展示会での最悪な再会
ある日、業界の40社ほどが集まる展示会にブースを出していた時のことです。
そこへ、数年前に僕を「地味で将来性がない」と捨てた元カノが、大手化粧品メーカーA社の華やかな企画開発担当として現れました。
彼女は僕のブースを見るなり、連れの同僚たちと一緒になって吹き出しました。
「ちょっと見て、こんな零細のブースに元カレがいるんだけど! まだこんな底辺の原料屋でセコセコやってるの?w」
僕が言葉を失っていると、彼女はさらに畳み掛けました。
「ちょうどいいわ。お宅との契約、1社だけキャンセルでw 次のリニューアルからはもっと大手のちゃんとした原料に変えるから」
同僚の女性研究員が「そんな! あの成分がないと、御社の看板商品の効果が……」と抗議しましたが、彼女は「底辺下請けの代わりなんていくらでもあるわよ、それじゃ」と、僕たちを嘲笑いながら去っていきました。
同僚の女性研究員は、「ウチの特許技術の原料がないとあの化粧水売れませんよね?」と心配していましたが、僕は「……仕方ないから帰ろう」と、会場を後にしました。
驚愕した表情の上司
翌日、出社早々上司が驚愕した表情で尋ねました。
「おい!A社から『担当者の独断だった、契約キャンセルの話は忘れてくれ!』って泣きの電話が入ってるぞ! 何かあったのか?」
実は、彼女が「代わりがいる」と言い放ったその原料は、僕たちの会社が製法特許を握っている唯一無二のもの。
他社の安い原料に差し替えた瞬間、成分が肌に浸透しなくなり、看板商品は「ただのベタつく液体」に成り下がってしまうのです。
僕は冷静に「実はその件について、今日の展示会で思わぬお話があったのでじっくり説明させてください」と上司に告げました。
実はあの公然キャンセルの様子をたまたま見ていた別のメーカーS社が、「それならウチと取引させて欲しい」と、破格の条件での商談を持ちかけられていたのです。
因果応報の顛末
さらにその翌日、元カノが今度は顔を真っ青にして僕たちの研究室へ乗り込んできました。
「ちょっと! なんでリニューアルからは供給停止になってるのよ!一昨日のは冗談に決まってるじゃない、早く更新書類を出しなさいよ!」
白衣のポケットに手を入れ、僕は冷静に告げました。
「冗談? 大勢の前で『キャンセル』と宣言したのはあなたですよね。うちはもう、別のメーカーさんへの供給のお話を進めています。お宅の看板商品のリニューアルは、大手の“ちゃんとした原料”とやらでぜひ進めてください」
彼女は言葉を失い、その場にへたり込みました。
後日、彼女の上司が謝罪と契約更新のお願いに再度訪れたものの、僕たちは、自社の技術をより正当に評価し、好条件を提示してくれたS社との契約を優先しました。
結局、彼女は「会社の看板商品を危機に晒した」「公共の場で取引先を“下請け”呼ばわりするコンプライアンスの欠如」について責任を問われ、配置換えになったそうです。一方、僕たちは新しいパートナー企業と共に、さらに革新的な製品の開発に取り組んでいます。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。