ある日、同じ部署の後輩女性から、思いもよらない話を聞かされました。なんと彼女と夫が、3カ月ほど前から交際しているというのです。
「先輩には申し訳ないんですけど、彼とは真剣に付き合ってるんです」
会議室に呼び出されて切り出された言葉に、私は頭が真っ白になりました。後輩は悪びれる様子もなく、むしろ堂々とした態度でした。
夫を略奪した後輩からの要求
彼女は私より5歳年下で、明るくて愛想がよく、社内でも評判の女性でした。一方の私は、もともと人付き合いが得意なほうではなく、真面目が取り柄。
結婚して半年、結婚生活に慣れるにつれ、家では気を張らずに過ごすことも増えていました。思えば、夫との会話も減っていたかもしれません。
「奥さんといても楽しくないって、彼が言ってました」
彼女の言葉が、胸に突き刺さりました。悔しさと情けなさで涙がこみ上げ、何も言い返せませんでした。そんな私に彼女は畳みかけてきます。
「先輩は彼の足かせになってるんですよ」
「彼はエリートなのに、隣にいるのは地味でさえない先輩。このままじゃ、彼のイメージだだ下がりですよ!」
エリートとしてさらに輝く未来が待っている夫には、華のある若くてきれいな自分が必要だと得意げに言ってきます。さらに勢いづいた彼女は、とんでもない要求まで……。
「慰謝料はお手ごろ価格でお願いしますね、先輩っ♡」
「彼の妻も会社も辞めてください♡」
「すぐ辞めるね!」
夫と不倫相手が仲むつまじくする職場で働くなんて、気持ちが悪くて無理です。しかし当然ながら慰謝料の件については却下です。私は心の中で、それ相応の責任は取ってもらおうと決めました。
「え?」
「いいんですか!?」
彼女には、私が予想外にあっさり引き下がったことが不思議だったようです。しかし、すぐに勢いを取り戻し、「まぁ、私と争うなんて負けが確定だから、さっさとしっぽ巻いて逃げて正解です! 先輩賢い〜♡」と言われました。
気分がよさそうだったので黙って聞いていましたが、そういうことではありません。ショックではありましたが、『結婚して間もないうちから不倫をする夫なんて、奪われても惜しくない』そう思っただけでした。
あっさり不倫を認めた夫
家に帰って夫を問い詰めると、夫はあっさり不倫を認めました。それどころか、「彼女と一緒になりたい」と……。
「悪いけど、もう気持ちは戻らない」
夫のきっぱりとした態度に、私はかえって冷静になりました。このときはもう悲しくもつらくもありませんでした。
後日、私は弁護士に相談し、離婚の手続とあわせて、不貞行為に対する慰謝料請求や財産分与について協議を進めることにしました。夫はしぶしぶでしたが、最終的には離婚条件を受け入れました。結果、夫からも後輩からも相応の慰謝料を受け取ることができました。
会社については、退職することにしました。上司は引き止めてくれましたが、私の決意は変わりませんでした。退職後はしばらく実家で休養し、その間に資格の勉強を始めました。以前から興味のあった事務系の専門資格を取り、半年後には別の会社に再就職することができたのです。
新しい職場は落ち着いた雰囲気で、実家からも通いやすい場所にあり、心機一転、明るい気持ちで新生活を始めました。
離婚から1年後
離婚してから1年ほどたったころ、仲のよかった元同僚から「最近何してるの? ごはんでも行こう〜」と連絡がありました。そのときに聞いた話ですが、夫と後輩はすぐに入籍したものの、うまくいっていないそう。夫は家事をほとんどせず、休日もスマホばかりいじっているそうで、後輩は「こんなはずじゃなかった」と愚痴をこぼしているとのことでした。
正直なところ、今の後輩の苦労が手に取るようにわかります。私も以前は夫の身の回りを整えたり、仕事の愚痴を聞いたり、家のことも一手に引き受けていました。私は夫を甘えさせすぎていたのかもしれません。離婚してひとりになってみて、自分の時間を自分のために使えるということが、どれほど幸せなことかを改めて痛感しています。
今は趣味の習い事に通ったり、友人と旅行に出かけたり、穏やかに過ごしています。これからもこのささやかで、幸せな生活を大切にしながら生きていきたいと思います。
◇ ◇ ◇
信じて一緒になったはずのパートナーに裏切られたという経験は、心に深い傷を残すことでしょう。しかし、そこからどう立ち上がるかは自分次第なのだと思います。無理に関係を修復しようとするのではなく、冷静に状況を見極めて次の一歩を踏み出した妻の選択は、結果的に自分の人生を取り戻すことにつながったのではないでしょうか。
「離婚」は簡単に決断できる選択ではありませんが、裏切りに直面したときこそ、感情だけで動かず、信頼できる人や専門家に相談しながら、自分を守る選択をしていきたいですね。
【取材時期:2026年4月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。