郊外のある店舗を訪れたときのこと。外観や売り場の整理状況は悪くなく、一見すると問題はないように感じられました。
しかし、店内を回るうちに、言葉にしづらい「居心地の悪さ」を感じました。スタッフ同士の無駄話がないのは良いことですが、必要な連携さえも欠けているような、どこか張り詰めた緊張感が漂っていたのです。
私は気になる点をメモしながら一通り確認し、その後、店長と合流する前に、スタッフの動線を確認するため社員用の休憩室へ向かったのですが……。
休憩室での新人いびり
休憩室のドアを開けたそのとき――。
「あんた新人? 勝手に休憩室使っていいと思ってるの?」
「ここはあんたの場所じゃないんだからね」
突然、背後から強い口調で声をかけられ、振り返ると、腕を組んだパートの女性が立っていました。私は事情を説明しようとしましたが、聞く耳を持ちません。
「最近の若い子は常識がないんだから……」と言いながら、自分がどれだけ店を支えてきたかを一方的に語り始めたのです。
その威圧的な態度に、店内で感じていた違和感の原因はこの人ではないか、と直感的に思いました。
あまりにも一方的な物言いに、私が反論しようと口を開こうとした瞬間――彼女は手に持っていたアイスコーヒーを私にかけたのです!
「何するんですか!」と思わず声を上げると、「手が滑っちゃっただけよ」と軽く笑い、謝罪はなし。
明らかに故意としか思えない状況でしたが、私は感情的にならないようにこらえ、自分の立場を改めてはっきり伝えることに。
「……私はここの新人ではなく、本部の社員です」
「今日は視察のためにうかがいました」
私の正体を知った彼女の表情は一変。「うそ……」とつぶやき、青ざめました。
違和感の正体
その後、駆けつけてきた店長に、私は経緯を説明。「これがこの店舗の新人指導なのですか?」と尋ねると、店長は顔面蒼白になり、すぐに謝罪。女性も一緒になって頭を下げてきました。
今回の出来事は、すべて本部に報告することに。しかし、報告を終えてもなお、私の中には拭いきれない違和感が残っていました。彼女のあの手慣れたような威圧的な態度は、到底、今回限りの突発的なトラブルだとは思えなかったのです。
そこで私は、その店舗の勤務データや採用状況を確認。すると、パートスタッフの短期離職が非常に多いことが判明。退職理由は「本人都合」とされていましたが、その数字は明らかに不自然でした。
退職したスタッフに連絡を取り、話を聞いてみると……同じような証言が複数の人から出てきたのです。
「特定の人物に威圧的な言動をされた」
「業務を押しつけられた」
「ミスを自分のせいにされた」
「無視や嫌がらせをされた」
社内の規定に基づき、許可を取ったうえで防犯カメラの確認をおこなったところ、それらの証言と一致する場面も確認できました。
お局パートが見過ごされていた理由
問題の女性は長年にわたり、「自分が一番長く働いているから」と言って周囲を支配していました。気に入らない相手には無視や嫌がらせをおこない、業務を押しつけることもあったようです。休憩室の私物化など、規律を逸脱する行動も見られました。
そして、それらが放置されていた背景にも問題がありました。
過去にも本部による調査はおこなわれていたのですが、その内容は曖昧で、改善には至らず……。調査体制を確認したところ、当時の担当者と女性の間に不適切な関係があったことが判明。その影響で十分な調査がおこなわれていなかった可能性が高いと考えざるを得ませんでした。
私は事実関係を整理し、上層部へ正式に報告。その結果、コンプライアンス違反として関係者への処分と体制の見直しがおこなわれました。
問題の女性は自主退職し、関与していた担当者も厳正な処分の末、職を離れることになりました。
その店舗は、その後大きく改善されました。スタッフ同士の雰囲気もやわらかくなったそうで、離職も減少しています。
現場の空気が変わると、自然とお客様への対応にも良い影響が出ます。売り場の活気も、以前とは比べものにならないほど変わりました。
あのとき感じた違和感を見過ごしていたら、状況は変わらなかったと思います。
一見するとささいに見える違和感の中に、職場全体の問題が隠れていることもあります。だからこそ、見過ごさずに事実を確認し、適切な手順で向き合うことが大切なのだと感じました。
これからも現場に寄り添いながら、自分の役割を果たしていきたいと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。