「月15万で十分だろw」現場を知らない2代目社長
ある日の夕方、事務所に呼び出された僕たち個人事業主に、2代目社長はニヤニヤしながら衝撃の通達をしました。
「来月から、歩合制はやめて全員一律で『月額15万円』の固定報酬にするから。これでも出しすぎなくらいだよ」
あまりの暴挙に、ベテランの同僚が「冗談じゃない!それじゃ生活できないよ! 売り上げは上がっているのに、なぜこんな大幅なカットを……」と詰め寄ると、社長は鼻で笑いながら言い放ったのです。
「だってさ、最近は『置き配』や『宅配ロッカー』が当たり前だろ? 玄関にポンと置くだけ。昔みたいにハンコをもらう手間がなくなったんだから、仕事は格段に楽になったはずだ。楽になった分、報酬が下がるのは世の理だよ。嫌なら辞めればいい。代わりなんいくらでもいるからw」
「置き配」であっても、誤配防止の撮影やシステム入力、そしてネット通販の普及で荷物量は右肩上がり、現場の負担は減るどころか増えています。現場の苦労を「置くだけ」と切り捨てる無神経さに、僕たちは静かに決意を固めました。
「今日で契約解除します」社長に突きつけたプロの意地
その後、僕たちは仲間内で話し合い、契約書の内容を改めて確認しました。すると、第○条に『委託側が報酬条件を一方的に変更した場合、受託者は即時解除できる』と明記されていました。
数日後、僕たちは社長室に向かいました。手渡したのは、ドライバー全員が署名した「業務委託契約の解除通知書」です。
「社長、昨日のお言葉通り、他を当たることにしました。本日をもって、ここにいるドライバー全員、御社との契約を解除させていただきます」
社長は一瞬フリーズし、次の瞬間「はあ!? 今日の荷物はどうするんだ! 損害賠償で訴えてやるぞ!」と顔を真っ赤にして怒鳴りました。しかし、僕たちは冷静です。
「契約書の第○条には、『委託側が報酬条件を一方的に変更した場合、受託者は即時解除できる』と明記されています。条件を書き換えたのは社長ですよね。代わりはいくらでもいるんでしょ? どうぞ、今すぐ集めてください。僕たちはもう、一歩も動きませんから」
僕たちはその場で専用端末を返却し、自分の車に乗って営業所を後にしました。
荷物の山でパンクした会社と、僕たちの再出発
それから数日後。気になって営業所の前を通ると、そこには目を疑うような地獄絵図が広がっていました。
配送センターの入り口には、発送が止まった数千個の段ボールが山積みになり、まさに「荷物の山」と化していました。社長が慌てて集めた初心者たちは、複雑なエリアのルートが分からず、初日で半分以上が逃げ出したそうです。
「待ってくれ! 報酬は元に戻す、いや、倍出すから戻ってきてくれ!」
必死で電話をかけてきた社長に対し、僕はこう告げました。
「もう遅いですよ。僕たちは全員、現場を大切にしてくれる別の配送拠点と、以前より良い条件で契約を結びました。社長、置き配は『置くだけ』かもしれませんが、その場所まで責任を持って届ける『人』がいなければ、成り立たないんですよ」
現在、あの営業所は取引先からの契約解除が相次ぎ、倒産寸前だそうです。一方、僕たちは新しい環境で、今日も大切な荷物を待つお客様のもとへ、誇りを持ってハンドルを握っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。