甘えん坊の愛犬がなぜ?
愛犬がおかしな行動をとるようになったのは、数カ月前のことです。私が仕事から帰宅すると、異常なほどすがりついて離れようとしなくなりました。何かにひどく怯えているような様子に、私は不安を覚えました。
夫に日中の様子を聞いたのですが「いつも通り」と素っ気ない返事しか返ってきません。しかし、このころから夫が近づくと愛犬は小さくうなり声をあげるようになっていきました。夫は「かわいくないやつだな……」と舌打ちをし、露骨に面倒くさそうな態度をとる日が増えていったのです。
「俺を信用してないの?」
今までこんな姿は見たことがありません。外出している間、何か起きているのではないかと不安に駆られた私は、リビングにペットカメラを設置したいと夫に提案しました。
しかし、夫はあからさまに嫌な顔をして猛反対。「俺がずっと家にいるのにカメラなんて必要か? 俺のこと信用してないのかよ」と途端に不機嫌になってしまったのです。それでも、愛犬の体調管理を理由になんとか説得し、リビングにカメラを設置することに同意してもらいました。
設置からしばらくは、仕事の休憩時間にスマホでカメラ映像を確認するのが日課でした。しかし、数週間経っても特に変わった様子はなく、愛犬はケージの中でおとなしく寝ていました。その様子にすっかり安心した私は、映像をチェックする頻度も徐々に減っていきました。そのことを夫に話すと、「俺がちゃんと見てるんだから、仕事中にまで見なくたって大丈夫だよ」と、妙に安堵したような表情を浮かべたのです。
その瞬間、夫の不自然な態度に違和感を覚えたのですが、ちょうど仕事が忙しくなったことも重なって、その違和感を深く追及せずに過ごしてしまっていました。本当は、あの時の直感を信じるべきだったのです。
えっ、誰この人?
それから数週間後のことです。愛犬の食欲がない日があったため、仕事の昼休みに気になって久しぶりにペットカメラのアプリを開きました。数秒のロード時間のあと、画面に映し出された映像に、私は思わず息をのみました。
「え……?」そこにいたのは、仕事をしているはずの夫……ではなく、見知らぬ若い女性とソファでぴったり身を寄せ合う彼の姿だったのです。自分の目を疑い、思わず画面を拡大しましたが、間違いありません。
頭が真っ白になる中、さらに信じられない光景が目に飛び込んできました。愛犬が警戒しながら2人に近づくと、夫は「邪魔だ」と乱暴にケージの奥へ押し込み、叩きつけるように扉を閉めたのです。その大きな音に怯え、小さくうずくまる姿に、私はショックと怒りで全身が震えました。
小さな命が教えてくれた真実
午後の仕事を切り上げ急いで帰宅し、私は夫にペットカメラの映像を突きつけました。「カメラを見るのはやめたんじゃないのか……!?」そう言い放った夫の顔は、みるみる青ざめていきました。彼を問い詰めると、リモートワークの時間を悪用し、マッチングアプリで出会った女性を自宅へ何度も招き入れていたというのです。録画データをさかのぼると、映像の中の夫は「もう夫婦っていうか、ただの同居人って感じ」「早く別れて一緒になろう」と彼女と楽しげに話していました。
不倫自体も到底許されることではありません。しかし、私がもっと許せなかったのは、小さな命を乱暴に扱い、日常的に怯えさせていたことです。夫は「お願いだ! 考え直してくれ……!」と、私にすがりつこうと手を伸ばしてきました。そのときです。
あれほど夫に怯えていた愛犬が私の前に勢いよく飛び出し、夫に向かって「ワンッ!!」と力強く吠え立てたのです。小さな体で必死に私を守ろうとするけなげな姿。私はその背中を見て、すべての迷いを断ち切りました。
私はその場で義両親に電話をかけ、事情を説明したあと、決定的な証拠映像を送りました。映像を見た義両親は大激怒。スピーカー越しに、義父の「今すぐこっちへ来て説明しろ!」という怒号が響き渡りました。
夫は「一緒に来てくれ」とは言いませんでした。ただ、まるで私がまだ自分をかばってくれると思っているかのように、すがるような視線を向けてきたのです。私は冷たく突き放しました。「証拠はすべてお義父さんたちに送ったし、私から話すことはもう何もないよ。あとは弁護士を通すから、1人で実家に行ってちゃんと説明しなよ」私の態度からも復縁の余地がないことを悟った夫は、まるで処刑台へ向かうかのような重い足取りで1人で実家へと向かったのでした。
その後、私はすぐに弁護士へ依頼。手元には動かぬ証拠があったため、時間はかかりましたが、夫と浮気相手にはきっちり慰謝料を請求し、無事に離婚を成立させることができました。現在、私は小さな体で私を守ってくれた愛犬とともに、平和で幸せな毎日を送っています。
◇ ◇ ◇
ペットカメラが暴いたのは、パートナーの裏切りだけでなく、声なき家族への乱暴な振る舞いでした。言葉を話せないペットの小さなSOSに気づけたのは、日ごろから愛情深く接していたからこそ。もしペットに不自然な様子が見られたら、それは重大な異変のサインかもしれません。