結婚当初の夫はとてもやさしい人でした。家事を手伝ってくれましたし、私のことも大切にしてくれていたのですが、数カ月が経ったころから、夫の態度は徐々に変わっていったのです。
作った料理に細かく文句を言われたり、掃除のやり方を否定されたり……。
最初は「仕事のストレスかな」と思っていました。しかし次第に暴言も増え、「本当に要領が悪いな」「専業主婦なんだからちゃんとやれよ」と言われるようになっていたのです。
毎日夫の顔色をうかがいながら生活することに、疲れ切ってしまった私。離婚という言葉が頭をよぎることも少なくありませんでした。
突然やってきた問題児の妹
そんなある日のこと――。
玄関のインターホンが鳴り、ドアを開けると、大きなキャリーケースを持った妹が立っていたのです。
妹は昔から自由奔放な性格で、高校を中退したあとも仕事が長続きせず、ここ1年ほどは実家で暮らしていました。どうやら、両親と大喧嘩をして家を飛び出してきたよう。
「お母さんたちが働けってうるさいの。しばらく泊めてよ」
私はすぐに断ろうとしました。妹が近くにいると、いつも何かしらのトラブルが起きるからです。
ところが私が口を開く前に、夫が笑顔で言いました。
「困ってるんだから、しばらくうちにいればいいじゃないか」
私は反対しましたが、夫は「家族なのに冷たいな」と言い、妹も私を責めました。結局、私は押し切られる形で妹を泊めることになったのです。
夫と妹の裏切り
妹が同居を始めてから1週間ほど経ったころ。買い物から帰宅した私は、マンションの前で信じられない光景を目にしました。
夫と妹が腕を組んで歩いていたのです。まるで恋人同士のような距離感でした。
その場で問い詰めると、夫はニヤニヤ。
「見ればわかるだろ」
妹も得意げな表情で続けます。
「旦那さんもこの家も、私がもらうね♡」
「お姉ちゃんは出ていって!」
あまりにも身勝手な言葉に、怒りより先にあきれてしまった私。そのまま2人は私に離婚を求めてきたので、私はすぐに「わかった」「離婚しましょう」と答えました。
夫も妹も拍子抜けしたような顔をしていました。私がすぐにうなずくとは思わなかったのでしょう。
「その代わり、不倫の責任はきちんと取ってもらうから」
数日間かけて慰謝料について話し合い、条件がまとまったため、私は荷物をまとめて実家へ戻ることにしました。
実家に戻ってすぐ、両親にすべてを打ち明けた私。両親は私を責めるどころか、「本当に苦労したね」「私たちが妹を追い出したせいで、本当に申し訳なかった」と励まし、何度も謝ってくれました。
もちろん夫に裏切られたことはショックでした。しかし同時に、結婚生活そのものが限界だったこともまた事実。
わずか半年の結婚生活でしたが、あのまま我慢し続けるより、早い段階で人生をやり直せてよかったのかもしれないと思うようになりました。
思わぬ再会
離婚後、私は以前勤めていた会社へ復職。離職期間は半年程度だったため仕事の感覚もすぐに戻り、以前よりもますます仕事へ打ち込むように。次第に任される仕事も増え、昇給や昇進にも恵まれました。
実家を出てマンションも購入し、毎日忙しくも充実した日々を送っていたある日のこと――。
仕事から帰宅した私を、マンションのエントランスで待ち構えている人物がいました。
それは、妹でした。しかし、その姿は以前とはまるで別人。顔色は悪く、髪も乱れ、疲れ切った表情をしていたのです。
妹は私の職場を知っていたので、もしかすると後をつけてマンションを特定したのかもしれません。
私を見るなり、妹は泣き出しました。
「何よあの男! どうして本性を教えてくれなかったのよ!」
元夫は独立して会社を立ち上げたそう。最初のうちは順調だったものの、経験不足のまま事業を拡大したことで経営は悪化。資金繰りに追われるようになり、家庭にも余裕がなくなっていったと言います。
そして、経営が苦しくなるにつれて元夫の態度も変わっていったというのです。最初はやさしかったものの、次第に妹を見下すようになり、「役立たず」「お前のせいでうまくいかない」などと責め立てるようになったそう。
私は思わず苦笑しました。それは、かつて私が経験した結婚生活とまったく同じだったからです。
「お願いだから助けて」
「今までのことは全部謝るから」
妹は泣きながら頭を下げましたが、私はついぞうなずくことはありませんでした。
これまで何度も周囲を振り回し、自分の都合ばかりを優先して生きてきた妹。私自身もたくさん傷つけられてきました。
「私にはどうすることもできないよ」
「まずは自分で向き合わないと」
そう伝えると、妹は言葉に詰まりました。そしてしばらく泣き続けたあと、肩を落として去っていったのです。
その後も元夫の事業は立て直せず、最終的には会社をたたんだと聞いています。現在は生活を維持するために複数の仕事を掛け持ちしているそうです。妹も離婚を望んでいるようですが、生活基盤が不安定なこともあり、話し合いは思うように進んでいないとのことでした。
一方の私は、営業部長として充実した毎日を送っています。仕事も順調で、両親とも良好な関係を築いています。
妹を完全に見捨てるつもりはありません。ただ、本当に助けるべきかどうかは、妹自身のこれからのおこないによるだろうと思っています。
自分の過ちと向き合い、誠実に働き、傷つけてきた人たちへきちんと謝罪すること。それができたとき、初めて家族として、私は妹に手を差し伸べられるのかもしれません。
◇ ◇ ◇
目先の欲望を優先し、家族との信頼関係を壊してしまった妹。一方で姉は、裏切りというつらい経験を乗り越え、自分の力で新しい人生を切り開いていきました。
誰かから奪って手に入れた幸せは、長続きするとは限りません。どんなときも誠実さを忘れず、自分の行動に責任を持つことの大切さを考えさせられるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。