それは、同じマンションに住むシングルマザーの女性です。昼間から外出していることが多く、子どもを別のママ友に半ば無理やり預けて出かけている姿も何度か見かけました。
事情は人それぞれだと思っていましたが、周囲に頼りきりな様子に、私は正直あまり関わりたくないと感じていたのです。
夫への不信感
そんなある日、夫が勤務先の業績悪化で退職することに……。
突然のことで戸惑いましたが、生活のために、私はパートから正社員へ転職することを決意。残業も増え、以前より忙しい毎日になりました。
一方の夫は、再就職活動をしている様子がほとんどありませんでした。
「今日は求人見たの?」
「そのうち探すって」
そんな会話ばかり。
家事や育児もほとんど私任せ。少し注意すると夫は不機嫌になるため、家の空気はどんどん悪くなっていきました。そして次第に夫は外出が増え、帰宅時間も遅くなっていったのです。
不自然なインターホンの音
ある日の夕方、急な残業で幼稚園のお迎えに間に合わなくなってしまった私は、慌てて夫に電話をかけました。
「ごめん、今日だけお迎えお願いできない?」
すると夫は面倒そうに、「今、外にいるから無理」と即答。
その瞬間、電話の向こうから“ピンポーン”というインターホンの音が聞こえました。聞き慣れた、うちのマンションの音です。
「今の、うちのマンションのインターホンの音じゃない?」
「本当は家にいるんじゃないの?」
私がそう尋ねた途端、夫は急に黙り込み、そのまま電話を切ってしまいました。それから何度連絡しても返信はありません。
結局、その日は同じ幼稚園のママ友にお願いして、息子を迎えに行ってもらい、そのまま私が行くまで預かってもらうことに。夫は深夜まで帰宅せず、私はモヤモヤした気持ちを抱えたまま眠れない夜を過ごしました。
1人で帰宅しようとした息子
その数日後、高熱を出して寝込んでしまった私。立ち上がるのもつらく、息子の面倒を見られる状況ではありませんでした。
それでも、遊びたい盛りの息子。外に出たそうにしていたので、私は夫にこう頼み込んだのです。
「少しでいいから、息子を公園に連れて行ってくれない?」
夫は露骨に嫌そうな顔をしながら、「俺に子守りさせる気?」「俺も暇じゃないんだけど」などと文句を言っていましたが、最終的には息子を連れて家を出ていきました。
ところが、10分ほど経ったころ――。
インターホンが鳴り、モニターを見ると、仲の良いママ友が息子を連れて立っていたのです。
「公園にいたんだけど、パパが途中でいなくなっちゃって……」と息子。聞けば、夫は息子を公園へ連れて行ったあと、いつの間にかいなくなっていたそうです。
幸い、偶然公園に居合わせた仲の良いママ友が息子の異変に気づいてくれたため、大事には至りませんでした。
私は怒りで震えながら、すぐ夫に電話をかけました。
「息子を置いてどこ行ったの!? 危ないでしょう!」
すると夫は、「うるさいな。説教なら聞かないから」と逆ギレ。そのとき、また電話の向こうから聞き慣れたマンションのインターホンの音が聞こえました。
夫はもちろん、わが家にはいません。嫌な予感が頭をよぎりました。
夫が通っていたまさかの場所
その直後、息子を送り届けてくれたママ友が「ずっと言うべきか悩んでたんだけど……」と言いながら、スマホの画面を向けてきました。
「これ、見たほうがいいと思う」
ママ友が見せてくれた動画には、夫と例のシングルマザーの女性が、親しげに腕を組んで歩く姿が映っていました。そこでようやく、すべてがつながったのです。
夫は同じマンション内にある彼女の部屋に通っていたのでした。どうりで、わが家と同じインターホンの音がするわけです。
私は再度そのママ友に息子を預かってもらい、彼女の部屋へ向かいました。するとタイミングよく玄関が開き、中から夫と女性が並んで出てきたのです。
私が動画を見せながら問い詰めると、夫は開き直ったように言いました。
「俺、もう彼女と一緒になるから」
ところが、それを聞いた女性は一瞬で顔色を変えました。
「えっ、ちょっと待って。そんなの考えてないから」
「あんたとは遊びでしかない」
どうやら夫は本気だったようですが、彼女にとっては遊び相手の1人に過ぎなかったよう。
「再婚とか無理!」
そうはっきり言われ、夫は呆然としていました。私はその場で離婚の意思を伝え、息子を連れて実家へ戻る決意を固めました。
それぞれの結末
その後、夫とは離婚が成立。離婚条件については弁護士にも相談し、養育費や慰謝料について正式に取り決めをおこないました。夫は生活費や支払いに追われ、複数の仕事を掛け持ちしていると聞いています。
ママ友たちによると、例のシングルマザーの女性はこの件をきっかけにマンションを退去したそう。現在は実家のサポートを受けながら働き始め、子育てをしているそうです。
そして私は、実家で両親と息子と一緒に暮らしています。突然環境が変わったことで、息子が寂しい思いをするのではと心配していました。
しかし息子は、「おじいちゃんとおばあちゃんと毎日ごはん食べられてうれしい!」と笑ってくれたのです。その言葉に、私は何度も救われました。
これからは、息子が安心して暮らせる環境を大切にしながら、穏やかな毎日を積み重ねていきたいと思っています。
◇ ◇ ◇
小さな子どもを公園などに残したままその場を離れる行為は、重大な事故やトラブルにつながる危険があります。
今回は周囲の保護者が気づいてくれたことで無事でしたが、一歩間違えれば取り返しのつかない事態になっていた可能性もありました。
保護者には、短時間であっても子どもから目を離さず、安全を最優先に行動する責任があります。周囲に頼る場合も、必ず相手へ事情を伝えたうえで引き継ぐことが大切です。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。