しかし、夫が突然「母さんも連れて行く」と言い出しました。新婚旅行になぜ義母が同伴するのかと驚き、私が難色を示すと、夫は不機嫌になりました。
女手一つで育ててくれた親を大切にするのは当然だと主張し、同行を断るなら旅行にも行かない、とまで言われたのです。
結局、部屋を別にすることと、一緒に過ごすのは数日だけにすることで同意。旅行の手続きや変更もすべて私がおこないました。
親孝行を否定するつもりはありませんでしたが、新婚旅行に同行するという考えは受け入れ難いものでした。
積み重なる疲労と不満
現地に到着してからも、夫は義母の機嫌ばかりを取り、私をまるで専属の通訳や案内係のように扱いました。義母が疲れたと言えば、予定を変更してホテルに帰って部屋で休ませ、私には炎天下で人気のランチをテイクアウトするために行列に並ばせる始末。
夫に不満を漏らしても、海外に不慣れな義母を優先するのは当然だと取り合ってくれません。
せっかくのきれいな景色も海辺のレストランの食事も、「母さんも一緒だったらなぁ」と言われるため、なんだかモヤモヤとした不満が溜まっていきました。
夫がこんなにマザコンだとは、結婚前は思ってもみませんでした。
許せない暴言
決定的な出来事は、翌朝に起こりました。義母が現地の水道水でうがいをしているのを知り、注意を促したことが発端です。
海外の水道水はそのまま口にすると激しい腹痛を起こす危険があるため、気をつけてほしかっただけなのですが……。夫は私の注意に対し「母さんを馬鹿にしている」と受け取り、私を理不尽に責め立ててきたのです。
私が反論すると、夫は「もういい、お前の顔を見たら飯が不味くなる。今日は母さんと二人で行動するから」と言って、出かけていってしまいました。
その日はマリンスポーツを予約していたのに……。新婚旅行の主役は私たちではなく、ただの親子旅行なのだと思い知らされたのです。
一人での決断と帰国
ひとりで海に行く気にもなれず、私は荷物をまとめました。夫たちがどこかへ行っている隙に、飛行機のチケットを取り直し、そのまま帰国する手続きを進めたのです。
しかし私が飛行機に乗って帰路についたとき、夫から焦った様子で連絡が入りました。義母が激しい腹痛と嘔吐で苦しんでおり、緊急事態なので今すぐ通訳をしにきてほしいという内容でした。
私が注意した水道水が原因なのか、それともその日何か怪しいものを口にしたのか……。いずれにしても、食べ物や飲み物にあたったのでしょう。
冷酷な現実
私が、自分がすでに日本に帰っているという事実を伝えると、夫は激しく取り乱し、救急車の呼び方も病院の探し方もわからないと声を荒らげます。
そう言われても、私はもう引き返すことはできません。これまでの夫の言動を思えば、自業自得だという気持ちもありました。とはいえ、体調を崩している義母を放っておくわけにもいきません。私は現地の病院の連絡先を調べ、症状を伝えるための簡単な英語も夫に送りました。
後日聞いた話によると、英語でのコミュニケーションが困難な夫と義母は、自力で病院を受診するまでに大変な苦労をしたそうです。症状を伝えることにも手間取り、その上予定通りの帰国ができず、延泊費用や高額な治療費など、余分な出費が発生したのだとか。
穏やかな日常へ
私は彼らの帰国を待って離婚を申し出ました。夫は「新婚旅行で少し揉めただけだろう」「そこまで大げさにすることじゃない」と受け止めていない様子。
しかし私にとっては、旅行中の出来事だけが原因ではありません。新婚旅行という夫婦にとって大切な時間でさえ、私の気持ちは後回しにされ、義母の世話役のように扱われたこと。そのうえ、心配して注意した言葉まで悪意として受け取られ、ひどい言葉を投げつけられたことが、どうしても忘れられませんでした。
「この先も、何かあるたびに私よりお義母さんを優先するんだろうな」そう思った瞬間、夫婦としてやっていく未来が見えなくなったのです。
話し合いを重ねて無事に離婚が成立しました。今では自分の両親と穏やかな旅行を楽しみ、平和な生活を取り戻しています。
◇ ◇ ◇
異国の地で誰にも頼れず右往左往し、自業自得の結末を迎えたのは、まさに因果応報と言えるでしょう。
「親孝行」という言葉は聞こえが良いですが、親から精神的に自立できていない夫は、それを言い訳にして最も大切にすべきパートナーを犠牲にしてしまうことがあります。
せっかく縁あって新しい家族になったのだからこそ、何よりもまず目の前のパートナーを大切にし、互いを思いやりながら本当の意味での夫婦の絆を築いていきたいものですね。
【取材時期:2026年4月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。