以前は夜のお店で働いていたようですが、いつの間にか辞めていて、現在は無職。カードの支払いも滞っていると聞いていました。実家の両親も、もう手に負えないという様子でした。
私たち姉妹は顔がよく似ていて、昔から間違えられることがありました。そしてある日のこと、それが思いがけない出来事につながっていったのです。
留守中に訪ねてきた男性
ある休日、妹が母が持っていた私の家の合鍵を勝手に持ち出し、私の留守中に勝手に家に上がり込んでいたことがありました。そこへ、ある男性が私を訪ねてきたそうです。
玄関先で対応した妹は、私と間違えられたことをいいことに、長々と世間話をしたのだとか……。
「すっごいタイプの人だった! お姉ちゃんの知り合いなんでしょ? 紹介してよ」
後日、妹から得意げにそう言われ、私は血の気が引きました。その男性は、以前合コンで知り合った男性で、しつこく連絡をしてくる人だったのです。会ったのはその合コンの一回きりでしたが、何度拒否してもSNSで友だち申請を送ってきたり、会社の最寄り駅で待ち伏せされたりしたこともあり、警察への相談も考えるほど恐怖を感じていました。
そして今回の件です。私は、『家までバレているんだ……』と、ゾッとしました。
「あの人は本当にやめたほうがいいよ。私もう関わらないようにしてるから」
事情を説明し、忠告もしましたが、妹は「お姉ちゃん、私にいい人取られるのが嫌なんでしょ〜」と笑うばかり。
このときの私には、このやり取りがどんな結末を招くか、想像もつきませんでした。
妹からまさかの連絡
それから半年ほどたったある日、妹から連絡がありました。
「お姉ちゃん、婚約者を奪ってごめん〜まだ怒ってる?」
「もう水に流そうよ!」
私は一瞬、何の話か分かりませんでした。
「婚約者なんていないけど……?」
「え?」
なんと妹は、あの日、私の家に訪ねてきた男性と付き合い始めていたのでした。きっと妹は、私がその男性と深い関係にあったと思い込んでいたのでしょう。最初は私への当てつけのつもりだったようですが、今は結婚を前提に同棲しているのだとか。「お姉ちゃんの彼氏を奪った」と優越感に浸りたかったのかもしれません。
男性のほうも、私に執着していたはずなのに、あっさり妹と交際を始めたのだそうです。顔が似ている私の身代わりのような感覚だったのでしょうか……。
しかし、妹がのめり込んでいる様子を聞いていると、嫌な予感もしていました。妹から「入籍した」「2人だけで結婚式もした」と連絡があった数カ月後には、案の定、悲痛な連絡が入るようになったのです。
日に日に束縛が強くなり、外出時は逐一報告させられる。宅配便を受け取っただけで浮気を疑われ、長時間責め立てられる。家事に少しでも不備があれば、怒鳴られて物を投げられることもあるのだとか。
「もう限界。助けて、お姉ちゃん」
そう泣きつかれましたが、私は「まずは警察や相談窓口に連絡したほうがいい」と伝えるのが精一杯でした。
実はそのころ、両親はすでに妹と距離を置く決断をしていました。これまでの借金の肩代わりや近所への謝罪など、振り回され続けた末の結論でした。引っ越しもして、連絡先も妹には教えていなかったのです。長年の心労から解放された両親は、ようやく自分たちの老後を楽しみ始めたところでした。
そのころ私は、海外支社への赴任が決まり、すでに日本を離れていました。学生時代から語学の勉強を続け、仕事でも地道に実績を積んできた結果、ようやくつかんだチャンスでした。妹が遊び歩いていたころも、家族が頭を下げて回っていたころも、私はただ黙々と自分の道を歩んでいたのです。
妹のその後
私が両親と自分の現在を伝えると、妹は電話口で泣き崩れている様子でした。
「男性との関係は、公的な相談窓口に相談すれば、状況に応じて支援してもらえるはずだよ。まずは自分で連絡してみて」
そう伝えて、私は電話を切りました。その後も何度か連絡はありましたが、同じ話の繰り返しで、私への謝罪より「助けて」の一点張り。私が介入したところで解決はしないという旨を何度も説明し、相談窓口の電話番号などを調べ、妹に伝える。そんなやり取りを続け、妹は相談窓口や弁護士の助けを借りながら別居し、その後、時間はかかったものの離婚することができたそうです。
その後は日本にいない私にはもう用はないとばかりに、妹からの連絡はぱったりとなくなりました。
そんな私は、海外での生活にも慣れ、仕事もプライベートも充実した毎日を送っています。両親とは、時々ビデオ通話で話しています。以前より表情が穏やかになった両親を見ると、妹と距離を置くという選択は間違っていなかったのだと思えます。
これからも両親の生活と、自分の生活を大切にしながら、生きていきたいと思います。妹とは縁を切ったわけではないので、もしまた連絡があれば、無理のない範囲で力になりたいと思っています。
◇ ◇ ◇
血のつながった家族であっても、その関係が自分の人生を蝕むほどの負担になっているなら、距離を置くという選択肢も決して間違いではないのかもしれません。家族を突き放すことに罪悪感を抱くこともあるでしょう。ただ、相手を助けるためにできることには限界があり、本人が動こうとしなければ状況は変わらないのも事実です。もしも、家族が困っているのなら、自分の生活を守ることを優先しつつ、無理のない範囲で力になりたいですね。
相談窓口をいくつかご紹介します。
※よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
ガイダンスで専門的な対応も選べます(外国語含む)
0120-279-338 つなぐ ささえる(フリーダイヤル・無料)
岩手県・宮城県・福島県から 0120-279-226 つなぐ つつむ(フリーダイヤル・無料)
※こころの健康相談統一ダイヤル
電話をかけた所在地の都道府県・政令指定都市が実施している「こころの健康電話相談」等の公的な相談機関に接続します。
0570-064-556 ※相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります。
※DV相談ナビ
全国共通の電話番号(#8008)に電話をすると、お近くの都道府県配偶者暴力相談支援センターにつながります。
#8008(はれれば)※相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります。
【取材時期:2026年4月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。