やば男の言葉を信じられるはずもなく、しかし、みちるに経済的な余裕はありません。少額であっても払わせることを決め、「絶対に払いなさいよ」と伝えますが、やば男が家賃を支払ったのはたったの2カ月……。
家賃はおろか、これまで一度も養育費を払わなかったやば男に差し押さえの措置をとろうと考えますが、当時はそのハードルがとても高く、養育費に関する取り決めなく、勝手に離婚届を提出されたみちるは断念せざるを得なかったのです。
長男から父親のクズぶりを聞かされた娘は、母親にとある疑問を…












※離婚届を配偶者の同意なく作成・提出する行為は、有印私文書偽造罪や偽造私文書等行使罪などに問われる可能性があります。前もって「不受理申出」の手続きをおこなうことで、本人の意思に基づかない離婚届が受理されることを防ぐことができます。
家賃の振り込みを催促してものらりくらりと交わされ、長男が仕方なくやば男の自宅に赴くと、そこには明らかに父親のものではない化粧道具……。
「これ何?」と聞くと、やば男は誤魔化すように1万円を差し出し、「俺の父親、とんでもなくクズなんじゃ……」と気づいた長男は、そこで初めて母親と父親が離婚していることに気づいたのでした。
不倫をされ、隠し子をもうけられ、勝手に離婚届を提出され、さらにはやば男の借金によって夜逃げを強いられ、養育費も払われないまま、女手ひとつで3人の子どもを育ててきたみちる……。やば男の身勝手さは明らかに度を越していますが、それでも子どもたちにとっては、ただひとりの父親です。
みちるは父親の愚かさを子どもたちに知られまいと、勝手に離婚届を提出された事実を伏せてきたのでしょう。そして、子どもたちも別居が続く両親の関係に何らかの違和感を抱いていたかもしれません。しかし、その違和感よりも、自分たちのために必死に働く母親への感謝の気持ちが勝っていたからこそ、詮索を避けたのではないでしょうか。
両親が離婚したことや、その理由を子どもに伝えなければならないという法的な決まりはありません。一方、法律では、離れて暮らす親と子どもが交流する「親子交流(面会交流)」の取り決めについて定められており、その内容は子どもの利益を最優先して考慮しなければならないとされています。
子どもへの暴力や暴言が危惧される場合や、面会によってつらい記憶が呼び起こされる恐れがある場合、また、連れ去りのリスクが考えられる場合や、子ども自身が面会を明確に拒否している場合などには、事情に応じて面会が制限されたり、見送られたりすることもあります。みちるの場合は、自身がやば男からどんなに傷つけられても、子どもにとっては“いい父親”のままでいさせたかったのでしょう。
それはきっと、子どもたちの心の安定を第一に考えていたからこそ。子どもへの愛情の注ぎ方は十人十色ですが、やば男の非道ぶりを決して子どもたちに伝えずにきたみちるの選択もまた、子どもへの愛情のひとつの形であり、親としての強さなのかもしれませんね。
岡田ももえ