ルールを守っているのに…
中心街の賃貸で生活していた私たち家族は、下の娘が1歳のタイミングで郊外のアパートに引っ越しました。以前より広くなったわが家に5歳の長女も大喜び。ご近所もファミリー世帯が多い印象で、平穏に暮らせそうでした。
生活を始めて2カ月が過ぎたころ、引っ越しの荷物もおおかた片づき、出たゴミをまとめておこうと整理。普段のゴミに加えて、段ボールや食器を包装する新聞紙などもたくさんありました。次の日がちょうど再生可能な紙類が対象のミックスペーパーの日だったことを思い出し、すぐに出せるよう紙袋にまとめてました。
そして翌朝ゴミを出しに行くと、後ろから「チッ、これだから最近の若い親は……」と、大きな舌打ちが聞こえました。振り返ると、腕を組んでこちらを睨みつけるおばさんの姿が。あいさつをしようとした私を遮り、おばさんはゴミ袋をわざわざ足で小突くようにして、「ねえ、あんた。新入りだからって、何を出しても許されると思ってんの? 子育てで忙しいアピールか知らないけどさ、ルールくらい守りなよ」とネチネチと話しかけてきたのです。あまりのトゲのある言い方に頭が真っ白になりました。
「え? 今日はミックスペーパーの日じゃ……?」と震える声で返すと、おばさんは待ってましたと言わんばかりに、「はぁ? 今日はプラスチックの日だよ! 私はここに20年以上住んでるんだ。新参者がゴミを不法投棄して街を汚すんじゃないよ。ほら、さっさとそれ、持って帰りな! これだから子連れは、街を汚すから困るんだ!」と怒鳴ってきたのです。手を繋いでいた長女も怖がって私の服をぎゅっと握りしめていて、次第に、私が回収日を間違えているのかも……と不安になってきました。
言い返すこともできずおろおろしていると、「朝から大きな声を出して、一体何事ですか」と後ろからおじさんがやってきました。おばさんは味方を得たと思ったのか、さらに勢いづいて「ちょっと、聞いてくださいよ! この引っ越してきたばかりの母親が、ルール違反のゴミを捨てようとしてるんです!」と私を指差しました。私の紙袋をちらっと見たおじさんは、「なに言ってるんですか! 今日はミックスペーパーの日! 今月は変更されてるの、広報で見てないの?」と言い放ちました。続けて、「私がゴミのルール決めたんだから間違いない」と助けてくれたのです。
実は、おじさんはこの地域に長く住み、何度も区長さんを引き受けた人なのだそう。現在のゴミ収集ルールを自治体と一緒に作り上げた本人だったのです。おばさんはみるみるうちに顔を真っ赤にし、金魚のように口をパクパクさせて硬直しました。しかし、非を認めたくないのか「でも! 子どもってうるさいし、飲み物とかお菓子こぼして汚いし、ほんと迷惑なのよ! そんなたくさんゴミも出して、もっとゴミ減らす努力してほしいわ!」と意味のわからないことを言い放って、逃げるようにその場を去っていきました。
おじさんは「びっくりしたよね。あの人、昔住んでいたアパートで、上の階に住むお子さんの足音でとても悩まれた人でね。ちょっと子連れに厳しい目を向けがちなの」とおばさんの事情を話してくれました。
とはいえ、相手にどんな事情があれど、自分の不満や思い込みを正義感に変えて他者を攻撃してはいけないと私は思います。おばさんを反面教師に、いつか私も地域に長く住む立場になったときは、新しい人を偏見の目で見るのではなく、事情に寄り添える広い心を持った大人でありたいと思った出来事でした。
著者:緒方佳子/40代・パート。絶賛プリンセスブームの5歳の長女と、いつもご機嫌1歳の次女を平日ワンオペ育児中のママ。帰りの遅い夫と毎日晩酌をしていたら、わがままボディに大変身。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年1月)