姪を連れて参加したバスツアー
「いちご狩り楽しみだね!」と朝からご機嫌な姪。僕は笑顔で応じながら少し緊張していました。というのも、このツアーには、若くして会社を率いる上司のA子社長も参加していたからです。僕は以前から、仕事に真っすぐ向き合うA子社長にひそかに憧れていました。
集合場所で姪と話していると、A子社長が「あら、一緒に来てくれたのね。お子さん?」と、やさしく声をかけてくれました。僕は慌てて、「違います。姪なんです。姉夫婦が出張中で、今日は僕が預かっています」と説明しました。
取引先社長のひと言で空気が一変
するとそこへ取引先のB山社長がやってきて、表情を曇らせたのです。
「姪? 子どもをこういう場に連れてくるのはどうなんだ」
突然きつい口調で言われ、僕は戸惑いました。それでも、「事前に御社の担当者と弊社で相談し、安全面も含めて確認したうえで参加しています」と落ち着いて伝えました。しかし、B山社長は納得できない様子で、「担当がよくても俺は聞いてない!」と不満をあらわにしたのです。
その場の空気が張りつめたとき、A子社長が前に出て、「確認のうえでの参加ではありましたが、不快な思いをさせてしまったのなら申し訳ありません」と静かに頭を下げてくれました。ところが、B山社長はさらに態度を硬化させ、「君たちとは価値観が合わないな。今後の契約更新は考え直したほうがよさそうだ」と言い出したのです。
僕は頭が真っ白になり、戸惑うことしかできませんでしたが、A子社長は取り乱しませんでした。「残念ですが、承知しました。弊社でも今後について検討いたします」と答え、その場を収めてくれたのです。青ざめる僕に、A子社長は「大丈夫よ。気にしないで」とほほ笑みました。
A子社長の言葉に背中を押されて
ツアーのあと、僕は自分のせいで迷惑をかけてしまったのではないかと落ち込みました。けれどA子社長は、「あなたは事前確認もしていたし、できることはちゃんとしていました。もともとB山社長の会社との契約は見直すつもりだったの。だから、気にしすぎなくて大丈夫。これからもよろしくね」と声をかけてくれたのです。
その言葉に救われた僕は、これまで以上に取引先一社一社と丁寧に向き合うようになりました。そして、「何か困っていることはありませんか」「こちらで力になれることがあれば教えてください」と地道に話を聞いていくうちに、少しずつ僕を指名して相談してくれる取引先が増えていったのです。
一方、B山社長の会社では、以前から強引な進め方に不満を持つ声が出ていたそうで、取引先とのトラブルが相次いだと聞きました。
再びいちご狩りへ
その後しばらくして、B山社長は関係修復を願って再びうちの会社を訪れたそうです。しかしそのころには、B山社長の会社の代わりとなる、別の取引先との契約が順調に進んでいました。結局、A子社長は冷静に対応し、再契約には至りませんでした。
そして今、僕たちの会社では新しい取り組みが軌道に乗り、その節目を社員みんなで祝うことになりました。今日は記念を兼ねて、社員とその家族が参加できる形で、みんなでいちご狩りに来ています。もちろん、僕の隣には姪がいます。A子社長が「ぜひ一緒に」と声をかけてくれたのです。
姪は大きないちごを見つけるたびにはしゃぎながら、ふいにこう言いました。
「おじちゃん、今日すごく楽しみにしてたんだよね! お姉さんと一緒だから!」
僕は思わず、「こ、こら、急に何を言うんだよ」と大慌て。お茶を飲んでいたA子社長はむせてしまい、僕は慌てて「大丈夫ですか?」と声をかけました。すると、顔を見合わせた瞬間、A子社長が少し照れたように笑ったのです。その表情を見たとき、僕はこの気持ちをごまかすのはもうやめようと思いました。近いうちに、思いきって自分の気持ちを伝えようと、心に決めたのです。
今回の出来事を通して、思いがけない場面でも落ち着いて誠実に対応するA子社長の姿に心を打たれ、僕もあんなふうに、まわりから信頼される人になりたいと強く思いました。これからは仕事でも人との関係でも、自分らしく一つひとつ丁寧に向き合っていきたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ムーンカレンダー編集室では、女性の体を知って、毎月をもっとラクに快適に、女性の一生をサポートする記事を配信しています。すべての女性の毎日がもっとラクに楽しくなりますように!