スマホしか見ず「同じ空間にいるだけ」
7歳の息子と4歳の娘が「パパ、見て!」「パパ、これ読んで!」と話しかけても、夫の返事はいつも「ああ、ちょっと待って」だけ。そして視線は常に手元のスマホ画面から離れません。私が外出して留守番を頼んでも、夫は「同じ空間にいるだけ」で、とても子どもの面倒を見ているとは言えません。帰宅すると、子どもたちは動画サイトに釘づけで、夫はソファでスマホに没頭しているという光景が日常茶飯事でした。私が注意しても「ちゃんと見ていたよ。静かに遊んでるんだからいいだろ」と逆ギレされる始末です。
そんなある日の夕食時、私は午後から所用で外出し、仕事が休みだった夫に娘の幼稚園のお迎えなどを頼んでいたのですが、食卓の娘の表情が冴えません。箸もあまり進まない様子。私は心配になり「どうしたの?」と尋ねると、「今日ね、幼稚園でいっぱい褒められたから、パパに話そうと思ったのに、パパは帰るときもスマホばっかり!」と半泣き状態で訴えます。いつものように、食事中だというのにスマホをテーブルに置き、画面を見て通知チェックしていた夫は、「家に帰ってから聞こうと思っていた」と反論。その言葉に、娘は「もういい! そんなにスマホが好きなら、パパはスマホと結婚すればよかったんだ! 家族もスマホでいいじゃん」と大きな声で吐き出したのです。
一瞬、リビングが静まり返りました。さらに7歳の息子は、顔をこちらに向けることすらせず、テレビゲームをしながら「うん、パパは僕たちの顔よりスマホ見てる時間のほうが長いもんね」と追い打ち。息子のその姿は、まさに夫が子どもたちに向けていたものと同じでした。夫は自分のしてきた行動を目の当たりにしたのか、直後に「やってしまったかも……」とつぶやき、スマホを伏せて何も言わず食事を続けました。
そして夫は翌日から、罪滅ぼしをするように子どもたちと遊ぶように。ある休日、娘が「パパ、おままごとしよ!」と誘ってきたときのことです。夫は「よし、パパは何の役をすればいい? お父さん役かな? お客さんかな?」と、張り切って尋ねました。すると娘は、事もなげに「パパは、スマホの役ね」と言ったのです。
夫が呆然としていると、娘はさらに「はい、ここに座って、ずっと下を向いてて。私が話しかけても『ああ』とか『ちょっと待って』って言うだけでいいから。あ、時々ピカッて光ってね」と続けました。隣で見ていた息子も、「じゃあ僕、充電器さしてあげるよ。パパの背中にこの紐をくっつけとくね」と淡々と作業を始めます。それを見ていた私は思わずブフッと吹き出しそうになりました。夫は無理に作った笑顔のまま、凍りついたように動けなくなっていました。スマホに夢中になって子どもたちを蔑ろにした夫の末路は、その夢中になっていた「スマホ」になることだったのです。
そんな夫は今、必死に「人間」の役を取り戻そうとしています。一度スマホに奪われた「父親」という配役は、スマホを置いただけでは返ってこないことを思い知らされたようです。
夫の焦りや子どもたちの残酷な配役を目の当たりにし、一度損なわれた信頼を取り戻すのは容易ではないのだと目の当たりにした今回。この夫の苦い教訓を忘れず、家族の絆を「スマホ越し」ではない、きちんと心の通う関係へと再構築していかなければと感じた出来事です。
著者:井島りほ/30代・ライター。年少の娘と小学1年生の息子を育てるママ。おしゃべりが大好きで寝るのが苦手な兄妹と、にぎやかな毎日を過ごしている。
作画:ひのっしー
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年1月)