息子が感じていた夫への違和感
ある日、パートから帰宅した私が夕食の片付けをしていると、A男が少し迷ったような顔で「母さん、最近、何か父さんの様子が変じゃない?」と話しかけてきました。
夫の帰宅が遅くなったり、休日にひとりで出かけたりすることは、私も気になっていました。「突然どうしたの?」と聞くと、A男は言いにくそうに目をそらしました。
「実はこの前、父さんのスマホに女の人からメッセージが来てるのが見えちゃってさ。気になって父さんに『これ誰?』って聞いたんだ。そしたら『仕事の人だよ』って慌ててスマホを伏せたから、変だなって思って……」
A男は、私が何か知っているかを確かめるように、ちらりとこちらを見ました。そして、少し申し訳なさそうに言葉を続けました。
「それでも気になって聞いたら、父さんは急に母さんの話をし始めたんだ。『母さんが家にいないから、家の中がうまく回ってない』って。母さんは家にいたくないから、わざとシフトを増やしてるんじゃないかって」
そして「父さん、何か隠してるのかな……。それに、母さんが家にいたくないっていうのは本当なの?」と、不安そうに問いかけてきたのです。その言葉に、胸が締め付けられました。A男は父親の不可解な言動と、母親の不在への寂しさの間で、ひとり静かに傷つき、揺れていたのです。
私は、A男には心配をかけたくない一心で、家計の状況については伝えていませんでした。もちろん家にいたくないのではなく、家計を支えるために仕方なくパートに出ていたのです。それなのに夫が女性の話題から、私が家にいないことへ話をすり替えたように聞こえ、悔しさが込み上げてきました。
息子の誤解が解けた夜
夜、夫が帰宅してから、私はA男の前で確認しておきたいことだけを話すことにしました。夫がA男に、私を悪者にするような話をしていた以上、その誤解だけは今すぐ解く必要があったからです。私は夫に向かって、静かに切り出しました。
「あなた、A男に『私は家にいたくないからシフトを増やしている』って話したの?」
夫は一瞬、気まずそうな顔をして「別に深い意味があって言ったわけじゃない。ただ、家にいない時間が多いのは事実だろ」と言い訳をしました。
私は深呼吸をしてから「あなたの付き合いや趣味の出費が増えて、その穴埋めをするためにシフトを増やさざるを得なかったの。違った?」と答えました。そして以前、生活費の入金が遅れた月や、予定より少なかった月があったことを挙げると、夫は何も言い返せませんでした。
私はA男に向き直り「寂しい思いをさせてごめんね。お母さんは家にいたくないわけじゃないよ」と言いました。するとA男はハッとした表情になり「母さん、ごめん。俺、父さんの話だけ聞いて、勝手に勘違いして不安になってた……」と小さな声で言いました。
私はその後、「ここから先はお父さんと2人で話すから、A男は部屋に戻っていて」と伝えました。A男は少し安心したような顔で、「うん」と言ってリビングを出ていきました。
夫婦だけで向き合ったこと
A男が部屋に戻った後、私は夫に向き直りました。
「もう1つ聞きたいことがある。別の女性と、連絡を取っているの?」
夫はすぐに「仕事の連絡だ」と言い張りました。けれど、休日に出かけていた理由や、帰宅が遅かった日の予定を一つひとつ確認していくと、説明は少しずつ変わっていきました。「仕事の関係だけなら、どうしてそんなに話が変わるの?」と聞くと、しばらくの沈黙の後、夫は職場の女性と私に隠れて何度も会っていたことを認めました。
しかし、本当に許せなかったのは、私に隠れて女性と会っていたことだけではありません。生活費の不足を私に補わせ、家計を丸投げにしていたこと。そして何より、自分を守るためにA男を巻き込み、母親への不信感を抱かせるような話をしたことでした。
夫は「そんなつもりじゃなかった」と繰り返しましたが、その言葉を聞いても、私の心は動きませんでした。
このまま夫と一緒にいれば、家計の負担を私が背負い続けることになり、A男の進学費用にも影響が出かねない。何より、A男の心がさらに傷つき、擦り切れてしまう。そう確信した私は、夫婦としてやり直す選択肢を捨て、離婚に向けて、今後の生活やA男の進学費用について話し合うことを決めました。
私が息子を守ると決めた日
話し合いが始まってから数日、A男はどこか不安そうでした。家族の形が変わってしまうかもしれない、という心配もあったのだと思います。
私は改めて、A男ときちんと向き合いました。
「つらい思いをさせてごめんね。母さんは、A男との生活を一番に守るからね」
するとA男は、小さく首を振り「俺こそ、母さんが頑張ってくれてたのに、何も知らないで疑うようなこと言ってごめん。俺、母さんを応援するから」と言ってくれました。
傷つきながらも、私を気づかってくれる息子のやさしさに、涙が出そうになりました。この子の未来を守るために、私がしっかりしなければと思いました。
離婚は決して簡単なことではありません。だからこそ私は、A男が安心して学び、暮らせる環境を整えることを最優先に、夫と話し合いを進めました。
これからは、大切な息子にこれ以上不安な思いをさせないよう、私自身も心穏やかに笑顔でいられる暮らしをつくっていきたいと思っています。
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家計のために働き続けていた主人公でしたが、その事情を知らない息子は、夫の言葉によって誤解を抱いてしまいました。夫婦の問題を子どもに背負わせるべきではない一方で、黙っていることで真実が見えにくくなることもあるのかもしれません。息子の不安に向き合い、自分たちの暮らしを守ろうと決意した主人公の姿が印象的なエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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