夫が単身赴任して間もないころは、毎日のように電話やメッセージで連絡を取り合っていました。ところが半年ほど経つと、私から電話をかけても出ないことが増え、メッセージを送っても返信はほとんどありません。
夫の誕生日に「おめでとう」と送ったメッセージも既読にならず、折り返しの電話もなし。娘が一生懸命描いた夫の似顔絵と手紙も送りましたが、それに対する返事もありませんでした。
心配のあまり、私が取った行動
夫の誕生日があった週の休日、私は娘と2人でケーキを囲み、写真を撮りました。そして「パパ、お誕生日おめでとう」と文字を入れて夫に送ったのですが、やはりその日のうちに返信はありませんでした。
数日経って、ようやく返ってきたのは「ありがとう」の一言だけ。私が心配して電話をしても、出てくれません。何度も何度も電話をかけると、「今忙しい」とだけメッセージが送られてきました。
そのときの私は、「体調でも崩しているのではないか」「私たちを心配させないように無理をしているのではないか」と、本気で心配していたのです。
翌日、いてもたってもいられなくなった私は、仕事を急きょ休み、娘を保育園へ送り届け、実家に万が一のときのお迎えを頼むと、その足で新幹線とタクシーを乗り継ぎ、夫の単身赴任先へ。平日なので会社にいるとは思いましたが、もし寝込んでいたらと不安になり、直接自宅を訪ねることにしたのです。
しかし、そこで見た光景は、私の想像をはるかに超えたものでした。
インターホンを押すと、部屋から若い女性が部屋着姿で現れたのです。
その瞬間、頭の中が真っ白になりました。どうして今まで疑わなかったのだろう――夫を信じ切っていた自分が情けなくなりました。
私を見るなり、一瞬驚いたような表情を浮かべた女性。とっさに私は「近所に住んでいる者ですが、郵便物が誤配されていたようで……」と言い、夫に送るつもりがポストに投函しそびれていた、娘の手紙を取り出しました。
とんでもない告白
少し安心したように手紙を受け取った女性。私はすかさず世間話を装い、「すごくきれいな方ですね! スタイルが良くて、モデルさんかと思っちゃいました」と大げさに褒めちぎりました。
女性はあからさまにうれしそうな表情を浮かべ、すっかり気を良くした様子。
そこで、「先日ご主人にあいさつしたとき、単身赴任だとおっしゃっていたような……。奥様もこちらに来られたんですか? 私は独身なので、素敵なご夫婦で羨ましいです」と伝えた私。
すると女性は、私が近隣に住む独身女性だと信じ切って完全に油断したのか、悦に入った様子で、「私、奥さんじゃなくてぇ〜。実はここだけの話、不倫なんです」と暴露したのです。私は驚きを隠しながらも、平静を装いました。
さらに私が「やっぱり! 部屋着姿でそれだけ垢抜けてるから、タダ者じゃないと思ってました。SNSとかやっているんですか?」と話を続けると、女性は「私たちお友だちになれそうね♪」とますますうれしそうに自分のSNSアカウントを教えてくれたのです。
帰る道中でそのアカウントの投稿を見ると、夫と旅行へ出かけた写真や親しげに寄り添う写真がたくさん……。不倫関係を自ら暴露するような女性と付き合っている夫に対して、ほとほと愛想が尽きてしまいました。
夫から届いた封筒
数日後――。
今後どうしようか考えあぐねていると、夫から封筒が届きました。
娘は「パパから何か届いた!」と大喜び。「ママ、開けて!」と無邪気にはしゃぐ姿を見て、私は嫌な予感を覚えながら封を開けました。
中に入っていたのは、離婚届。
一瞬、言葉を失いました。ところが娘は、「パパからお手紙だ! ママ、やったね!」と笑顔を向けてきたのです。
娘は夫から手紙の返事が来たのだと勘違いした様子。離婚届の意味を知らなかったことだけが、不幸中の幸いだったと思います。
実は、パパの元気な姿をあとで娘に動画で見せてあげようと、夫の家のインターホンを押す前にスマホで動画撮影を開始していた私。首からスマホを下げていたので、不倫相手の姿や「不倫なんです」という自白までもしっかり撮れていました。さらにSNSにも夫との旅行写真などが数多く投稿されており、不倫を裏付ける証拠は十分にそろっていたのです。
私は娘の前では何事もなかったように振る舞い、その後すべての証拠を携えてすぐ弁護士へ相談。内容証明郵便を送り、正式に離婚協議を進めることにしたのです。
家族を裏切った夫の末路
内容証明が届いた途端、夫から何度も電話がかかってくるように。しかし、私は一切応じませんでした。
すると夫は慌てて帰宅し、「どうして無視するんだ」と怒りながら詰め寄ってきたのです。私の連絡を何カ月も無視していた人が、よくそんなことを言えるものだと思いました。
夫は「離婚届は彼女が勝手に送った」と必死に弁解しました。実際、離婚届には夫の署名も押印もなかったため、不倫相手が送ってきたものだとしても不思議ではありません。しかし、たとえ離婚届を送ったのが不倫相手だったとしても、夫が家族を裏切った事実は変わりません。
そのことを伝えると、夫は急に態度を変え、「遊びだったんだ」「寂しくてつい……」と言い訳を始めたのです。さらには「ついてこなかったお前たちにも原因がある」「寂しくなければ、不倫なんてしなかった」と責任転嫁まで。
そもそも、わが家は私の収入のほうが多く、生活を維持するためには私が仕事を辞めるわけにはいきませんでした。その事情を知っていながら、「ついてこなかったのが悪い」と言われたことが何より悲しかったです。
その後も夫は謝罪することなく言い訳を繰り返しましたが、弁護士に間に入ってもらい、慰謝料と養育費をきっちり請求。言い逃れできない証拠を前に夫は降参し、支払いに追われ、不倫相手ともお金で揉めて自滅したようです。
こうしてすべてを失った夫と無事に離婚が成立し、今は娘と2人の生活をしています。夫より収入が多いとはいえ、決してラクな生活ではありません。しかし、もう誰かに振り回されることはありません。
これからは娘が安心して笑って暮らせる毎日を、一緒に築いていきたいと思っています。
◇ ◇ ◇
単身赴任によるすれ違いがあったとしても、不倫は決して正当化されるものではありません。信じて待ち続けた妻と幼い娘の気持ちを踏みにじった夫の行動は、家族の信頼を大きく壊す結果となりました。
信頼は日々の積み重ねで築かれる一方、失われるのは一瞬です。単身赴任という物理的距離があるからこそ、互いを思いやる姿勢や日ごろのコミュニケーションの大切さを改めて考えさせられるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。