面接後、泣いて帰ってきた彼女
彼女は、以前から志望していた会社の面接を受けてきたところでした。
「最初は普通に話せていたんだけど、途中から急にきつい言い方をされて……。私、何か変なこと言っちゃったのかな」
彼女は、その会社で挑戦したいことや、自分なりに大切にしたい思いを伝えたそうです。ところが、面接を担当した男性から「うちに必要なのは、上の方針にきちんと従える人なんで。熱意を語れば評価されると思いましたか?」と冷たく言われたのだとか。
さらに面接後、廊下でその面接官が部下に「余計な理想を語る学生より、扱いやすいヤツを採ったほうがいいんだよ。俺の考えに従える人材を採用すべきだ」と話している声まで聞こえてきたそうです。
彼女から面接を受けた会社名を聞き、僕は思わず息をのみました。実はその会社は、僕の父が代表を務めるグループの子会社だったのです。
僕は面接官の対応がどうしても許せず、迷った末、父に電話して事情を伝えました。すると父は、「採用の合否に口を出すことはできない。ただ、学生に威圧的な対応をしていたのなら、会社として確認する必要があるな」と答えました。
彼女は、面接を受けた会社が僕の父と関係しているとは知らなかったため、ただただ驚いた様子でした。
明らかになった面接の裏側とは
後日、父は担当部署を通じて、子会社での採用面接の進め方について確認を依頼したそうです。
確認の場では、「学生に威圧的な対応をしていなかったか」「一部の担当者の好みで選考が偏っていなかったか」といった点が問題になったそうです。さらに確認を進める中で、彼女と同じように不安を感じた学生がほかにもいたらしく、面接に関するよくない評判が学生たちの間で広がっていたこともわかりました。
その後、会社では面接体制の見直しがおこなわれ、例の面接官は採用担当から外されることに。面接時の対応や評価基準についても、社内で見直されることになったのだとか。
もちろん、父が彼女の合否に関わったわけではありません。あくまで会社として、不適切な選考になっていなかったかを確認しただけです。
しばらくして、彼女のもとには、あらためて選考を受けないかという連絡がきました。しかし彼女は、その会社の選考を辞退することに。
彼女は「対応してもらえたのはありがたいけど、私は別の場所で頑張りたい」と言って、少しずつ気持ちを切り替えていきました。
1年後、彼女が選んだ道は…
それから1年が過ぎました。無事に大学院を卒業した彼女は別の会社に入社し、今は忙しくも充実した日々を送っています。
ある日、僕は彼女に聞きました。
「でも、本当によかったの? あの会社から、もう一度選考を受けないかって連絡がきてたよね」
すると彼女は、晴れやかな顔で答えました。
「いいの。今の会社でも、やりたかったことに近い仕事ができているから」
さらに彼女は、笑顔でこう続けました。
「あのとき、お父さんがきちんと確認してくれたことには感謝してる。今年受けた後輩が、『雰囲気のいい面接だった』って言ってたよ」
問題に向き合ってくれた父には感謝しています。彼女は今、新しい職場で自分らしく働いています。僕もそんな彼女を見守りながら、ふたりで前向きに歩んでいきたいです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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