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妻「これは家同士の事情から始まった関係です」親の勧めで結婚した夫婦が、旅館を立て直すまで

東京で不動産営業として働いていた私が、実家の老舗旅館を継ぐために帰郷。さびれた温泉街で再建に奮闘する中、思いがけない話が舞い込みます。

 

帰郷直後に突きつけられた厳しい現実

帰郷して間もないある日、父が収支資料を前に肩を落としながら、「このままじゃ、先が見えないな……」と言いました。

 

観光客は減少し、周囲の旅館も次々と閉業。幼なじみの実家も、外部の開発業者に売却する話が進んでいると聞きました。私も現実的な選択肢として売却の可能性を提案しましたが、父は「何とかしてこの旅館を守りたい」と首を横に振ります。

 

そして、

 

「実は、資金面で支援を申し出てくれている会社がある。ただ……その会社の方から、お前に娘さんを紹介したいと言われていてな。話を聞くうちに、縁談のような形になってしまったんだ」

 

と言いました。予想外の話に、私は思わず言葉を失いました。父は「無理にとは言わないが、一度相手の娘さんに会ってみてくれないか」と頭を下げたのです。

 

流れで決まった結婚と、距離のある2人

迷いはありましたが、旅館を立て直したいという思いもあり、私は彼女と会うことにしました。

 

彼女は落ち着いた雰囲気で、言葉づかいも丁寧。率直に「すてきな人だな」とは感じましたが、恋愛感情が芽生えるというよりは、お互いに相手を静かに見極めているような時間でした。彼女も同じように考えていたのだと思います。会話は穏やかでしたが、どこか一線を引いた距離感がありました。

 

それでも何度か顔を合わせるうちに、旅館のことや地域の将来について話す機会が増え、気付けば私たちは、ビジネスパートナーのような間柄になっていったのです。こうして、強い感情に押されるでもなく、流れの中で結婚という形に落ち着きました。

 

彼女は静かに言いました。

 

「これは家同士の事情から始まった関係だと思っています。ただ、やるからにはきちんと向き合いたいです」

 

私も同じ気持ちでした。こうして始まった新生活は、夫婦というよりも、同じ目標に向かうパートナーのような関係からのスタートでした。

 

 

若女将の手腕と広がる不穏なウワサ

結婚から半年後。彼女は現場の仕事をこなしながら、予約サイトやSNSでの情報発信を強化。若年層や女性客の利用が増え、旅館には少しずつ活気が戻ってきたのです。

 

ところがその矢先、不可解なウワサが広まりました。

 

「この旅館は経営が危ういらしい」

「近いうちに営業を縮小するのでは」

 

事実とは異なる内容が広まり、一部の取引先から慎重な対応を求められるように。

 

私が頭を抱えていると、妻は落ち着いた様子で「ウワサの出どころには心当たりがあります。私が確認してきます」と言いました。

 

明らかになった思惑と守り抜いた場所

数日後、妻は旅館で働く人のつてをたどってウワサの出どころを突き止めてきました。そして直接私と話ができるように、その人物を連れて来たのです。

 

それは、私の幼なじみでした。話を聞くと、彼は開発を進めたい業者と接点を持ち、私が経営する旅館の売却を促すために不確かな情報を広めていたそうなのです。すべてを知り、私は言葉を失いました。

 

妻は冷静に言いました。

 

「ここは簡単に手放していい場所ではありません。事実と違う話をするのは、多くの人に悪影響です」

 

幼なじみはそれ以上何も言わず、その場を去っていきました。

 

思い出とともに、これからを築く

その後、取引先には状況を丁寧に説明し、関係は徐々に回復。また近隣の旅館とも連携し、地域全体で集客を高める取り組みも始めました。

 

ある日、妻が打ち明けてくれました。

 

「私は子どものころ、この町に住んでいたことがあるの。ここは大切な思い出の場所なの」

 

彼女にとっても、この場所は守りたい存在だったのです。

 

その思いを知ったとき、私は彼女と本当に同じ方向を向けた気がしました。これからは、この縁と場所を大切にしながら、旅館を未来へつないでいきたいと思います。

 

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古くからのしがらみや厳しい経営状況の中でも、目の前の課題に真摯に向き合うことで道が開けていく――そんな前向きな力を感じるエピソードでした。また、最初は距離のあった2人が、同じ目標に向かって歩む中で少しずつ信頼関係を築いていく様子も印象的です。

 

 

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

 

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ライターベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班

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