結婚後、初めての義実家訪問
当時、私たちは新居への引っ越しを控えていました。夫は実家に残していた荷物を整理したいと言い、その日は私も一緒に義実家へ向かうことに。夫は事前に、夫は事前に、私も一緒に実家へ行くことを義母に伝えていました。この日は、私を含めた4人で夕食を取る予定になっていました。
結婚前のあいさつで義母に冷たい態度を取られたことは少し気になっていましたが、夫も義父も温かく接してくれていたため、あまり悪く考えすぎないようにしていました。
玄関の扉を開けてリビングをのぞくと、義母はテレビの前に寝そべり、お菓子の袋を並べてくつろいでいました。床には食べかすも落ちていて、私たちを迎える準備をしている様子はありません。迎えに出てくれた義父は、私たちにあいさつをしながら、困ったように義母へ「相変わらずだな……少しは片付けたらどうだ」と声をかけました。
しかし義母は悪びれる様子もなく、「頼まれたことはしたわよ。特上寿司、頼んでおいたわよ」と言って、またテレビに向き直りました。どうやら、この日の食事は出前を取ることになっていたようです。私は「特上寿司を頼んだ」という言葉を聞いて、義母も少しは私たちを歓迎してくれているのかもしれない、と思い直しました。
その後、義父は食卓の準備を始め、夫は新居へ持っていく荷物の整理に2階へ向かいました。私も手伝えることを探していると、玄関のチャイムが鳴りました。出前が届いたようです。義母から「これで払っておいて」と代金を渡されたため、私が受け取りに出ました。配達員の第一声に、私は違和感を抱きました。
「お待たせいたしました。特上寿司、3人前です!」
今、家にいるのは、私と夫、義父母の4人です。1人分足りないと思いながらも、配達員を待たせるわけにはいかず、代金を支払って寿司を受け取りました。
リビングへ戻ると、それまで寝そべっていた義母がすっと起き上がり、私の手元を見て言ったのです。
「言っておくけど、それ、あなたの分はないから」
「あなたの分はない」と言われて
私は一瞬、義母が何を言っているのかわかりませんでした。
さらに義母は、私を見るなり続けました。
「そもそも、あなたはよそから来た嫁でしょう? 私からしたら、あなたは家族じゃないわ」
「特上寿司は家族の分だけよ」
そして義母は「はい、あなたの分」と言いながら、コンビニで買ったらしいのり巻きを私の前に置きました。
食事の内容そのものよりも、「あなたは家族じゃない」と言われたことが、胸に重く刺さりました。夫と結婚し、義実家とも家族として関わっていくつもりだったのに、義母の中では、私を家族として迎えるつもりなどなかったのだと感じたからです。私は、何と返せばいいのかわからず、その場に立ち尽くしてしまいました。
そこへ、台所からお茶を持ってきた義父が慌てた様子で「今の言い方はなんだ」と言いました。すると、義母は何でもないことのように笑いました。そして、こう言い放ったのです。
「別にいいじゃない。あ、その子のお茶はいらないわよ。まだ私が家族として認めたわけじゃないんだから」
その言葉を聞いた瞬間、空気が変わりました。2階から降りてきた夫も、私たちのやりとりを耳にしていたようです。夫はしばらく黙っていましたが、やがて静かに私のほうを向き「ここで食べなくていい。今日は外へ食べに行こう」と言いました。そして義父にも「父さんも一緒に行こう」と、声をかけました。
義父は一度だけ義母を見てからお茶を食卓に置き、「そうだな。上着を取ってくる」とだけ言いました。
夫と義父が示してくれた答え
2人が出かける準備を始めると、義母は急に慌てた様子になり、「何よ。せっかく出前を取ったのに。店に行くなら、私も行くわよ」と言いました。しかし夫は、落ち着いた声で「母さんは来なくていい」と返しました。「どうして私だけ置いていくのよ」と、義母は顔をしかめて不満そうな様子です。
すると夫は、義母のほうを見てはっきりと言いました。
「さっき自分で言っただろう。特上寿司は家族の分だけだって。だったら、それは母さんが食べればいい」
「妻は俺の大切な家族だから。俺たちは外で食べてくる」
義母は言い返そうとしましたが、その前に義父が戻ってきました。義父は静かに上着を羽織り、「私もこのまま一緒に行く」とだけ言いました。その言葉に、義母は驚いたように義父を見ました。これまで義父は、義母が強い言葉を口にしても、その場を丸く収めようとすることが多かったからです。
けれどこの日は違いました。義父は「息子の妻を家族ではないと言う人と、同じ食卓を囲む気にはなれない」と、はっきり言ったのです。
義母は悔しそうに口をつぐみましたが、夫と義父の意思は変わりませんでした。結局、私たちは義母を残して家を出ることに。車に乗ってからも私はしばらく言葉が出ず、ただ夫と義父に「ありがとうございます」と伝えるのが精いっぱいでした。
家族として大切にされる場所へ
食事の席で、義父は静かに口を開きました。
「実は、前から離婚を考えていたんだ」
義父によると、義母は以前から義父に対して高圧的な態度を取ることが多く、家庭のこともほとんど義父任せだったようです。義父は長い間、息子である夫のためにも家庭を保とうと努力してきたそうです。けれど、夫が結婚して新しい生活を始めたことで、義父自身もこれからの人生を考えるようになっていたといいます。
「今日のことが、最後の決め手になった。息子の妻をあんなふうに扱う人と、これからも夫婦でいることはできない」
義父の言葉を聞き、私は胸が詰まりました。私が傷ついたことを、夫だけでなく義父もきちんと受け止めてくれていたのだとわかったからです。
もちろん、その場ですべてが決まったわけではありません。その後、義父は弁護士にも相談し、これまでの経緯や生活上の問題を整理しながら、離婚に向けて義母との協議を進めました。義母は最初こそ怒っていたそうですが、時間をかけて話し合いが進み、最終的に義父と義母は別々の道を歩むことになりました。
私たちは予定通り新居へ引っ越し、夫婦で新しい生活を始めました。義父とも以前より連絡を取り合うようになり、今では困ったときに支え合える、穏やかな関係を築いています。
あの日の出来事は、私にとって決して忘れられないものになりました。傷ついた気持ちはすぐには消えませんでしたが、夫と義父が私をひとりにせず、行動で守ってくれたことに救われました。私のことを本当に大切にしてくれる人の存在に気付くきっかけとなった出来事でした。
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結婚を機に、新しい家族との関係を大切にしたいと思っていた主人公。しかし、義母から思いも寄らない言葉を向けられ、深く傷つくことになりました。そんな中で、夫と義父が迷わず主人公の味方になってくれたことは、大きな救いだったのではないでしょうか。家族とは、立場や関係性を振りかざすものではなく、相手を思いやり、大切にし合うことで築かれていくものなのだと感じさせられるエピソードです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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