠したときは何に注意したらいいの?

・食事について
厚生労働省が策定した日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、妊娠前のBMIが18.5以上25未満の妊婦の場合、妊娠40週で3kgの赤ちゃんを出産するのに必要な体重増加量は11kgです。標準体重(BMI25まで)の人では、妊娠中の体重増加は7~12㎏が理想とされていますが、ここで取り上げる肥満の妊婦については「個別対応」となっています。妊娠中は体重は増えることはあっても減らすことはほぼ不可能ですから、肥満の人が妊娠した場合はこれ以上増やさないよう努めるより他ありません。

 

妊娠中は赤ちゃんのために必要な栄養をしっかり摂ることは大事です。肥満の方は食事のカロリーが多いケースもあるので、まず自分の食生活を見直して、一日の摂取カロリーを見直しましょう。あまり食事の栄養を気にしない人で肥満になっている人ほど、糖質過多の食事になっていることがあります。カロリーは控えながら、胎児の正常な発育に欠かせないたんぱく質、脂質、ビタミン類を適量摂ることが望ましいです。

 

厚生労働省が2006年に策定した「妊産婦のための食事バランスガイド」で示されているようにビタミンやミネラルが不足しがちなため、副菜でしっかりと緑黄色野菜を食べることが大事です。緑黄色野菜に多く含まれる葉酸は、子どもの神経系の先天異常を予防することに関係しています。また、肉・魚・卵・大豆などのタンパク質の豊富な料理をバランス良く摂ることがポイントです。特に、赤身の魚や肉をじょうずに取り入れると、貧血を防げます。牛乳や乳製品などさまざまな食品を組み合わせてカルシウムをたっぷり摂ることが必要です。

 

・運動について
運動も重要です。多くの人が自分の車や電車で移動し、掃除はロボット、衣類の洗濯も皿洗いも自動、買い物はネット通販という今、昭和や明治時代の人の生活を想像すると、体を動かす必要のあることが格段に少なくなっています。妊娠中も仕事をしていて一定の運動量がある人は別として、昔の人の生活と比べて便利なライフスタイルに変わっているので知らない間に人は運動不足になっています。

 

ガイドラインでも示されているように転倒したり外傷を受けやすいスポーツは避けたほうがいいのはもちろんですが、肥満を予防し、食事の摂取カロリーを上げることも可能になりますので、妊娠中のエクササイズ(=運動)はウォーキング、水泳、エアロビクスなどを選んでおこなうと良いでしょう。運動量の増加により適正体重を維持でき気分転換にもなります。
 

 

まとめ

母子ともに健康な体で出産するには、妊娠前から食生活に気を付けて体重管理をおこなうことが大切です。

 


■参考

一般社団法人日本肥満学会「肥満の判定と肥満症の診断基準について」 

産婦人科診療ガイドライン-産科編2017
厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」

 

監修者

医師 川島 正久 先生

産婦人科 | あんずクリニック産婦人科院長


静岡県磐田市生まれ。平成5年神戸大学医学部卒業、神戸市立中央市民病院/淀川キリスト教病院、磐田市立病院に勤務の後2011年にあんずクリニック産婦人科を開業「お産を通して人々に喜びを与える」をモットーに地域の人々のお役に立てるよう励んでいます。

 


経歴

■主な経歴

静岡県立磐田南高等学校卒業
筑波大学 生物学類中退
神戸大学医学部卒
1993年~1995年    神戸市立中央市民病院
1995年~1996年    六甲アイランド病院
1997年~2002年    若宮病院
2002年~2003年    日本医療救援機構(アフガニスタン)
2003年~2004年    浜松医大 産婦人科
2004年~2005年    蒲原病院
2005年~2008年    藤枝市立病院
2008年~2011年    磐田市立総合病院



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