父からの突然の電話に、ただ事ではないと感じた日
ある日、父から電話がかかってきました。受話器の向こうで父は取り乱した様子で、「お母さん、ボケちゃったよ。もう大変だ」と大声で訴えてきたのです。あまりに切羽詰まった声だったので、私は慌てて実家へ向かいました。
家に着くと、母はげっそりとした表情を浮かべていました。父は私の顔を見るなり、興奮したように叫んでいました。私は何が起きているのかわからず、まず母に事情を聞くことにしました。すると母は、疲れ切った様子でこう話してくれました。
「お父さん、最近少しおかしいのよ。ごはんを食べたばかりなのに、おなかが空いたって騒いだり、私の顔を見るたびに『お前はボケた』って大声を出したりするの。落ち着いてって言っても、一度騒ぎ始めたら止まらないのよ」
父はもともと気に入らないことがあると感情的になりやすい性格でした。けれど、その気性の激しさが年齢とともに強くなっているような気配は、以前からどこかで感じていました。私は父に向かって、「ちょっと落ち着いて話をしよう。お母さんは大丈夫だよ」と声をかけました。ですが父は、「お前は何もわかっていない! 出ていけ!」と叫び、周囲にあった物を私に向かって投げつけ始めたのです。
母が抱えていた苦しみを知り…
その様子を見て、母は「こういうこと、最近は多いの。普段は普通なんだけど、何かのきっかけで急に暴れ始めるの」と静かに言いました。
私はその言葉を聞いて、ようやく母がひとりで抱えていた大変さの一端を知りました。これまでは、体の弱い母をどう支えるかばかり考えていましたが、目の前で起きているのは、私が思っていたのとはまったく違う状況でした。
父を責めるべきなのか、母をどう守ればいいのか、何が起きているのか。頭の中が混乱して、その場では気持ちの整理がつきませんでした。
このままではいけないと思い、病院に事前に事情を説明した上で、父の診断を受けるため、母に付き添う形で父にも同行してもらいました。そして医師に父の様子を見てもらったところ、認知症を発症しているとのことでした。
思いがけず父の介護が先になった
正直、それまで私は「いずれ母の介護が大変になるかもしれない」とばかり考えていました。けれど実際には、先に対応が必要になったのは父のほうだったのです。
父の体には目立った異常がなかっただけに、私は完全に油断していました。老いは誰にでも訪れるものだとわかっていたつもりでも、まさか父のほうが先に大きく変わっていくとは思っておらず、かなりショックを受けました。しかも、母に父の世話をすべて任せるのは難しい状況です。母自身も通院を続けているため、父を支える役目まで背負わせるわけにはいきませんでした。
母のことを心配していたはずが、気付けば父の変化に振り回される日々になっていました。元気に見えていた人のほうが、ある日突然大きく変わってしまうこともあるのだと痛感しています。
まとめ
これまで私は、母の介護をどうするかばかり考えていました。しかし実際には、父のほうに先に手がかかるようになり、今は毎日のように頭を悩ませています。老いは誰にでも訪れる――その当たり前のことを、私は思いがけない形で突きつけられました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:迫田修造/50代男性・会社員
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年4月)
※一部、AI生成画像を使用しています。
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