数合わせで参加した合コン
私は高校時代の同級生・B田に頼まれ、合コンに参加しました。華やかな場はあまり得意ではありませんでしたが、「男性側の人数が足りない」と何度も頼まれ、断り切れなかったのです。B田は、地元で名の知られたメーカーに勤めており、勤務先の知名度や自分が担当する仕事について周囲に話すことが好きなタイプでした。
B田とは高校卒業後も時折連絡を取っていましたが、互いの仕事について詳しく話したことはありませんでした。
女性側として参加していたのは、A子さんとC美さんです。全員がそろったところで、B田は得意げに自己紹介を始めました。
「俺は、地元では結構知られているメーカーで働いているんだ。こいつは小さな町工場を経営しているんだよ」
私が小規模な製造会社を経営していることだけを知っていたB田は、冗談めかしてそう紹介しました。たしかに会社の規模はそれほど大きくありません。私は特に訂正せず、「製造業の会社を経営しています」とだけ伝えました。
「町工場」と聞いた途端に変わった態度
すると、A子さんが私を見ながら尋ねてきました。
「町工場って、大手メーカーの下請けですか?」
続いてC美さんも、笑いながら言いました。
「B田さんの会社とは、ずいぶん規模が違うんですね」
言葉づかいこそ丁寧でしたが、「町工場」と聞いた途端、私への関心を失ったように見えました。その後も、2人はB田にばかり質問を投げかけます。私は飲み物を口にしながら、黙ってその様子を見ていました。
勤務先や会社の規模を知りたがること自体が、悪いとは思いません。しかし、それだけで相手への態度を変える姿には、少し引っかかるものがありました。
翌朝から仕事の予定が入っていた私は、「明日は早いので、先に失礼します」と伝え、店を後にしました。
仕事の会議で思わぬ再会
しばらくして、私は自社のクッション素材を納入している座席メーカーから依頼を受け、航空関連企業との合同会議に出席しました。私の会社は、座席メーカーと試作や必要な評価を重ねた上で素材を提供しており、航空関連企業の担当者と直接顔を合わせるのは、この日が初めてでした。
会議の目的は、導入された座席について利用者から寄せられた意見を共有し、今後の改善点を検討することです。
会議室へ入ると、そこには先日の合コンに参加していたA子さんとC美さんがいました。2人は、利用者アンケートの結果をまとめ、サービス面から改善案を報告する担当者として出席していたのです。
私の姿を見た2人は、驚いたように顔を見合わせました。合コンでは私は会社名まで伝えておらず、A子さんとC美さんも、B田の話を聞くばかりで自分たちの仕事については明かしていませんでした。そのため、お互いにまさかこの場で再会するとは思っていなかったのです。
私は意外な再会に戸惑いつつも、軽く会釈をして会議に臨みました。
A子さんとC美さんからは、利用者アンケートの結果が報告されました。
「座席を長時間利用した方からも、以前より座り心地がよくなったという声が寄せられています」
「立ち上がる際の動作がしやすくなったという意見もあり、利用者からの評価はおおむね良好です」
2人の報告を聞き、会議を取りまとめていた責任者は満足そうにうなずきました。
「今回のアンケート結果を見る限り、クッション素材の変更も、座り心地の評価向上につながったと考えています」
すると、座席メーカーの担当者が私のほうを向き、「こちらの会社には、何度も試作品を製作していただきました。想定される利用者の体格や着座時間に加え、耐久性まで考慮し、細かな調整を重ねていただきました」と言いました。
さらに責任者も「こちらは、この分野で高い技術と実績を持つ企業です。今回の設備改善でも、重要な役割を担っていただきました」と続けました。
その言葉を聞いたA子さんとC美さんは、驚いたように私を見ました。合コンでは、B田から「小さな町工場の社長」と紹介されただけで、私の仕事を大したものではないかのように扱っていた2人。しかし、自分たちが高く評価していた設備の快適さを支えていたのは、まさにその「町工場」が開発した素材だったのです。
2人の驚いた表情を見ながら、仕事そのものを見てもらえたことに、私は静かな手応えを感じていました。
まとめ
会議が終わった後、A子さんが私のもとへやって来ました。
「先日は、会社の規模だけで決め付けるようなことを言ってしまい、申し訳ありませんでした」
C美さんも気まずそうに頭を下げます。
私は、「製品を評価していただけたなら何よりです」とだけ答えました。
今回の会議で、私は合コンでの出来事を持ち出したり、2人を言い負かしたりするつもりはありませんでした。ただ、私が積み重ねてきた仕事について、座席メーカーや利用者からの評価を伝えてもらえたことをうれしく思いました。
会社の規模や知名度だけでは、そこで生み出されている技術の価値まではわかりません。「町工場」という言葉だけで仕事の内容まで決め付けていた2人も、自分たちの見方が一面的だったことを認め、謝罪してくれました。
私自身も、肩書きや会社の大きさだけで相手を判断せず、その人がどのような姿勢で仕事に向き合っているのかを見ていきたいと、改めて感じた出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※一部、AI生成画像を使用しています
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