結婚してしばらく経ったころから、夫は料理や家事について口出しをするようになっていました。
「この味噌汁、ちょっと薄いな」
「あーあ、母さんならもっとじょうずに作れるのに」
「揚げ物は揚げたてを出してくれよ。母さんはいつもそうだったぞ」
そんな言葉を、悪気なく繰り返される日々。最初は軽く受け流そうとしていましたが、次第に心に積もっていきました。
義母は仕事も家事も完璧にこなす人だと聞いていました。だからこそ、比べられるたびに自分が劣っているように感じてしまい、落ち込むことが増えていったのです。
同居で見えた「本当の姿」
そんなある日、入院していた義父が亡くなったという知らせが入りました。深い悲しみの中にいる義母をひとりにすることができず、私たちは義母との同居を決めたのです。
しかし、一緒に暮らし始めてすぐ、私は義母に違和感を覚えるように……。
料理の段取りがぎこちない。掃除の手順も、どこか慣れていない様子でした。
ある日、夫がいる場で思い切って義母に尋ねてみると、少し照れくさそうにこう話してくれました。
「誤解させちゃったかしら。実はね、家事はほとんどお父さんがやってくれていたの」
「私は仕事ばかりで、あまりやってこなかったのよ」
さらに義母は続けました。
「お父さんが入院してからは自分でやるようになって、少しずつ覚えてきたところなの」
「でも揚げ物はまだ苦手でねぇ……」
その言葉を聞いたとき、私は驚きと同時に、どこかホッとした気持ちになったのを覚えています。
真実を知った夫の変化
その話を聞いた夫は、しばらく黙り込んでいました。そして、少し気まずそうにこう言ったのです。
「俺……母さんが全部やってると思ってた」
「味噌汁も揚げ物も、全部父さんが作ってくれてたんだな」
「今まで比べて、嫌な思いさせてごめん」
義母は「お父さん、恥ずかしがり屋さんだったから……私がやったことにしていたみたいよ」と目を伏せて言いました。
その言葉を聞いた夫は「もっと父さんに感謝を伝えればよかった」と泣き出しました。私と義母の目からも涙が溢れ、しばらく3人で泣き続けました。
そして、私たちは自然と協力し合うように。レシピを見ながら一緒に料理をしたり、掃除のやり方を調べたり。最初は手探りでしたが、少しずつできることが増えていきました。
夫も「家事はチームでやるものだな」と口にするようになり、以前とはまったく違う雰囲気になっていったのです。義母にも少しずつ笑顔が戻り、「毎日がにぎやかで楽しい」と話してくれるようになりました。
そんななか、私の妊娠が判明。その報告をしたとき、夫も義母も心から喜んでくれたのを覚えています。
かつては義母と比べられることに苦しんでいた私ですが、今ではお互いの得意・不得意を認め合いながら支え合う関係に変わっていきました。これからは、家事だけでなく育児も含めて、家族みんなで協力していきたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。