夫が隠していた叔父への援助
夫の叔父は、亡くなった義父の弟にあたる人です。現在は50代半ばで、親族の間でも何かと心配されている存在だと聞いていました。
義母の話では、叔父は若いころ、義父の実家が近かったこともあり、父を亡くした夫の遊び相手になってくれたり、進学や就職の相談に乗ってくれたりしたこともあったそうです。夫にとっては、父親代わりのように慕っていた時期もある相手でした。
けれど、年齢を重ねるにつれて仕事が長続きしなくなり、ギャンブルにお金を使ってしまうことも増えたのだとか。夫が社会人になったころからは、今度は叔父のほうが夫にお金を借りようとするようになったそうです。
夫に確認しても、返ってくるのは「お金は渡していないよ」のひと言だけ。けれど生活費用の口座からまとまった額が引き出されていたり、夫の説明があいまいだったりして、一緒に暮らしていれば違和感を覚えることもありました。
私は「本当に渡していないならいいけれど、家計に関わることだから、もしお金を渡すなら事前に相談してほしい」と、何度か伝えていました。
私は、叔父との関係を頭ごなしに否定したいわけではありませんでした。ただ、夫婦の生活費に関わることを私に隠したまま続けるのは違う。そう感じていたのです。
法事の席で見えた叔父の本性
そんなある日、夫の実家で法事がおこなわれ、親族が集まりました。私たち夫婦は結婚式を挙げず、両家へのあいさつも近しい家族だけで済ませたため、私は夫側の親族とはほとんど顔を合わせたことがなく、叔父を含めて、直接顔を合わせるのが初めての人も少なくありませんでした。
出迎えてくれた義母は、いつも通りやさしい笑顔でした。義母は私にも気をつかってくれる人で、義実家で唯一、気兼ねなく話せる存在です。
「お義母さん、こんにちは。何かお手伝いしますね」と言って台所へ向かおうとしたとき、奥の部屋から大きな声が聞こえてきました。
「今日は飲むぞ! せっかく集まったんだから、遠慮するなよ!」
「誰だろう……」と思っていると、義母から、大声の主は叔父だと教えられました。法事の後の会食とはいえ、叔父はすっかり気が大きくなっている様子。義母も困った顔をしていました。
さらに叔父は夫を見つけると、「お前も飲めよ」と声をかけました。夫は「車で来ているから」と断ったのですが、叔父は笑いながら「奥さんに運転してもらえばいいだろ」と言いました。すると夫は、少し迷っただけで「じゃあ少しだけ」とお酒を飲み始めてしまったのです。
帰りに私が運転すること自体は構いませんでした。夫の親族の集まりですし、夫が少しお酒を飲みたい気持ちもわかります。ただ、叔父が私を当然のように運転手扱いしたこと、そして夫が私にひと言も確認せずに飲み始めたことが、引っかかりました。
そしてそれ以上に、夫が叔父に強く言われるとすぐ流されてしまうことに不安を感じました。
その後も私は、親戚へのあいさつをしたり、叔父にお酌を求められたりと、落ち着かない時間を過ごすことに。義母の手伝いを口実に台所へ下がると、ようやく少し息がつけた気がしました。
夫の本音に、義母が声を上げた
ところが、居間から聞こえてきた叔父の大声に、私は思わず手を止めました。
「お前の奥さん、愛想がないな。服も地味だし、あれじゃ酒がうまくならないだろう」
法事の席に合わせて身だしなみも控えめにしていただけですし、お酌もできる範囲で対応していたつもりでした。あまりの言い方に、悔しさで胸がいっぱいになりました。
さらにショックだったのは、その後に聞こえてきた夫の声でした。
「たしかに、あいつは地味なんだよな。家にいるだけなのに、金のことになると細かいしさ。この前だって、叔父さんに少し渡しただけで、家計がどうとか言ってくるんだよ」
私は耳を疑いました。夫は叔父にお金を渡していないと言っていたはずです。やはり陰でお金を渡していた上、そのことを心配した私を悪者のように言っていたのです。さらに、専業主婦であることを見下すような言い方までされ、もう黙っていることはできませんでした。
私は台所を出て、夫の前に立ち「ちょっと」と2人の会話に割って入りました。
「そんなふうに思っていたんだね。私に仕事を辞めてほしいと言ったのはあなたでしょう。それに、家計のことを心配して何が悪いの?」と私が言うと、夫は一瞬言葉に詰まりました。しかし、すぐに不機嫌そうな顔になり、「親戚の前で、そういう言い方をしなくてもいいだろ」と返しました。
すると叔父まで、「身内を少し助けるくらいいいだろう。家族なんだからさ」と口を挟んできました。
その瞬間、義母が静かに、けれどはっきりと「いいかげんにしなさい」と声を上げました。
居間が一瞬、静まり返りました。義母は叔父に向かって「自分の生活を立て直そうともせずに、おい夫婦のお金を当てにするのは間違っています。これ以上、うちの息子夫婦に頼るのはやめてください」と言いました。
そして夫にも厳しい表情を向け、「あなたも同じです。奥さんを守るどころか、親族の前で見下すようなことを言うなんて、夫として恥ずかしいと思いなさい」と言い放ちました。
夫の顔は青ざめ、叔父も何か言い訳を探しているような様子でしたが、周囲の親戚も黙ってはいませんでした。
「やっぱり、あちこちに頼っていたのか」
「おいにまでお金を借りようとしていたなら、さすがに見過ごせない」
親戚たちの反応を見る限り、叔父の金銭トラブルは以前から問題になっていたようです。義母はこれまで、夫が叔父を助けたい気持ちもわかるからと、口を出しすぎないようにしていたそうですが、結婚後の私にまで負担が及ぶことをずっと心配していたと話してくれました。
その場は義母が収め、叔父には今後、うちの息子夫婦にお金を頼らないようきっぱり伝えました。夫にも「一度頭を冷やしなさい」と言い、会食は予定より早くお開きになりました。
私が選んだ、これからの人生
親戚が帰った後、義母は私に深く頭を下げました。
「ごめんなさい。もっと早く止めるべきだったのに、あなたにつらい思いをさせてしまったわね」
私は涙をこらえながら、「お義母さんが言ってくださって、救われました」と伝えました。
そして後日、夫と改めて家計を確認すると、結婚後も叔父に何度もお金を渡していたことがわかったのです。以前から家計の動きに違和感はありましたが、夫は叔父にお金を渡していないと言い続けていたため、詳しい使い道までは把握できていませんでした。
しかし、フタを開けてみると、夫が私に隠れて叔父に渡していたお金は、家計にとって決して小さな額ではありませんでした。
その後、夫とは、叔父に隠れてお金を渡していたこと、そして法事の席での私への発言について何度も話し合いました。夫は法事での発言については「酒の席で言い過ぎただけ」と弁解していましたが、叔父への援助を隠していたことについては、最後まで悪いことだと思っていない様子でした。
私がつらかったのは、お金のことだけではありません。夫が私に仕事を辞めるよう望んだにもかかわらず、親族の前では「家にいるだけ」「金に細かい」と見下すように話していたこと。そして話し合いの場でも、私の気持ちより叔父への義理を優先しようとしたことでした。
この先も同じことを繰り返すのではないかと思うと、夫婦として暮らし続ける自信がなくなりました。悩んだ末、私は離婚を選びました。
私は結婚前に勤めていた職場へ相談し、時間はかかりましたが仕事に復帰することができました。ブランクへの不安はありましたが、自分の力で生活を立て直していくうちに、少しずつ前向きな気持ちを取り戻せるようになりました。
義母とは、今はもう義理の親子ではありません。それでも、時々連絡を取り合い、お茶をする関係が続いています。夫婦としての縁は終わりましたが、あのとき義母が真っすぐ味方をしてくれたことは、今でも忘れられません。自分を軽く扱う人のそばに居続ける必要はない。そう気付けたことが、私にとって大きな転機になりました。
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夫婦の家計に関わることを、相手に隠したまま続けてしまうと、信頼関係は少しずつ崩れていくもの。ましてや、家族や親族への思いを理由に、パートナーの不安を軽く扱ってしまえば、心の距離はさらに広がってしまいます。大切なのは、誰かを助けたい気持ちを持つこと以上に、まず夫婦で向き合い、納得できる形を一緒に考えることなのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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