新任部長の登場で変わった職場
私が所属する製造開発部は、以前は風通しがよく、社員同士で助け合える職場でした。部下のA男さん、B子さんとも信頼関係があり、忙しい時期を乗り越えた日には自然と「食事でも行きましょう」と声が上がるような雰囲気だったのです。
ところが、新しく着任した女性部長が来てから空気は一変しました。
部長は特定の若手社員ばかりを呼び出し、業務外の誘いを繰り返すように。断れば「部長の頼みなのに?」と圧をかけ、周囲も困惑していました。
私は課長として見過ごせず、「立場を利用して相手が困るような言動は控えてください」と伝えました。するとその日を境に、部長は私を敵視するようになったのです。
学歴を理由に始まった嫌がらせ
数日後、部長は私を会議室へ呼び出し、人事資料を見ながら言いました。
「あなた、中卒なの?」
「その学歴で課長なんて、会社も甘いのね」
私は家庭の事情で進学できず、働きながらここまで来たことを説明しましたが、部長は聞く耳を持ちませんでした。
それ以降、会議で私の発言だけを遮る、成果を認めない、人前で学歴を揶揄する――そんな嫌がらせが続きました。
部下たちは「課長ばかり我慢しすぎです」と心配してくれましたが、私は感情的にならず、結果で示そうと決めていました。現場改善、若手育成、納期対応。やるべきことに集中し、人事にも相談しました。ですが状況は変わりませんでした。
私が辞職を決意した日
ある日、若手社員たちが私に相談している様子を見た部長が、人前で私を呼び止めました。
「ずいぶん慕われているみたいだけど、管理職にふさわしいとは思えないわね」
そして突然、こう言ったのです。
「その社員証、中卒にはふさわしくないわ。一度預かります」
私は「業務上必要ですので、お渡しできません」と伝えました。ですが部長は聞き入れず、半ば強引に私の社員証を外しました。さらに部長は、「あなたがいなくても仕事は回るから」と言い放ったのです。
その瞬間、私は悟りました。ここにしがみつく必要はない、と。
私は正式に退職を申し出ました。部下たちは驚きながらも、
「課長の決断を応援します」
「課長が育ててくれた現場は、私たちが守ります」
と背中を押してくれました。
新しい場所で知った本当の評価
ちょうどそのころ、海外にいた弟が日本で新規事業を始めることになり、「ものづくりの経験を貸してほしい」と声をかけてくれていました。私はその会社で製造部門の立ち上げに参加。現場経験を生かして生産体制を整え、新商品の開発にも携わっています。
一方、元の会社では現場の混乱や社員からの声を受け、部長の管理体制が見直されたそうです。結果、部長は管理職を外れ、別部署へ異動になったと聞きました。
製造開発部は、A男さんやB子さんたちが中心となって立て直しているそうです。仲間たちが前向きに働ける環境を取り戻したと知り、心から安心しました。
遠回りに見えた人生でしたが、自分の努力を正しく評価してくれる場所にたどり着けたことを、今は誇りに思っています。
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学歴や肩書きだけで人を判断し、現場で積み重ねてきた努力を軽く見ると、大切な人材を失ってしまうこともありますよね。自分を正しく評価してくれる場所を選ぶ勇気の大切さを感じさせられるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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