訪れたチャンスと夫の豹変
そんなある日、夫が開発したソフトを大手企業が採用してくれることになりました。契約の際、「仕事を進めるための資金」として、まとまった前払い金(着手金)を先に振り込んでもらえたようで、ついに夫にチャンスが到来しました。
しかしこれはまだ夫の会社にとって最初の一歩でしかありません。気を引き締めて、一層頑張らねばならない時期だったはずでしたが、夫は有頂天になってしまったのです。
前払い金はあくまで「開発を進めるための会社の経費」。それなのに夫は、自分のお小遣いが増えたと勘違いし、個人のスーツや時計にお金を使い、社員を引き連れて高級なお店に頻繁に出かけるようになりました。
「まだ納品も終わっていないのに、会社のお金を遊びに使って大丈夫なの?」と夫に釘をさすと、「縁起が悪い」「お前がそんなことを言うから士気が下がる」と文句ばかり言い放ちました。ついには、私のような現実的な人間と一緒にいると想像力が欠如すると言い張って、家に帰らず会社に泊まり込みで仕事をする日が増えていきました。
あるとき、家に下着を取りに帰ってきた夫が「重要書類」と書かれたクリアファイルを忘れて会社に戻ってしまいました。今日取引先に渡さなければならないものだとわかった私は、急いで夫を追いかけたのです。
会社のドアを開けようとしたところ、中から夫と若い女性スタッフが楽しそうに笑う声が。そっと中を覗くと、二人が寄り添って親密そうにしている姿がありました。夫は「あいつもうババアだし、そろそろ離婚するから」と、信じられない暴言を吐いていたのです。
悲しみから静かな闘志へ
その瞬間、私の中で張り詰めていた糸がプツリと切れました。夫の忘れ物を静かに会社のポストへ投函し、私は一切の感情を抑えてその場を後に。
そして数週間後の夜のこと。帰宅した夫は、偉そうに腕を組みながら「俺も社長として箔がついたし、お前みたいに夢のない女とは合わない。俺を支えてくれる別の女性がいるから、離婚してくれ」と、堂々と切り出してきました。
私が泣きついてすがると思い込んでいたのでしょう。しかし私は一切取り乱すことなく、満面の笑みで「OK! 助かる!私もちょうどそう思ってたの」と即答したのです。
驚いてポカンとする夫の目の前に、あらかじめ用意していた記入済みの離婚届と、浮気の決定的な証拠写真、そしてきっちりと計算された慰謝料の請求書を並べて見せました。自分が優位だと思い込んでいた夫は、私が一枚も二枚も上手だったことに顔面蒼白になり震えていました。私は十分な慰謝料の支払いを約束させ、一切の未練を残すことなくすんなりと離婚を成立させたのです。
元夫を襲った絶望の瞬間
私と別れた後、元夫は浮気相手と自由な生活を満喫していたようですが、その代償はすぐにやってきました。
元夫は私への慰謝料を自分の貯金から払おうとしましたが、それでもたりず義両親から借金をして支払いました。
夫は「会社には大きな契約の着手金が入ったから、すぐに取り戻せる」と経営を甘く見ていたのでしょう。
しかし、着手金はあくまで開発を進めるための事業資金です。それすらも自身の見栄や浮気相手との豪遊で使い込んでいたため、会社の口座はあっという間に資金が底を突いてしまいました。個人の蓄えは慰謝料で消え、会社のお金は遊びで消滅した最悪の状態。必要な機材も買えず開発も進まず、当然ながら約束の納期にも間に合いませんでした。焦った元夫は、あろうことか取引先からの連絡から逃げ回っていたそうです。
当然、そんな不誠実な対応が許されるわけがありません。後日、激怒した取引先の担当者が直接元夫の会社へ乗り込んできました。「一切の進捗が見られないうえに、連絡も無視するとは明らかな契約違反です。本契約は白紙撤回とし、前払い金の全額返還と、開発遅延による損害賠償を請求します」と、ビジネスとして当然かつ冷酷な通告を突きつけられたのです。
私が手に入れた晴れやかな再スタート
会社のお金と自分のお金を混同し、さらに個人の蓄えすらも慰謝料で失っていた元夫に、取引先へ返還するような資金力は残されていませんでした。
大手企業からの信用を完全に失い、多額の負債を抱え込んだ会社は、あっけなく倒産に追い込まれました。金の切れ目が縁の切れ目と言わんばかりに浮気相手も去っていき、元夫は一人孤独に借金の返済に追われる惨めな生活を送っていると風の噂で耳にしました。
現在、私は新しい職場で充実した毎日を送っています。苦労ばかりの結婚生活から解放され、これからは自分自身の幸せのために、前を向いて力強く歩んでいこうと思います。
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パートナーからの献身的なサポートを当たり前と思い込み、感謝の気持ちを忘れてしまうと、いつか自分自身の足元をすくわれる結果を招いてしまいます。仕事においても家庭においても、最も大切なのは誠実さと信頼関係ではないでしょうか。どんなときも謙虚な姿勢を忘れず、お互いを思いやりながら、心穏やかで前向きな人生を築いていきたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。