そのころ私は、不妊治療を始めていました。検査の結果、妊娠まで少し時間がかかるかもしれないと言われ、通院を続けていたのです。夫はそのことを理解してくれていて、体調を気遣ってくれていました。
親戚の前で、不妊治療のことを話された
そんなある日、親戚たちとの集まりで食事をしていると、義妹が私に「お酒飲まないの?」と聞いてきました。私は体のこともあり、「今は控えているの」と答えました。すると義妹は、周囲に聞こえるような声で「お義姉さんひょっとして、不妊治療中~?」と言ったのです。
私は何も言えず、ただ気まずさと恥ずかしさでいっぱいになりました。義妹は悪びれる様子もなくゲラゲラ笑っていて、本当に傷つきました。
そのとき、隣にいた夫が「そういう話を軽々しく口にするのはやめてくれ」と、いつになくはっきりした口調で義妹をたしなめました。普段は穏やかな夫のその言葉に、場の空気が一瞬で張りつめました。
するともう一人の親戚が「こういう話題は、みんなの前でするものじゃないよ」と穏やかにたしなめてくれたことで、その場はなんとか収まりました。
姪を置いて出かけた義妹夫婦
それからしばらくして、朝早くインターホンが鳴りました。玄関を開けると、義妹夫婦と姪が立っていました。何事かと思ったら、義妹は「ちょっと出かけるから、この子お願い」と当然のように言ったのです。
しかも、「子どもが欲しいんでしょ? 預からせてあげる! たまにはこういうの嬉しいでしょ?」とまで言われました。あまりに身勝手で言葉を失いましたが、そのとき姪が不安そうに私を見上げ、「私、ここにいていいの?」と聞いてきました。
私はその表情を見て、放っておけませんでした。夫とも相談し、その日はひとまず預かることにしました。とはいえ、急に姪を預かることになったので不安でした。
その日の夕方ごろ、義妹夫婦に「何時ごろ戻るのか」と連絡を入れましたが、何度連絡をしても返信はありません。電話もつながらず、夫は「さすがにこれはおかしいだろう」といら立ちを見せていて、私も同じ気持ちでした。
それでも、姪は無邪気に過ごしていて、少し時間が経つと安心したように笑顔を見せるようになっていきました。結局その日のうちに迎えに来ることはなく、翌日になっても状況は変わりませんでした。
連絡が取れたあとも、「もう少ししたら迎えに行く」「予定が長引いている」といった曖昧な返事ばかりで、気づけば姪は数日間うちで過ごすことになっていたのです。
安心したように笑う姪を見て、胸が痛む
一緒に過ごしてみると、姪はとても素直で、気を遣いすぎるほど聞き分けのいい子でした。夫にもすぐになつき、食事の時間も寝る前も、私たちにべったりになりました。
1週間後、義妹夫婦がようやく迎えに来ました。
義妹は私たちに謝罪もお礼もせず、姪に「帰るわよ!」と声をかけます。すると姪は私のそばにかけ寄り、「やだ。まだここにいたい」と言ったのです。
義妹は姪の様子に戸惑います。私の後ろに隠れるように立つ姪の姿を見て、言葉を続けられなくなったようでした。
私は、姪がうちで過ごしていた間、ただ安心して過ごせるようにしていただけだということを伝えました。
義妹はしばらく何も言わず、気まずそうに視線を落とし、ショックを受けた様子。やがて小さな声で「……寂しい思いをさせちゃったのかもしれない」とつぶやきました。
姪の気持ちに、義妹がようやく向き合った
義妹は姪に対して「ごめんね」と声をかけ、私にも「この前は本当に悪かったわ」と謝ってきました。謝罪の言葉をもらっても、親戚の前で不妊治療の話をされたことも、突然姪を預けられたことも、簡単に許せませんでした。
それでも、姪の様子を見て初めて自分たちの行動が良くなかったと気付いたのは、よかったと思います。
今回のことについては、夫が義妹夫婦にきちんと話をしてくれました。その後、これまで義父母や知人に預けることが多く、次第に頼れる人がいなくなっていたことも知りました。
今後の関係については、慎重に考えていきたいと思っていますが、少なくとも姪にとって安心できる場所がひとつでも増えていくことを願っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。