おにぎりが繋いだ本当の絆
息子が保育園に通っていたころにいた、意識高い系のAさん。Aさんは「これからのママ友コミュニティは、お互いを高め合えるサードプレイスじゃなきゃ!」とSNSでよく語っていました。そんなAさん主催のランチ会は毎週末、一食3,000円以上するお店。食事中もAさんは「今の表情、〇〇さんの笑顔が引きつってるわ」「そこに写ってるバッグ、ちょっと安っぽいから隠して」などと何度も写真を撮り直し、私たちは冷めた料理を食べるのが当たり前になっていました。私たちはまさに彼女のSNSを彩る「映えるエキストラ」です。
Aさんに「みんな一緒が一番よ」と言われ、半ば強制的にランチ会に参加させられていた私。子どもが友だち同士なこともあり半年ほどは頑張って参加していましたが、パートで働く私にとって1回のランチに3,000円近く使うのはもったいなく、家族との時間も削られることに限界を感じていました。
ある日Aさんが「今週の日曜日は新しくできたパンケーキのお店を予約したから、全員集合ね!」と高らかに宣言したとき、私の心に浮かんだのは「今週こそは家族の時間を守りたい!」という思いでした。勇気を出して「ごめん、今週は息子とおにぎりを作って近所の公園にピクニックに行くって約束してるから、やめておくね」と断ります。するとその瞬間、周囲が凍りついたのがわかりました。Aさんは憐れむような目で私を見つめ「え……おにぎり? せっかくの休日にそんな貧乏くさいことするなんて寂しくない? 子どももかわいそうよ」と鼻で笑います。取り巻きの人たちも困ったように目を逸らしていました。私は恥ずかしくなり、逃げるように息子を連れ「じゃあ、また来週」とだけ伝えて家へ帰ったのです。
その週の日曜日、公園のベンチで手作りのおにぎりを入れたお弁当を息子と頬張っていると、不意に背後から声をかけられました。振り返ると、そこにはいつもAさんの後ろで黙って頷いていたBさんが立っています。彼女の手には手作りであろうお弁当の袋。「実は私もあのランチ会、お財布が厳しくて……。あなたが断った姿、すごく格好よかった」と言い、照れくさそうに笑いました。すると不思議なことに、ひとり、またひとりと、別のママたちも合流してきたのです。みんな「実は私も無理してたの。今日の集まりは、子どもとゆっくり過ごしたいって事前に断ってきたわ」「毎週はちょっとね」と口を揃え、本心では自分たちのペースで過ごしたいと願っていたことが判明したのでした。
結局、その日は私たちを含む8人のママとその子どもたちが集まり、青空の下で賑やかなピクニック状態に。キラキラしたランチより、手作りのおにぎりと他愛もない笑い話のほうが、よっぽど心を満たしてくれました。
Aさんはパンケーキランチの参加率が低かったことに腹を立てたのか、その後私たちを避けるようになっていきましたが、高級なランチ会を強制されなくなり、正直ほっとしました。結局その後はランチ会が開かれることはなくなり、Aさんに会ってもあいさつを交わす程度。卒園まで平穏な日々を送ることができました。
ひとりぼっちを覚悟してランチ会を断りましたが、同じ思いを抱えていたママたちがいてくれて心強さを感じたこの一件。私の小さな勇気は、結果として無理をしない本当の仲間を見つけるきっかけになったのです。言いたいことを我慢して無理な関係を続けるより、家族との時間や都合を心置きなく優先できる、気の合うママ友を見つける大切さを改めて実感しました。
著者:佐野千佳/30代・パート。9歳の息子と4歳の娘を育てながら、週5回パートに出るワーママ。自分のしたいことも楽しむアクティブ系女子。真面目でやさしく研究熱心な息子と、ポジティブで明るくひょうきんな娘に癒やされる日々を送っている。
作画:fukafuka
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年1月)