パワハラ上司の理不尽
僕は、部長から理不尽な態度を取られることがよくありました。部長は、ひと言で言えば「部下の手柄は自分のもの、自分のミスは部下の責任」を地でいくような人だったのです。
特に若手で、理不尽な要求にも反論せず黙々と仕事に取り組む僕は、彼にとって格好の標的だったようで……。僕が徹夜で仕上げた企画書の表紙だけを自分の名前に書き換えて役員会議に提出したり、自分が取引先への発注数を間違えた際には「□□(僕)の確認漏れです」と僕に責任をなすりつけたりするのは日常茶飯事でした。
連日の理不尽な説教や雑用の押し付けに心身ともにすり減っていましたが、今は実力をつける時期だと自分に言い聞かせ、何とか耐え忍んでいました。
取引先の前でもさんざんな扱い
ある日の午後、A社長(義兄)を迎えての重要な新規プロジェクトの打ち合わせがありました。部長はAさんの前ではこびへつらい、満面の笑みで揉み手をしていました。一方で、打ち合わせに同席していた僕に対しては、わざと見下すような態度で……。お茶出しから資料のコピーまで、「早くしろ!」と僕を顎で使って走らせていました。
さらに、プレゼンの質疑応答の際、Aさんから専門的なことについて鋭い質問があったのですが、内容をあまり把握していない部長は言葉に詰まっていて……。すかさず僕が資料を提示して回答すると、部長は面白くなかったのか、鼻で笑いながらこう言い放ちました。
「お見苦しいところをお見せしました。うちの□□は本当に要領が悪くて、僕がこうやってフォローしないと使い物にならないんです」。Aさんは静かにうなずきながら資料に目を落としていましたが、その目は決して笑っていませんでした。
ロビーでの予期せぬ遭遇
打ち合わせが終わり、一行でエレベーターを降りて1階のロビーへ出たときのことです。そこには、近くでの買い物を終え、仕事終わりのAさんと合流して夕食を食べる約束をしていた姉と姪の姿がありました。
Aさんが歩み寄り、「おーい、待たせたね。妻と娘です」と僕たちに紹介しました。すると部長は顔を紅潮させ、「おお、これは奥様! いつも社長には大変お世話になっております!」と大げさにお辞儀をしながらすり寄っていきました。
姉が愛想笑いを浮かべて会釈をしたその瞬間……。
「あ、おじちゃーん!」と姉の足元にいた姪が、満面の笑みで僕の元へ駆け寄ってきたのです。僕の足に力強く抱きつき「久しぶり! お仕事終わった? 今日、一緒に夕食食べるんだって!」と無邪気な声を響かせました。
明かされた真実に部長は
「え…? 知り合い…?」
予想外の展開に状況が飲み込めず、目を丸くしてフリーズしている部長に対し、姉が冷ややかな声で「ご挨拶が遅れました。いつも、弟が『大変お世話に』なっているそうですね」と言って……。
部長は「弟!?」と顔面蒼白になり、口をパクパクさせていました。その様子を見たAさんは静かに口を開き、
「我が社が御社と契約を続けているのは、現場の社員の皆さんの誠実な対応を信頼しているからです。しかし、先ほどの打ち合わせでのあなた自身の書類の不備、そして部下へのコンプライアンスを欠いた態度…目に余るものがありました」
と毅然とした態度で話し始めて、こう言い渡しました。
「このような体制の企業とは、今後の契約を見直させていただきますね」
事実を突きつけられ、しかも僕が「社長夫人の弟」だと知った部長は、ぐうの音も出ず、その場にへたり込んでしまいました。
部長の末路と僕のこれから
後日、Aさんからの正式なクレームと社内調査により、部長の数々のパワハラや手柄の横取りが明るみに出ました。彼は、すべてのプロジェクトから外されて降格処分となり、社内で完全に孤立していました。
僕は、これを機に区切りをつけて会社を退職。Aさんからは、自社への入社を強く勧められましたが、やはり自分の力で試練を乗り越えたいと丁寧に辞退しました。今は、自分の実力を正当に評価してくれる別の企業へ転職し、やりがいのある日々を送っています。
週末、姉の家で姪と絵本を読んでいたときのこと。あの日の姪の無邪気な「ファインプレー」を思い出して、スッと晴れやかな気持ちになりました。困難なこともありましたが、自分らしい誠実な選択をしてきてよかったと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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