夫は結婚当初から、家事や育児にほとんど関わろうとしませんでした。
「家事も育児も女の仕事だろ」
そんな考えを隠そうともせず、当然のように口にしていたのです……。
家事も育児もしない夫
在宅ではありますが、私も仕事をしているため、家事と育児と仕事の両立が苦しくなることも。
「少しでいいから手伝ってくれない?」とお願いしても、夫は「俺は仕事で疲れてるんだよ」「家では休ませてくれ」と不機嫌そうに返すだけでした。
時には声を荒らげることもありました。夫が大きな声を出すと、まだ幼い息子はびくっと体を震わせます。その姿を見るたびに、私は反論することをためらうようになっていきました。
休日も夫はソファでスマホを見ながら過ごし、家事や育児をするどころか、「掃除が雑じゃない?」「おかず少なくない?」と文句たらたら。
納得できないことがほとんどでしたが、私は「息子のため」と自分に言い聞かせながら我慢を続けていました。
息子と私が体調を崩した日
そんなある日、息子が風邪をひきました。夜泣きも増え、何日も看病を続けていたのですが、今度は私まで体調を崩してしまいました。高熱が出て、立っているのもつらい状態に。
私は夫に、「ごめん、熱が高くてしんどいから少し息子を見てもらえない?」と頼みました。
ところが返ってきたのは、想像もしなかった言葉でした。
「子どもの風邪をもらうなんて、体調管理ができてないだけだろ」
さらに夫は、「結果は全部、自己責任なんだよ。病気も同じだ。俺にうつさないでくれよ」と言い残し、自分の部屋へ行ってしまったのです。
ぐったりしている息子と、高熱で動けない私。それなのに、心配の言葉ひとつありませんでした。
熱でボーッとしていましたが、ものすごくショックでした。と同時に、私の中で堪忍袋の緒が切れたのです。
もう我慢するのはやめよう――高熱で体はふらふらしながらも、その決意だけは揺らぎませんでした。
助けを求めてきた夫
それから数週間後のこと。
仕事から帰宅した夫は、いつになく暗い表情をしていました。食事中もほとんど口を開かず、息子が寝てしばらくしてから、不安そうな顔でぽつりとこう言ったのです。
「会社の業績が悪くてさ……。部署の再編があるらしい」
「もしかしたら俺もリストラの対象になるかもしれない」
私は静かに答えました。
「結果は自己責任なんでしょ?」
驚いたように私を見た夫。構わず私は続けます。
「高熱を出したとき、私も息子も本当に苦しかった。でもあなたは助けてくれなかった」
「自分が困っているときは助けてくれると思ってるの? そんなの虫が良すぎない?」
「共働きなのに家事も育児もしない。困っている家族に寄り添おうともしない」
「そんな生活を、この先も続けられるとは思えない」
ずっと胸にため込んでいた思いを初めて真正面から夫にぶつけた私。そして、「少し実家に帰って考えたい」と話しました。
翌朝発とうと、私が荷物をまとめ始めると、夫は慌てた様子で引き止めました。そして、これまで聞いたことのない弱々しい声で話し始めたのです。
「仕事のことでずっと余裕がなかった」
「家に帰っても不安ばかりで、そのストレスをお前にぶつけてた」
「本当に最低だったと思う」
「支えてもらっていたのに、感謝もしてなかった」
そう言って頭を下げた夫。言い訳ではなく、自分の非を認める言葉でした。
もちろん、すぐに許す気持ちにはなれませんでした。しかし、初めて夫の本音を聞けたことに、どこか安心している自分もいました。
私が出した結論
私は荷造りの手を止めて言いました。
「正直、すぐには信じられない」
「でも本気で変わろうとしているなら、もう少しだけ様子を見る」
「ただし、次はないからね」
夫は何度もうなずいていました。
その後、少しずつ行動を変えていった夫。
息子のおむつ替えやお風呂を担当するようになり、休日には一緒に公園へ行くように。食後の片付けや洗濯も進んで手伝ってくれるようになり、以前のように怒鳴ることもなくなりました。
会社の組織再編はあったものの、夫は結果的にリストラされることなく勤務を続けています。
もちろん、今でも意見がぶつかることはあります。それでも以前とは違い、お互いに話し合える関係になりました。
夫婦だからといって、相手に甘えすぎたり、感情をぶつけたりしていいわけではありません。むしろ家族だからこそ、思いやりや感謝を言葉にして伝えることが大切なのだと、今回の出来事を通して強く感じました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。