清掃の仕事に誇りを持つ私
毎朝、警備員さんと「おはようございます」とあいさつを交わしながらビルに入り、エントランスや会議室、廊下を整えていく。それが私の日課です。
社員の方々が出勤するころには床も机も整い、空気まで少し澄んだように感じます。そんな瞬間に、「今日もやりきった」と思えるのです。
このビルには急成長中の企業が入っており、忙しそうに働く社員の方々を陰ながら支えることにも、やりがいを感じていました。
私を見下す女性社員
ただ、1人だけ毎朝嫌な態度を取る社員がいました。女性社員のB子さんです。
「まだ終わってないの?」
「清掃の人って、通路をふさいで邪魔なのよね」
最初は聞き流していましたが、日を追うごとに言葉はきつくなっていきました。ある日には、清掃用具のそばを通りながら、「清掃員って、学がなくてもできるからいいわよね」と笑われたこともあります。
正直、悔しい気持ちはありました。ですが、感情的になって仕事に支障を来すことだけはあってはならないと、私は黙って持ち場を整え続けていました。
社長が見ていた現場の姿
そんなある朝、このビルに本社を置く企業の社長・A男さんが出社してきました。A男さんは私のそばで足を止め、こう声をかけてくれたのです。
「朝からここまで整っていると、気持ちよく仕事が始められます。いつもありがとうございます」
私は驚きました。代表自ら感謝の言葉をかけてくださるとは思っていなかったからです。そのひと言だけで、救われた気持ちになりました。見てくれている人はいるのだと、胸が温かくなったのです。
ところが翌日、B子さんの態度はさらに悪化しました。私がモップがけをしている横を通りながら、バケツにわざと足をぶつけ、「邪魔なんだけど。早く片付けて」と吐き捨てたのです。
私は落ち着いて、「危ないのでお気を付けください」と伝えました。するとB子さんは、
「清掃員が偉そうな口きかないで」
「黙って掃除だけやってれば?」
と、周囲にも聞こえる声で言いました。
そのときです。背後から「ちょっと君……。その言い方は、さすがに見過ごせません」という静かな声が聞こえました。振り向くと、A男さんが立っていました。B子さんは慌てて、「ち、違うんです。私は注意しただけで……」と取り繕いましたが、A男さんは冷静に言いました。
「人の仕事を軽んじ、感謝も敬意も持てない人に、信頼は集まりません」
その場の空気が一気に変わりました。B子さんは何も言い返せず、顔をこわばらせて立ち尽くしていました。
認められた仕事への姿勢
後日、B子さんは別部署への異動となったと聞きました。日ごろの言動について、以前から周囲でも問題視されていたそうです。今回の件がきっかけで、正式に配置の見直しが入ったのでした。
一方、A男さんは後日改めて私に声をかけてくださり、「仕事に誇りを持って取り組む姿勢が素晴らしいと思っていました」と言ってくださいました。業務への姿勢を認めてもらえたことが、何よりうれしかったです。
見た目や職種ではなく、日々の仕事ぶりや人柄を見てくれる人がいる。そう実感できた出来事でした。私はこれからも、変わらず現場に立ち、この仕事に誇りを持って働いていきたいと思います。
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どんな仕事にも、それぞれの大切な役割がありますよね。人の職業で優劣をつけるのではなく、真面目に取り組む姿勢こそが信頼につながるのだと感じさせられるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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