移転後の苦労と、妻の裏切り
妻が新たに代表となり、私は現場のすべてを任されました。新しい土地では水質や気温、さらには設備もまったく違います。私は何度も試作を重ねてデータを取り、ようやく以前の味を保ちながらも、「新しい酒」として評価されるところまで持っていきました。
しかし、そんな私の努力をよそに、妻は酒蔵のPRを担当していた男性と不倫をしていたのです。彼は酒造りの経験が浅いにもかかわらず、「今どきは伝統より売り方だ」「俺なら話題になる酒を作れる」と豪語するような男でした。
妻もすっかり彼の言葉を信じ込み、ある日突然、私に離婚届を突きつけてきたのです。
「これからは彼に任せる。あなたはもう必要ないわ」
私は「移転後の酒造りはまだ安定していない。今、彼に任せるのは危険だ」と伝えましたが、妻はまったく聞く耳を持ちません。結果的に、私は離婚を承諾し、酒蔵を出ていくことになりました。
1年後の品評会で露呈した“異変”
それから1年後。私は知人の紹介で別の酒造会社に拾ってもらい、そこで酒造りを続けていました。そしてある日、日本酒の品評会で、元妻と浮気相手に再会したのです。
2人は今風のデザインのラベルと強気な宣伝で注目を集めていました。しかし、出品された酒は以前とは完全に別物。香りはぼやけ、後味には嫌な雑味が残っています。試飲した人たちの表情も、みるみる曇っていきました。
「まとまりが全然ないですね」
「移転後の環境に、酒造りの方法が合っていないのかもしれません」
厳しい評価を受ける元妻たちの姿を見て、私は納得しました。浮気相手は、私が残した記録を見よう見まねで使っていただけ。なぜその温度管理が必要なのか、なぜその工程を守らなければならないのかといった“本質”までは理解していなかったのです。
泣きつく元妻に告げた、私の答え
一方、私が新しい職場で手がけた酒は、品評会で高く評価されました。
「丁寧な造りがしっかりと伝わってきますね」
その言葉を聞いた元妻は、ようやく酒蔵の味を根底で支えていたのが私だったと気づいたようです。品評会の後、私のところへやってきて、「お願い、戻ってきてほしい」と泣きついてきました。しかし、私は静かに拒否しました。
「私を追い出した時点で、もう終わっているんだよ」
その後、味が落ちた元妻の酒蔵は、取引先からも次々と契約を切られ、厳しい目を向けられるように。あれほど豪語していた浮気相手は、あっさり責任を元妻に押しつけて逃げてしまったそうです。
一方の私は、自分の腕と経験を正当に評価してくれる新しい職場で、今日もやりがいを感じながら、新たな酒造りに励んでいます。
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地道な努力や経験を軽んじたり、表面だけを見て判断したりすると、大切なものを失ってしまうことも。身近な人の働きや支えを当たり前と思わず、感謝と敬意を忘れずにいたいですね。
【取材時期:2026年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。