数年は異動の予定はないと聞いていたため、私はかなり驚きました。
当然のように私は「一緒に行く」と伝えたのですが、夫は少し困ったような顔をして首を横に振るばかり。
「お前は来なくていいよ。週末には帰るつもりだし、お前にもキャリアがあるだろ?」
そう言われると強く反対もできませんでした。ただ、新婚にもかかわらず、夫から寂しさのような感情がほとんど伝わってこなかったことに、妙な引っかかりが残ったのです……。
親友の指摘と変わっていった夫
不安から、親友に相談した私。すると親友は少しためらいながらも、「その転勤、旦那さんが自分から希望した可能性はない?」「もしかして、転勤先に女性がいるとか……」と口にしたのです。
そのときは「まさか」と笑い飛ばしました。しかし、一度芽生えた違和感は簡単には消えてはくれません。
さらに拍車をかけるように、単身赴任後の夫の態度は不自然になっていきました。
はじめこそ週末に帰宅したものの、だんだんと帰ってくる頻度は減っていき、電話をしてもどこか面倒そうで、こちらが話しかけても上の空。
私が「ひとり暮らし大変でしょ? 週末に作り置きのおかず持っていこうか?」と提案しても、返ってきたのは「来なくていいよ」「週末も仕事でいないから」という冷たい言葉だけ。
結婚したばかりなのに、ここまで物理的にも、心理的にも距離を置かれる理由がわかりません。
そして夫の帰宅はついに3カ月に1回程度になり、連絡も週に1度あるかどうか。こちらから送ったメッセージへの返信がないことも増えていきました。
夫が連れてきた“妊娠中の彼女”
そんなある日、珍しく夫から連絡が入りました。
「今週末、帰る」
「話したいことがある」
短いメッセージでしたが、嫌な予感しかしませんでした。
そして週末――玄関の扉が開いた瞬間、私は言葉を失いました。夫の隣には、見知らぬ若い女性が立っていたのです。
状況が理解できず固まっていると、夫はためらいもなくこう言いました。
「俺、この人と真剣に付き合ってる」
「子どももできた。だから離婚してほしい」
頭が真っ白になりました。夫は単身赴任先で不倫しており、さらに相手を妊娠させていたのです。
さらに夫は、あらかじめ用意していたらしい、記入済みの離婚届をテーブルに置きました。
「揉めるつもりはないから、サインしてくれ」
その態度は妙に自信に満ちていて、私が何も言い返せないと思い込んでいるようでした。
私が用意していたもの
「離婚なんてしないわよ! タダではね」
私が冷ややかにそう告げると、夫は「え?」と間抜けな声を上げました。簡単に自分の思い通りにいくと信じ込んでいたのでしょう。
私は離婚届を一瞥し、深くため息をついてからとある書類を夫たちの前に置きました。
夫が女性と腕を組んで歩く写真。ホテルの宿泊記録。二人の密会と不倫の決定的な証拠が克明に記された報告書。
不安ばかりが大きくなり、夜もまともに眠れなくなったころ――。私を心配して、親友が「調査会社に依頼してみたらどうか」と提案してくれたのです。わらにもすがる気持ちで、私は夫婦問題に詳しい調査会社に相談することに。
何もなければ安心できる――その期待はすぐに裏切られました。調査が始まって間もなく、夫が女性と親密に過ごしている証拠が次々と見つかったのです。
私はそれらの証拠を夫の前に並べながら言いました。
「揉めるつもりがないのは結構だけど、慰謝料はしっかり払ってよね」
「不貞行為の証拠はそろってるんだから」
その瞬間、夫の表情が一変。さっきまで強気だったのに、「俺は遊びのつもりだった、妊娠したから仕方なく……」「やり直せないかな?」と言い出したのです。この態度の変わりようには、不倫相手もあぜんとしていました。
まさか私が裏で調査会社に依頼して、しっかり慰謝料を請求してくるとは夢にも思っていなかったのでしょう。夫はそれまで私のことを「自分の言う通りになるおとなしい妻」だと完全にナメていたのだと思います。
もちろん、妊娠した女性を連れてきて離婚を迫ってきた夫の言葉を、今さら信じられるはずがありません。
「あなたとはやり直すつもりもないし、やり直せない」
「子どもができたんなら、ちゃんと父親として責任を取って。そして私の信頼を裏切った代償もしっかり払ってちょうだい」
その後、私は弁護士に依頼し、夫と相手女性の双方に慰謝料を請求。結婚生活はわずか1年ほどで終わりを迎えました。
元夫が自分から単身赴任を希望したのか、赴任後に関係が始まったのか、それとも以前から続いていたのか――真実はいまだにわかりません。しかし振り返れば、元夫は最初から私を単身赴任先へ近づけたくなかったのでしょう。
あのまま、違和感を見て見ぬふりをして結婚生活を続けていても、私はきっと幸せにはなれなかったと思います。当時はつらくて仕方ありませんでしたが、ようやく「早いうちに現実を知ることができてよかった」と思えるようになってきました。
親友からのアドバイスを受けて、勇気を出して現実と向き合ったからこそ、ようやく自分らしい人生を取り戻せた気がしています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。