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「親の工場を継ぐなんてラクでいいよな」合コンで高卒の私を見下す同級生。女性のひと言に慌てたワケ

父から、家電製品に使われる部品を製造する町工場の経営を引き継いだばかりの私。高校卒業後に町工場へ入ってから約20年、現場で技術を学びながら、営業や取引先との商談にも携わってきました。そんなある日、高校時代の同級生・E男から、久しぶりに電話がかかってきたのです。

 

久しぶりの同級生からの誘い

E男とは高校を卒業してから、ほとんど会っていませんでした。E男は大学卒業後、大手企業に就職していました。E男は高校時代から自分を大きく見せたがるところがあり、正直なところ、私はあまり気の合う相手だとは思っていませんでした。それでも、久しぶりの連絡に少し懐かしさを感じ、電話に出ました。

 

簡単に近況を話した後、E男が明るい調子で言いました。

 

「今度、久しぶりに会わないか? 知り合いも何人か来るからさ。食事でもしながら話そうぜ」

 

突然の誘いに戸惑いましたが、E男によると、昔の知人や仕事関係の人たちが集まる気軽な食事会なのだそうです。

 

「俺は仕事帰りになるけど、服装はどうしたらいい?」と私が尋ねると、E男は「堅い集まりじゃないから、普段着で大丈夫だよ。わざわざスーツを着てこなくていいから」と答えました。仕事が立て込んでいる時期ではありましたが、たまには昔の同級生と話すのも悪くないと思い、参加することにしました。

 

電話を切った後、E男に聞いた店の名前を検索してみると、カジュアルなイタリアンレストランのようでした。とはいえ私は念のため、襟付きのシャツに濃い色のジーンズ、革靴という格好で向かうことにしました。

 

まさか、肝心なことをE男が隠しているとは、このときは考えてもいませんでした。

 

個室で知った食事会の正体

約束の金曜日、仕事を終えた私は、E男から指定されたイタリアンレストランへ向かいました。

 

店員に奥の個室へ案内されると、長いテーブルを挟んで、ジャケット姿の男性たちと、きれいなワンピースを着た女性たちが向かい合って座っていました。男女が向かい合って座っている様子を見て、私は「もしかして合コンなのか」と察しました。

 

困惑しながらも席に着くと、先に席に着いていたE男は、悪びれる様子もなく笑いました。

 

「気付いたか? これ、合コンだよ。最初から合コンって言ったら、お前は来なかっただろ? 男が1人来られなくなったから、ちょうどよかったんだよ」

 

久しぶりに会おうという話は、合コンの人数を合わせるための口実だったようです。

 

さらに驚いたのは、女性陣の中に見覚えのある人がいたことでした。M子さんは、うちの工場の取引先で購買や受発注を担当しており、私も仕事で何度もやりとりをしている女性です。

 

私たちはお互いの存在に気付き、驚いて顔を見合わせました。後にM子さんに聞いたところによると、女性側の参加者は知人の幹事が集めたそうで、M子さんは私以外の男性とはこの日が初対面だったといいます。

 

私がM子さんにあいさつをしようとしたそのとき、E男が私の服装を見て、わざとらしく笑いました。

 

 

人前で仕事を見下されて

「お前、本当に普段着で来たのか。ずいぶんラフだな」

 

襟付きのシャツに濃い色のジーンズという格好は、店では浮いている様子はありませんでした。ただ、ジャケットやきちんとしたシャツを着た男性たちと、ワンピースやオフィスカジュアル姿の女性たちに囲まれると、私だけがずいぶんラフに見えました。

 

しかし、普段着で構わないと言ったのは、E男です。それにもかかわらず、まるで私が場の雰囲気を読まずに来たかのような口ぶりでした。E男は女性たちに向かって、得意げに私を紹介しました。

 

「こいつ、高校の同級生なんだ。高校を卒業してからずっと、親父さんの工場で働いてるんだよ」

 

そこまでは事実でしたが、E男はさらに、笑いながらこう付け加えました。

 

「親の工場を継ぐなんてラクでいいよな。俺みたいに苦労して大手に入らなくてもいいんだから」

 

大学を卒業して大手企業に勤める自分と、高校卒業後すぐに町工場で働き始めた私を比べているような口ぶりでした。E男の得意げな態度を見ているうちに、私は、自分より地味に見える人間を隣に置き、自分を良く見せたかったのではないかと思えてきました。

 

とはいえ、ここで言い争っても時間の無駄です。「食事会の内容も、服装についても聞いていた話と違う。悪いけれど、私は帰るよ」と告げて席を立とうとすると、M子さんが「社長、待ってください」と私を引き留めました。そして、E男に向かって「今の紹介の仕方は失礼じゃないですか?」と言いました。

 

この方は、うちの会社が取引している工場の社長ですよ。難しい仕様の相談にも対応してくださっていて、うちの社内でも頼りにされています。学歴や勤務先だけで、人の仕事を判断するのは違うと思います」

 

M子さんの言葉に、E男は慌てた様子で、「冗談だよ」「そんなに真剣に受け取るなよ」と言い訳を始めました。

 

すると、同席していた男性の1人が、「それは冗談で済ませる話じゃないと思う」と静かに言いました。ほかの参加者もE男に同調することはなく、個室には気まずい沈黙が流れました。

 

仕事への誇りを再確認して

私はその場で帰るつもりでしたが、M子さんから「せっかくお料理も用意されていますし、よろしければ一緒に食事をしませんか」と声をかけられました。

 

E男には腹が立っていましたが、すでに人数分のコース料理が用意されており、M子さんやほかの参加者に気をつかわせたくもありませんでした。私は少し迷った末、そのまま席に残ることにしました。

 

食事が始まると、ほかの参加者たちは私の仕事について興味を持って質問してくれました。私は町工場で作っている部品や、父から経営を引き継いだ経緯について、差し支えない範囲で話しました。一方、E男が会話に加わろうとしても、ほかの参加者の反応はどこかよそよそしく、E男自身も居心地が悪そうでした。

 

その後は大きなトラブルもなく食事を終えましたが、二次会の話は出ず、その場で解散となりました。私は自分の分の代金を支払い、皆にあいさつをして帰宅しました。

 

数日後、E男から「この前は悪かった」とメッセージが届きました。しかし、その後には「少しからかっただけなのに、周りからあそこまで言われるとは思わなかった」と書かれていました。自分の言動の何が問題だったのかは、あまり理解していないようです。私は返信せず、それ以降、E男とは連絡を取っていません。

 

今回の出来事を通じて、学歴や会社の規模だけを切り取って人を判断することの乱暴さを改めて感じました。一方で、日々の仕事を見てくれている取引先の言葉から、長年積み重ねてきたものの大切にも気付かされました。

 

私たちが作る部品は小さくても、家電製品の一部となり、人々の暮らしを支えています。これからも、父や従業員たちが築いてきた技術と信頼を受け継ぎ、自分の仕事に誇りを持って工場を守っていきたいと思います。

 

--------------

学歴や勤務先を比べ、自分を大きく見せようとしたE男。しかし、日々の仕事に誠実に向き合う主人公の姿は、取引先にきちんと伝わっていました。仕事への姿勢や積み重ねが、思わぬ場面でその人の信頼を支えることもあるのだと感じるエピソードです。

 

 

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

 

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ライターベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班

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