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「田舎の農園には合わせられない」見下す取引先。契約終了から半年後に届いた思わぬ連絡

私は、妻と義父とともに、家族経営の農園で野菜を育てています。長年、手間を惜しまず育ててきたトマトは、ありがたいことに取引先からも評価をいただいていました。ところが、ある契約更新の話し合いをきっかけに、私たちの農園は大きな転機を迎えることになったのです。

 

突然告げられた契約条件の見直し

その日、私は妻と義父と一緒に、朝から畑で作業をしていました。その日は、長年トマトを納めていた取引先・Aフーズの視察が予定されていました。訪れたのは、新しく仕入れ部門を任されることになったB田さんでした。

 

最初は通常の視察だと思っていたのですが、話はすぐに契約更新の件へと移りました。B田さんは、「次の契約からは、仕入れ価格を下げていただきたいと考えています」と切り出しました。

 

私は、資材費や燃料費が上がっていること、品質を維持するためには収穫や選別にも人手が必要なことを説明しました。義父も、土づくりや収穫時期の見極めにどれだけ手間をかけているか、落ち着いた口調で伝えました。

 

しかし、B田さんはあまり納得していない様子でした。

 

「こだわりと言われても、こちらは価格が重要なんです。今はほかにも仕入れ先がありますから。田舎の農園のやり方に、いつまでも合わせるわけにはいきません」

 

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が冷たくなるような気がしました。私たちが大切にしてきた農園のやり方を、見下されたように感じたのです。

 

契約更新の時期が近づいていたこともあり、後日、正式に「次回契約の継続は見送る」と連絡が届きました。長く続いていた取引が終わることになり、私たちはしばらく言葉を失いました。

 

義父のひと言で見えた次の道

連絡を受けた後、私は落ち込みました。これまで積み重ねてきたものを、価格だけで判断されたように感じたからです。後日、作業終わりに「お義父さん、どうしましょう」と不安をぶつけてみると、義父は腕を組んだまま静かに言ったのです。

 

「ほう? 上等だ。なら、うちの野菜を本当に見てくれる相手に届けよう」

 

妻は何も言いませんでしたが、こわばっていた表情が少し和らいだように見えました。

 

それから私たちは、改めて自分たちの農園の強みを見直すことにしました。土づくり、収穫のタイミング、選別の基準、出荷先とのやりとり。今まで当たり前だと思っていた作業を、一つずつ確認し直したのです。

 

義父は「焦るな。ちゃんと作っていれば、わかってくれる人はいる」と言いました。その言葉に支えられながら、私たちは、改めて丁寧に畑と向き合いました。大きな取引先を失った不安はありましたが、それでも、私たちにしか出せない野菜の味があると信じたかったのです。

 

 

地元の料理人が見つけてくれた価値

数カ月後、転機が訪れました。以前から直売所でうちのトマトを買ってくれていた地元レストランのシェフから、「このトマトを店で使わせてもらえませんか」と相談が入ったのです。シェフは、「味が濃くて、料理に使っても存在感があるんです」と言ってくれました。

 

その言葉を聞いたとき、私は思わず妻と顔を見合わせました。大きな取引先を失ったばかりの私たちにとって、それは何よりうれしい評価でした。

 

すぐに大きな売り上げにつながったわけではありません。それでも、そのシェフが知り合いの料理人にうちのトマトを紹介してくれたことをきっかけに、少しずつ問い合わせが増えていきました。

 

やがて、地元の飲食店や小売店との取引も広がっていったのです。大量出荷ではありませんが、味や品質をきちんと見てくれる相手との関係は、以前よりもずっと安心できるものでした。

 

一方で、Aフーズでは仕入れ先を切り替えた後、以前の味を惜しむ声も一部であったらしいと、後に知人を通じて耳にしました。

 

野菜は収穫後の輸送や保管の条件によって、鮮度や味わいに差が出ることもあります。もちろん、どの産地にも良いものはありますが、私たちのトマトを必要としてくれていた現場があったのだと知り、少しだけ胸が熱くなりました。

 

契約更新を見送られてから半年ほどたったころ、B田さんから再び連絡がありました。

 

「条件を見直すので、もう一度取引を検討してもらえませんか」

 

私はすぐには返事をしませんでした。義父と妻にも相談し、条件だけでなく、今後どのような関係で取引を続けられるのかを慎重に考えました。

 

最終的に、私たちは再契約を見送ることにしました。理由は、条件面だけではありませんでした。すでに地元の飲食店や小売店との取引が始まっており、限られた収穫量の中で、今ある取引を大切にしたいという思いもありました。何より、野菜づくりは相手との信頼関係があってこそ続けられる仕事だと、改めて感じたからです。

 

その後、私たちはトマト栽培で培った経験を生かし、以前から義父が関心を持っていたいちご栽培にも挑戦しました。最初から思うようにいったわけではありませんが、土づくりや収穫のタイミングを一つずつ見直しながら、少しずつ納得できる味に近づけていきました。やがて、地元の品評会で評価していただく機会にも恵まれ、あのとき取引を失った経験が、新しい挑戦につながったのだと感じました。

 

まとめ

今回のことで、私は「大きな取引先があること」と「安心して仕事ができること」は、必ずしも同じではないのだと知りました。

 

契約を失った直後は、不安でいっぱいでした。けれど、義父の言葉に背中を押され、妻と一緒に畑と向き合い続けたことで、私たちの野菜を本当に必要としてくれる人たちと出会うことができました。

 

目先の条件に揺らいだときほど、自分たちが何を大事にしてきたのかを見つめ直す必要があるのだと感じました。あの悔しい出来事も、私たちの農園にとって必要な転機だったのかもしれません。

 

 

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

 

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ライターベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班

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