警備員に呼び止められた私がゾッとしたのは
その日は夕食の買い出しでスーパーに立ち寄り、娘をベビーカーに乗せたまま、急いで店内を回っていました。娘はじっと座っているのを嫌がる時期で、ぐずり出す前に買い物を終わらせようと思っていたからです。
なんとか会計を済ませ、ベビーカーを押して出口へ向かおうとした時でした。
「お客さま、少しよろしいでしょうか」
何やら神妙な顔をして声をかけてきたのは、店内を巡回していた警備員でした。警備員の表情に、私は一瞬、何事かと驚き、怖く感じてしまいました。
何のことかわからないまま立ち止まると、警備員はベビーカーの座席脇を指しました。そこには、会計をしていないチョコレート菓子が入り込んでいたのです。
私はその商品を手に取った覚えがなく、一瞬、息が止まりました。けれど、娘が座っていた位置から手を伸ばせそうな商品だったことに気付き、私が買い物に気を取られている間に、娘が取ってしまったのだと思いました。
「すみません、まったく気付きませんでした。娘が取ってしまったのだと思います。すぐにお支払いします」
慌てて伝えると、警備員は落ち着いた声で、「確認がありますので、こちらへお願いします」と言いました。
案内されたのは、普段の買い物では入ることのない、売り場から離れた場所でした。ベビーカーを押しながら警備員の後ろを歩いているうちに、ようやく自分が万引きを疑われているのだと実感しました。
盗るつもりなどなかったのに、このまま信じてもらえなかったらどうしよう。娘を連れたまま、何を聞かれるのだろう。
そう思うと、足元がふわふわして、買い物袋を持つ手にも力が入りませんでした。
娘は何もわからない様子で、ベビーカーに座っていました。いつものように足を動かしている娘を見ていると、目を離してしまった申し訳なさと、これからどうなるのかわからない怖さで、胸がいっぱいになりました。
しばらくして責任者の方が来たので、商品が入っていることには本当に気付いていなかったこと、娘が買い物中に手に取ってしまったのだと思うとあらためて説明しました。
「本当に申し訳ありません。すぐに支払います」
何度もそう伝えた末、最終的には、商品の代金をその場で支払うことで、それ以上の対応にはなりませんでした。
ようやく店を出られた時には、全身から力が抜けるようで、夕食の材料が入った買い物袋を持っているのに、その日の献立を考える余裕も残っていなかったぐらいです。
それ以来、子どもを連れて買い物をする時は、会計前にベビーカーの座席まわりや荷物入れを必ず確認するようになりました。
娘に悪気はなかったと思います。それでも、気付かなかった私の責任でお店に迷惑をかけてしまいました。小さな子どもとの買い物では、「そんなことはしないだろう」と思い込まず、親が最後まで目を配ることの大切さを思い知らされた出来事です。
著者:田町真生/20代女性/3歳の娘の育児と仕事の両立に奮闘中。趣味はお菓子作り
イラスト:はたこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年5月)
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