10年以上も苦楽をともにした私たちには、それなりの絆があると信じていました。これからも良い関係でいたいと願い、夫の好物を作って帰りを待っていたある日のこと。夫が突然、耳を疑うようなことを言い出したのです。
夫の告白
その日、夫は神妙な顔で帰宅すると、食卓に並べた好物にも手をつけず、「大事な話がある」と切り出しました。何か仕事で問題が起きたのかと思いましたが、夫の口から出たのは、信じられない言葉でした。
「真実の愛に目覚めたんだ……」
つまるところ、夫は私以外の女性と交際しており、その女性と一緒になりたいから離婚してほしいと言うのです。ここ数カ月、急に増えた残業や休日出勤も、すべて女性と会うための嘘でした。
「どうして? いつからなの?」私が尋ねても、夫は早く話を終わらせたそうにするばかり。その無責任な態度を見ているうちに、私の中に残っていた夫への信頼が崩れていきました。
子どもはおらず、私も仕事をしているため、生活面で夫に頼る必要はありません。私は、離婚する方向で話を進めることにしました。
とんでもない人もいるものだ…
翌日、離婚について実家の母へ話すため、夫の職場近くにあるカフェで待ち合わせをしました。母は驚きながらも、「あなたが決めたことなら応援する」と言ってくれました。
少し気持ちが落ち着いたころ、近くの席に座っていた女性の大きな声が聞こえてきました。女性は小さな子どもを連れていましたが、子どもの様子をほとんど気にかけず、スマートフォンで誰かと話し続けています。
「親が子どもを預かってくれなくてむかつく」
「今度の彼氏は気前がよくて、またバッグを買ってくれるって」
聞くつもりはありませんでしたが、声が大きいため、会話の内容が自然と耳に入ってきました。退屈した子どもがぐずり始め、母がやさしく微笑みかけると、女性は不機嫌そうに母を睨みました。
「うちの子に何か用ですか? イヤミですか?」母にはそんな意図はありません。あまりに理不尽な態度に気分が悪くなり、私たちは店を出ました。
長年連れ添った妻と運命の相手、どちらを信じる?
それから数日後。私が引っ越しに向けた荷造りをしていると、夫が予定より早く帰宅しました。そしてあろうことか、「紹介したい人がいる」と、交際相手を部屋へ連れてきたのです。
離婚成立前に相手を家に上げる神経も信じられませんでしたが、渋々玄関へ向かってさらにあ然としました。そこに立っていたのは、先日カフェで遭遇したあの女性だったのです。
女性も私の顔を覚えていたのか、気まずそうに目をそらします。私はすぐに、カフェで女性が話していた「気前のいい彼氏」とは夫のことだったのだと気づきました。さらに、女性がカフェで連れていた子どものことが気になり、私はあくまで自然に夫に尋ねました。
「その人って、子どもはいるの?」すると夫は少しだけ間を置いてから、「いや、子どもはいないよ。時々、お姉さんの子を預かっているそうだ」ときっぱり答えました。
私は先日の出来事を夫に伝えるべきか迷いました。正直、自業自得だという思いもありましたが、長年一緒に過ごした情もゼロではありません。悩んだ末、私は彼女がカフェで子どもを放置して電話で話していた内容や、母にとった態度を包み隠さず夫に伝えました。
しかし、女性を信じ切っている夫は聞く耳を持ちません。「彼女がそんなことをするわけがない。離婚するのが悔しくて、嘘をついているんだろう」
10年以上一緒に過ごした私の言葉を、夫は嫉妬による嘘だと決めつけたのです。その姿を見て、私の中にわずかに残っていた未練も完全に消えました。
真実の愛を求めた末…
それから半年ほど経ったころ、共通の友人から元夫の近況を聞かされました。なんと元夫は、すでに彼女と別れ、2度目の離婚をしたというのです。聞けば、「姉の子をよく預かっている」と言っていたあの子は、本当は彼女自身の子どもだったというのです。
再婚してすぐ、彼女は子育ての大半を元夫に任せきりにし、自分は頻繁に出かけるようになったとのこと。さらに、元夫が新生活のために用意していたなけなしの貯金も、彼女のブランド品や遊びのために使い込まれ、あっという間に生活が立ち行かなくなったそうです。友人は「もしかしたら、困った元夫からあなたに連絡が来るかもしれないよ」と忠告してくれました。
あれほど自信満々に「運命の人」と言い切っていたのに、あまりの結末に呆れてしまいます。人生100年時代と言われる昨今、私は過ぎたことに囚われず、自分の足で新しい人生を歩んでいくと決めています。
すでに電話番号は変え、元夫の連絡先もブロックしました。共通の友人にも、新しい連絡先は絶対に教えないよう、固く口止めしています。
◇ ◇ ◇
夫婦の信頼関係は、日々の積み重ねで成り立つものです。配偶者がいながら別の相手と関係を持つことは、その信頼を大きく傷つける行為ですし、相手の言葉だけを信じて妻を責めることも、深い溝を生む原因になります。
誰かに心を動かされることがあったとしても、その感情のままに行動してよいわけではありません。大切な決断をするときほど、一度立ち止まり、自分の行動が誰を傷つけるのかを冷静に考えたいですね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
腹立つけどどうにもできない