ここ最近、夫はやけに上機嫌でした。理由を聞くと、担当しているクラスの子どもたちがかわいくて仕方ないからだと言います。
私は「きっと将来はいいパパになるだろうな」と、ほほ笑ましく思っていたのですが……。
幼なじみと再会した夫
ある日の夕方、給食室の片付けを終えて保育園の玄関へ向かうと、夫が保護者のママと親しげに話しているのを見かけました。
普段から保護者とコミュニケーションを取るのも仕事のうちですが、その日はなんだか様子が違いました。夫は保護者と話しているとは思えないほど砕けた口調で、いつも以上に楽しそうに笑っていたのです。
近づいていくと夫は私に気づき、保護者のママに「妻で、ここの栄養士なんだ」と紹介してくれました。
夫によると、彼女は地元の幼なじみなのだそうです。最近シングルマザーになり、実家の近くに戻ってきて、この園に転園してきたとのことでした。
あいさつをすると、彼女は私の顔を見て「子どもはいるの?」と聞いてきました。「今は事情があって、まだなんです」と私が答えると、彼女は鼻で笑うようにして「彼、こんなに子ども好きなのに可哀想」と言い放ちました。
好きで子作りを保留しているわけではないのに……。私は彼女の言葉に、どうしようもないモヤモヤを抱えました。
「私と子ども作る?」
数日後の休日。夫がそわそわしながら「幼なじみから、子どもの自転車の練習を手伝ってほしいって頼まれちゃって」と出かけようとしていました。
私は慌てて、「いくら幼なじみでも、担当園児の保護者とプライベートで会うのは園の規則的にも良くないし、誰かに見られて誤解を招いたら大変だよ」と引き留めました。
しかし、夫は「幼なじみとして会うんだから平気だって!」と軽く考えており、聞く耳を持ちません。
玄関先で言い合いになっていると、夫のスマホに着信がありました。画面には幼なじみの名前が表示されています。
夫が電話に出ると「まだー?」という声が聞こえてきました。私は夫からスマホを奪い、「妻です。いくら幼なじみでも、担当園児の保護者と職員が園を通さず私的に会うのは、園の規則や職業倫理上問題になります」とハッキリ伝えました。
すると幼なじみは電話口でふっと笑い、「もしかして、子どもがいないヒガミ?」と……。さらに「子どもを作れないなんて可哀想! ねぇ、◯◯くん(夫)私と作る?」とまさかの発言まで飛び出しました。
冗談だとしても、あまりに非常識な言葉に私が絶句していると、隣で聞いていた夫は「マジか〜」とデレデレして、まんざらでもない様子。その無責任な態度に、私は腹が立って仕方がありませんでした。
私はスマホに向かって、「子作りしてもいいけど、本当に大丈夫?」と告げました。
選択子ナシの深刻な理由
私たちが子どもを作らないのには、切実な理由があります。夫には、独身時代に見栄と趣味のコレクションにつぎ込んで膨れ上がったカードローンの借金があるのです。結婚前にそれが発覚し、『完済するまで子どもは持たない』という条件で結婚しました。現在は、私が家計を切り詰めて一緒に返済をしている最中でした。
「夫には独身時代に作った借金があり、返済が続く限り家計は苦しいと思いますけど、それでもそれでもいいですか?」
そう告げると、電話口の幼なじみは「え……いや、冗談に決まってるでしょ」と明らかに声のトーンが下がり、そのまま電話をガチャ切り。ようやく自分の言動がどれだけ非常識だったか気がついたのか、夫は涙目で青ざめていました。
夫が見せたデレデレした態度にすっかり幻滅した私は、生活費から借金を一緒に返すのをやめることにしました。「これからは自力で全額返済して。お金のこともそうだけど、さっきのあなたの態度は許せない。子どもについて考えるのは、借金が完済できて、私たち夫婦の信頼関係が修復できてからの話」と告げました。
夫は幼なじみのところに出かけるのをやめ、その場で私に土下座しながら「ごめん。君が傷つくことを想像できていなかった。借金は自分でなんとかする。俺は君がいないと生きていけない。もう一度信頼してもらえるように頑張る」と謝罪の言葉を繰り返しました。
その後も、彼女とは園で顔を合わせますが、保育士と保護者以上の会話はなく、少しの気まずさを残したまま、夫は仕事に精いっぱい取り組んでいます。私はもう少し夫の様子をうかがいながら、これからのことを考えていくつもりです。
◇ ◇ ◇
保育士という立場で保護者とプライベートで会おうとする夫の行動は、プロ意識に欠けると言わざるを得ませんね。幼なじみの言動も非常識ですが、一番の問題は夫婦の約束を軽く見ていた夫の態度ではないでしょうか。
一緒に借金を返済し、将来の家族計画に向けて努力している妻の苦労を台なしにするような振る舞いは、信頼関係を深く傷つけます。パートナーとの約束はお互いを尊重する基盤であることを忘れず、誠実に向き合っていきたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。