妻の裏切りを見た日
ある日、家に忘れ物を取りに戻ると、リビングには妻と一緒に思わぬ人物がいました。勤務先の病院で数年前から働いている若手医師のB山です。
2人は、ただ同じ部屋にいただけではありませんでした。体を寄せ合い、親しげな様子で見つめ合っていたのです。その光景を見た瞬間、僕は頭の中が真っ白になりました。
僕に気づいた妻は「あれ、もう帰ってきたの?」と開き直るように笑い、B山も悪びれる様子もなく、「どうも、お邪魔しています」と頭を下げました。
「……どういうことですか」と震える声で尋ねると、妻は薄笑いを浮かべて「あなたって冴えないところがあるでしょ? 若くて頼りになるB山先生のほうがいいの。少し前からそういう関係だったし……もう離婚しましょう」と言い放ったのです。B山も「そういうことなんで。僕のほうが将来性はあると思いますよ」と、あおるように笑いました。
突然「離婚」と告げられ、混乱した僕は何も言い返せず、忘れ物を手に取ってその場をあとにしました。病院のためにも家族のためにも頑張ってきたつもりでしたが、その思いが一気に崩れていくようでした。
退職と離婚を決意
後日、僕は病院に退職の意思を伝えました。妻との関係を再構築する気も起こらず、弁護士に相談しながら離婚の手続きを進めることに。
するとその数日後、僕と妻は義両親から「話を聞きたい」と呼び出されたのです。離婚に至る事情を説明すると、義両親は娘である妻を叱責しました。義父は「なんてことをしてくれたんだ!」と叱り、義母は「うちの病院を立て直すために、彼はあれほど力を尽くしてくれたのに……」と涙ぐみました。
妻は「そんなこと言われても」と反発しましたが、義父は「この病院を支えてくれた人を、そんな形で傷つけるなんて許されないことだ」と厳しく言い放ちました。さらに後日、義父はB山を個別に呼び出し、妻との関係を改めて確認したうえで、軽率な行動だと厳しく注意したそうです。その件は院内でも知られることとなり、B山は気まずい立場に置かれたようでした。
義両親の対応には感謝していましたが、僕はもう病院に戻る気にはなれませんでした。
次の職場で出会ったのは…
しばらくして、僕は別の病院で働き始めました。そこで再会したのが、高校時代に同級生だったA子です。A子は看護師として働いており、昔と変わらない笑顔で「久しぶり!」と声をかけてくれました。
A子は元気のない僕を見ても、無理に事情を聞き出そうとはしませんでした。ただ自然に接してくれて、必要なときだけ「無理してない?」「何かあれば相談してね」と言葉をかけてくれたのです。その気づかいに触れるうち、張り詰めていた気持ちが少しずつやわらいでいきました。
新しい職場でも、僕は地域連携や広報の仕事に懸命に取り組み、少しずつ周囲の信頼を得ていきました。そんな僕を、A子がある日、「あなたはこの病院に絶対に必要な人だよ!」と励ましてくれました。その言葉が、当時の僕にとって大きな支えとなったのです。
新たな幸せ
その後、元妻とB山の関係は長くは続かなかったと聞きました。B山の女癖が悪いことが発覚し、B山と再婚する気だった元妻は、さんざん嫌な思いをしたそうです。一方の僕は、新しい職場で働きながら、A子と少しずつ信頼関係を深めていきました。
ある日、仕事終わりに僕が「なんだか、昔からずっと一緒に働いてきたみたいだね。これからもよろしく」と冗談まじりに言うと、A子は少し照れたように笑って、「こちらこそ。……実は高校のころから、ずっと気になっていたんだ」と打ち明けてくれました。
過去の裏切りで深く傷つき、一時は前を向けなくなったこともありました。それでも今は、新しい職場での仕事に打ち込みながら、穏やかな毎日を少しずつ取り戻しています。つらい出来事の先には、自分を大切にしてくれる人との出会いなど、別の幸せが待っているのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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