産後1カ月が経ち、里帰り出産から自宅へ戻ることに。これからは夫と協力しながら育児をしていこうと思っていたのですが……。
事業は軌道に乗ってきたけれど……
私と娘の帰宅を楽しみにしていると言っていた夫でしたが、実際にはパーティーや会食、取引先との付き合いで家を空けることが多く、育児を手伝う時間はほとんどありませんでした。
会社経営には人脈づくりも必要なのだろうと思い、「ママを助けたい」という夫の初心を信じて見守っていました。その甲斐もあってか、半年後には会社の業績も上向きに。社員も増え、ようやく家族との時間が増えるかもしれないと期待していました。
ところが、夫の生活は相変わらずでした。さらに、家庭の貯金からまとまった金額が引き出されることも増え、不安を感じるようになったのです。
地元の情報誌で「若手経営者」として紹介されて以降、夫の交友関係はさらに広がっているようでしたが、家計への影響も気になっていました。
突然の離婚宣告!でも、不倫相手に見覚えが…?
貯金が減るペースは次第に速くなりました。事業資金なのか、それとも何か別のことにお金を使っているのか、心配は募るばかりです。ひとりで悩んでも答えは出ません。思い切って夫を問い詰めると、表情が一変しました。
夫はしばらく黙り込んだあと、「話さなきゃいけないことがある」と言いました。ようやく事情を聞けると思った矢先、仕事の電話が入り話は中断。その日は結局何も聞けないまま終わってしまいました。
モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、私は朝を迎えることに。翌朝になっても、夫はどこか落ち着かない様子でした。何度か話しかけようとしましたが、夫はスマホを気にしたり、奥の部屋にこもったりしていて、なかなか切り出すタイミングがありません。私も娘の世話をしながら、「昨夜の話の続きを聞かなければ」と思っていた、そのときです。
玄関のチャイムが鳴り、夫が慌てて玄関を開けに行きました。不審に思って後を追うと、そこには見知らぬ女性が立っています。初めて見るはずなのに、どこかで見たような気がして、胸がざわつきます。すると、夫は私のほうを振り返って言いました。
「ごめん。いろいろ考えたんだけど……離婚してくれないか」
そう言って、夫は離婚届を差し出したのです。突然のことに言葉を失う私。すると女性も、「そういうことなんです」と口を挟みました。女性の顔を間近で見た瞬間、私はようやく女性をどこで見たのか思い出しました。
不倫相手を見て、連絡したのは“自分の弟”
「この人、知っている……!」そう思った私は、動揺を隠しながら離婚届を確認するふりをし、近くで仕事をしている弟にこっそりメッセージを送りました。女性の特徴と、夫から突然離婚を切り出されたことを手短に伝えると、しばらくして弟がわが家にやって来ました。
実は以前、弟の会社の先輩が、ある女性と金銭トラブルになったことがありました。
その女性は「出資者を紹介できる」「事業を大きくできる」などと言ってお金を受け取りながら、約束を果たさなかったそうです。
相談を受けた弟は先輩と一緒にSNSなどを調べ、同じような被害を訴える投稿を発見。その中に女性の写真もあり、私も以前見せてもらったことがありました。だから玄関先に現れた女性を見た瞬間、「どこかで見たことがある」と感じたのです。
弟も女性の顔を見るなり表情をこわばらせました。「……この人、前に話した女性にかなり似てる」弟の言葉に、女性は明らかに動揺した様子で目をそらしました。夫は「どういうことだ!?」と混乱しています。
私は夫に向かって言いました。「この人、以前弟の知人と金銭トラブルになった女性と特徴がよく似ているの。会社への出資や事業の相談という名目で、お金の援助を求められなかった?」
すると夫は、心当たりがあったようで、「ウソだろ……」とつぶやき、呆然としていました。
夫の自業自得な末路
夫はその後、女性から「あなたの会社はもっと大きくなれる」「出資者を紹介できるけれど、先に準備金が必要」「私もあなたの力になりたい」などと言われ、少しずつお金を渡していたことを認めました。
最初は仕事につながるならと少額を渡していたそうですが、女性から将来をほのめかされるうちに判断が鈍り、次第に金額は大きくなっていったとのこと。気づけば、家庭の貯金にまで手をつけていたのです。夫はようやく、自分が都合よく利用されていた可能性に気づいたようでした。
しかし、私にとって問題は“お金”だけではありません。私と娘をないがしろにし、突然離婚届まで差し出してきた事実は消せません。
女性に都合よく利用されていたことに気づいた夫は私に復縁を迫ってきましたが、もちろんお断りしました。不倫の事実と家庭を顧みなかった責任を問い、きっちり慰謝料を請求して離婚が成立。私は娘と一緒に実家に戻り、家族のサポートを受けながら、育児と仕事の両立に向けて前向きに歩み始めています。
一方の夫は、不倫騒動と金銭トラブルの件が社内にも広まってしまったようです。「ママを助ける会社と言いながら、自分の家庭すら大切にできない社長にはついていけない」と、呆れた社員たちが次々と退職。
信用を失った会社は業務が回らなくなり、事業を大きく縮小することになったと風のうわさで聞きました。志高く立ち上げた会社でしたが、自分の行動が招いた結果だったのだと思います。
◇ ◇ ◇
夫婦の信頼は、特別な出来事よりも、日々の小さな誠実さの積み重ねで築かれていくものです。家族に隠れてお金を使ったり、大切な話し合いを避けたりすれば、どれほど立派な理由があっても、相手の心には深い不信感が残ってしまいます。
信頼している相手だからこそ、違和感を覚えたときに確認するのは勇気がいるものです。それでも、不安をそのままにせず、早めに向き合うことが、自分や家族を守ることにつながるのかもしれません。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。