ある日、「同居して損した気分だわ。体が弱いし、気が利かないし」という言葉を向けられました。嫁としての務めを果たせていない、孫の顔を見るのはまだまだ先になりそう、とグチグチ話します。
我慢の限界を迎えた私は、安定期まで黙っているつもりでいた妊娠を義母に告げました。実は少し前に妊娠がわかり、3カ月目に入っていたのです。
すると義母の態度は一変しました。「早く言いなさいよ!」と喜び、お赤飯の話まで持ち出してきました。ほっとする気持ちがある一方で、あれほど責め立てていた人が瞬時に変わる様子に、複雑な思いが芽生えたのもたしかです。
この喜びは純粋なものなのか、「孫を産む存在」として期待されているだけではないのか——そんな思いが頭をよぎりました。
容赦ない義母
そんな喜びも束の間。妊娠を伝えても、義母からの扱いは変わりませんでした。めまいが続く体調の悪い日も、掃除や庭の草取りを命じられます。
「妊娠でホルモンバランスが崩れているせいかもしれない」と伝えると、「精神力が足りないのよ。母親になったのだからもっとしっかりしなさい」と跳ね返されるだけでした。
さらに、生まれてくる子の性別への執着も強まっていきました。「体が弱い子は嫌よ」「男の子を産んでもらわないと困る」という言葉も飛び出します。
「私はどんな子でも大切に育てたいと思っています」と返すと、「あなたはそうでも私は違うの」と即座に被せられました。
義母の価値観と私の気持ちの間には、埋めようのない溝があります。私はただ謝り、部屋に戻ることしかできなかったのです。
妊婦を追い出す!?
妊娠が後半に差し掛かったころ、定期健診を終えて帰宅した私に、義母は突然告げました。「娘が里帰り出産することになったから、しばらく出て行って」
時を同じくして妊娠していた義妹が、予定を変更して実家に帰ってくることになったそうです。
頭が真っ白になりました。「私も妊娠中なんですが……」と声を絞り出すと、義母は「娘の子が優先に決まってるでしょう」と言い切りました。
義妹は双子を妊娠しており、大変な状況であることは理解しています。しかし私には、どうしても納得できないことがありました。
もともと義母は「里帰りをするなんてありえない! ここで産みなさい」と言い続けていたのです。そのため里帰り出産は視野に入れずにいました。今から転院など、病院不足の私の地元では難しいでしょう。
それなのに義母は「まだ3カ月あるんだからどうにでもなるでしょ。今月中には出て行ってね」と続けました。
妊娠後期に入った状態での急な転居は、心身ともに大きな負担です。混み合う時期に産院を変え、新しい病院を探すことは決して容易ではありません。
一向に引かない義母に呆れ「わかりました」と答えながら、私の中である覚悟ができました。
秘密の計画
その日以来、私は夫と話し合いを重ねました。夫も以前から義母の態度に強い不満を持っており、いつか同居を解消したいと考えていたとのこと。
義父もまた、私への扱いを問題視して何度も義母に注意していたものの、いっこうに態度の変わらない義母に愛想を尽かしていたようです。3人で話し合い、新居を探すことにしました。
そして私はなんとか里帰り出産できるように手配をし、実家に帰省。その間に夫と義父は、義母の留守を見計らって荷物を少しずつ運び出してくれました。
私たちがもともと義実家の家具を使っており運び出す荷物が少なかったことや、義妹の里帰りで浮かれていたこともあり、義母は私たちの企みにはまったく気付かなかったようです。
ひとりになった義母
出産して1カ月が経ったころ、義母から「いつまで実家にいるの、早く帰ってきなさい」と電話が入りました。どうやら義妹と喧嘩になり、早々に里帰りを切り上げられてしまったとのことでした。
私は言いました。「もう帰るつもりはありません」
義母が「なにを言っているの」と声を荒らげる中、夫と義父がすでに新居を契約し、自分たちの荷物も運び出していることを淡々と伝えました。
「そんなこと許さない」と義母は言いましたが、だからと言って計画をやめるつもりはありません。まもなく最後の荷物を運び出して同居は完全に解消。義父も義母との離婚を決めており、これから協議を進めるそうです。
そう伝えた途端、義母は言葉を失いました。しばらくして謝罪の言葉が続きましたが、もう遅いのです。
「今後一切、お義母さんに会うつもりはありません」同居中の理不尽な扱い、妊娠中に家事を強いられたこと、突然の追い出し——それらをきちんと認めてほしいと伝えると、義母は「ごめんなさい」と繰り返すばかりでした。
義母の末路
通話の後、義母の連絡先をブロックしました。夫経由で謝罪の連絡が繰り返し届きましたが、夫もまた義母の態度に長く不満を抱えていたため、夫婦ともに関係を修復する気持ちにはなれませんでした。
反省はしているようですが、私には関係のない話。子どもが自分の意思で「会いたい」と言う日まで、このまま距離を保つつもりでいます。今は夫と穏やかな日常を積み重ねながら、ようやく自分らしい暮らしを取り戻してきました。
◇ ◇ ◇
妊娠中の体調不良は決して「精神力」の問題ではなく、命を繋ぐための心身の大きな変化です。そして、新しい家族を迎える準備において最も優先されるべきは、妊婦さんが心穏やかに過ごせる「安心できる環境」にほかなりません。
つらいときは無理をさせず、家事を代わったり横になる時間を十分に作ってあげたりする配慮こそが、何よりも必要だったのではないでしょうか。経験者だからといって自分の物差しで測るのではなく、目の前の相手の気持ちを受け入れ、寄り添うやさしさがあれば、結果は違ったものになっていたでしょう。
家族として新しい命を心待ちにしているのなら、その命を育んでいる母親の心と体を、誰よりも先に守ってあげなければなりませんね。
【取材時期:2026年3月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。