突然の別れと裏切り
ある日、A子から「少し話したい」と呼び出されました。何の話だろうと思いながら会いに行くと、彼女は言いにくそうに口を開きました。
「最近、ちょっと合わないなって思うことが増えて……私たち、別れたほうがいいかも」
突然の言葉に戸惑いながら理由を聞くと、「仕事のスタンスとか、将来の考え方とか」と、どこか曖昧な答え。納得はできませんでしたが、彼女の意思は固く、そのまま別れることになりました。
それから数日後のことです。社内で、自分が時間をかけて準備していた企画とよく似た内容が、B男の名前で提出されているのを目にしました。
実はその少し前、B男に「ちょっと相談したい」と言われ、企画書の下書きを見せていたのです。それが盗まれたのだと気づいたとき、言葉を失いました。
さらに、上司はB男の企画を高く評価し、僕は何も言い出せないまま。
仕事もプライベートも…
どうしても納得がいかず、後日、B男を問い詰めました。
すると彼は、「いいと思ったから先に出しただけ」と悪びれる様子もなく言ったのです。
さらに、軽い調子でこう続けました。
「あ、そういえば……俺、A子と付き合うことになったんだよね」
そのひと言で、頭の中が真っ白になりました。仕事もプライベートも、すべてをB男に奪われてしまったのです。
上司に説明すればよかったのかもしれません。それでも、「どうせ信じてもらえない」という思いが拭えず、気づけば会社に行くこと自体がつらくなっていました。
そして、何もかも嫌になった僕は、そのまま会社を辞める決断をしました。
環境を変えて出会った人
その後、僕は会社を辞め、知人がオーナーをしているレストランでアルバイトをスタート。派手さはないものの、落ち着いた環境で働くうちに、少しずつ気持ちも前向きになっていきました。
そんなある日のこと。食事を終えて店を出た女性のお客様が、外でしゃがみ込んでいるのを見かけました。
心配になって声をかけると、「少し体調が悪くて……」と申し訳なさそうに笑います。彼女の名前はC美。しばらくその場で様子を見ながら、会話をする流れになりました。
「最近ちょっと無理してたみたいで」少し恥ずかしそうにそう言う彼女に、どこか放っておけないような気持ちを抱いたのを覚えています。
その後、C美は定期的に店に顔を出してくれるようになり、何度か言葉を交わすうちに距離は少しずつ縮まっていきました。気負わず話せる関係が心地よく、僕は彼女に惹かれていったのです。
そしてある日、思い切って気持ちを伝え、僕たちは付き合うことになりました。
3年後、思わぬ再会
それから3年。C美との結婚が決まり、僕たちはとあるタワーマンションで暮らし始めました。
ある朝、エントランスで彼女を待っていると、見覚えのある2人の姿が。B男とA子でした。
聞けば、2人もこのマンションに引っ越してきたばかりだと言います。
そのとき、管理会社のスタッフが通りかかり、僕に軽く会釈しました。
それを見たB男が、「なに? ここでバイトでもしてるの?」とバカにするように言いました。続けてA子も「え~、なんか変わったねw」とひと言。
僕が答えに迷っていると、そのタイミングでC美がエレベーターから降りてきました。自然に僕の隣に立つ彼女を見て、B男の表情が一変。
そして、僕は2人にC美を紹介しました。
「最近、彼女と結婚して。彼女の実家がこの一帯の地主で、このマンションの開発にも関わっているんだ」
C美は軽く会釈し、「いつもお世話になっています」と丁寧に挨拶しました。
立場が逆転した瞬間
そのとき、C美がふと思い出したように口を開きました。
「あの……B男さん、でしたよね?」
やわらかい口調でしたが、その場の空気がぴんと張りつめます。
「少し前にここで私にお声がけいただきましたよね?ここは居住者の方が安心して過ごす場所なので……ナンパ行為は控えていただけると助かります」
丁寧な言い方でしたが、その場にいる全員にしっかりと伝わる言葉でした。
B男は言葉に詰まり、「あ、いや……そんなつもりじゃ」と言い訳。その様子を見たA子の表情が、みるみるうちに変わっていきました。
僕たちはそれ以上関わることなく、その場を後にしました。
後から聞いた話では、2人はその後うまくいかなくなり、ほどなくして引っ越していったそうです。
一方の僕は、C美と穏やかな生活を送りながら、彼女の家業を手伝うようになりました。
あのときすべてを失ったように思えましたが、環境を変えたことで、新しい道が開けたのだと思います。人の評価に振り回されるのではなく、自分の選択を大切にすることの意味を、改めて実感しました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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