新店長「バイトで十分!」突然のクビ宣告
新店長は、とにかく利益と効率ばかりを求める人物。私が「現状は1日150匹が限界」と伝えても、「もっと数をこなせるだろ!売上を伸ばせ!」と不満を漏らしていました。
そしてある日の営業後、店長に呼び出された私は、信じられない言葉を突きつけられます。「秘伝のレシピとタレさえあれば、バイトで十分だ! お前みたいな給料泥棒は今日でクビだ!」
熟練の私を追い出すことで人件費を削減し、利益が上がったように見せたいのでしょう。実際には、そんな簡単にクビにできるはずもなく、店長が無茶を言っているだけだとわかっていました。けれど、こんな人物の下で働き続けたいとは思えず、私は自ら店を去ることにしたのです。
怒りよりも呆れが勝った私は、「レシピとタレは置いていきますよ。せいぜい頑張ってください」とだけ言い残し、静かに店を去りました。
同じレシピなのに不味い!? 絶句した鰻重
私が去った後、店長は未経験のアルバイトを雇い、マニュアル通りに鰻を焼かせたそうです。数日後にお店を視察に訪れたオーナーと一緒に出来上がった鰻重を食べた瞬間、2人は絶句することになります。
「レシピとタレは同じはずなのに……信じられないくらい不味い!?」
実は、鰻の味の決め手はレシピやタレだけではありません。その日の気温や湿度、そして鰻の個体差に合わせて「蒸し時間」や「炭火の火加減」を秒単位で微調整する。それこそが、長年の経験で培われた私の技術でした。マニュアル通りに焼いただけで、簡単に真似できるものではなかったのです。
評判は急落し赤字に…新店長の悪事も発覚
改善を重ねたようですが、以前の味には戻らず、店の評判は急落。あっという間に客足が遠のき、お店はかつてないほどの大赤字に陥りました。
事態を重く見たオーナーが調査に乗り出したところ、やはり私の予想どおり、店長は私を追い出して人件費を削減し、あたかも業績が上がったように見せかけていたのです。さらに、浮いた人件費の一部を着服しようとしていたことまで発覚しました。
激怒したオーナーに「店の看板に泥を塗るとは言語道断!」と一喝され、店長はその場で懲戒解雇されました。
オーナーが自宅にやってきて…その後、私は
それから数日後。なんとオーナーが私の自宅までやってきて、深々と頭を下げてきました。
「今回のこと本当に申し訳ありません。どうか、もう一度うちの店で腕を振るっていただけませんか」
オーナーの必死の謝罪と熱意に心を動かされた私は、以前よりも少し高い給料を提示してもらったこともあり、店に復帰することを決意。今ではお店もすっかり元の活気を取り戻し、お客様に喜んでいただいています。
◇ ◇ ◇
どれほど秘伝のレシピや道具がそろっていても、長年の経験によって培われた技術や勘までは簡単に代えられないものですよね。目先の利益や効率ばかりを優先し、現場を支えてきた人の価値を軽く見てしまえば、結果としてお店全体の信頼まで失ってしまうこともあるのかもしれません。人の手で受け継がれてきた仕事の重みや、それを担う人への敬意をあらためて感じさせられますね。
【取材時期:2026年3月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。