楽しみにしていた人気の洋食屋
私が訪れたのは、地元では評判の洋食屋で、口コミでも高評価のお店です。近くに住んでいながら訪れる機会がなく、この日が初めての来店でした。
訪れたのは、お昼を少し過ぎた時間帯。ピークは過ぎていたようで、店内のお客さんは数組ほどでした。
朝から何も食べていなかった私は、お腹がぺこぺこ。ずっと気になっていたお店だったこともあり、運ばれてきたハンバーグに期待が高まります。
ところが、ナイフを入れた瞬間、思わず手が止まりました。中心部まで火が通っておらず、中は明らかに冷たい状態だったのです。
私はすぐに、近くにいた店員さんへ声をかけました。
「すみません。これは、もともとこういう仕上がりなのでしょうか?」
店員さんはハンバーグを見ると、一瞬戸惑ったような表情を浮かべました。そして、「少々お待ちください」と言って皿を持ち、厨房へ向かっていきました。
しばらくすると、厨房から店長が出てきて、「焼き直したんで」とだけ言い、ハンバーグを置いて立ち去ります。しかし、今度は表面が焦げて苦味が強く、最初とはまるで別の料理のようになっていました。
これ以上何かを言う気にはなれず、私は代金を支払い、お店をあとにしました。
ブログを見て絶句
お店を訪れた、数日後のことです。口コミを見返そうと検索していたところ、「店長ブログ」というページが目に留まりました。「どんなことが書かれているんだろう」と開いてみると……。
最新の記事には、大きくこう書かれていました。
「カスハラ被害に遭いました」
嫌な予感がして記事を開くと、冒頭にはこう書かれていたのです。
「〇月〇日、ランチタイムにご来店いただいた、緑色のトップスにベージュのバッグをお持ちだった女性のお客様へ」
思わず息をのみました。その日、私はまさにその服装で来店していたのです。名前は書かれていませんでしたが、「これは私のことだ」とすぐにわかりました。
さらに記事には、「何度も焼き直しを要求された」「スタッフに強い口調で文句を言われた」「営業妨害ともいえる迷惑行為だった」など、事実とはまったく違う内容が並んでいました。さらに、記事の最後には「もう二度とうちの店には来ないでください」と書かれています。
そもそも私は、焼き加減について確認しただけです。何度も焼き直しをお願いしたことも、高圧的な態度をとったこともありませんでした。
コメント欄には、「こういうお客さんは出禁でいい」「店長さんがかわいそう」という書き込みまであり、思わず涙があふれ出てしまいました。
真実を伝えに店へ
もうあのお店と関わりたくないという気持ちはありましたが、このままではどうしても納得できず、私はもう一度お店へ向かいました。ブログについて尋ねると、店長は「書いたことは事実です。もう来ないでください」と言い切り、まったく取り合ってくれません。
そこで私は、お店を運営する会社へ事情を説明し、調査をお願いしました。数日後、本部の担当者から連絡があり、防犯カメラの映像や当日の状況を確認したことを教えてくれました。
その結果、私は終始落ち着いて話しており、焼き直しを何度も要求した事実も、店員へ強い口調で話した事実もなかったそうです。
さらに、当日対応してくれた店員さんも事情を説明してくれました。
「あの日、お客様に声をかけられてハンバーグを確認したところ、火の通りが足りないように見えました。ただ、自分では判断できなかったため、店長へ確認したんです」
そして、「店長からは『あとは俺が対応するから』と言われました」とも話してくれたそうです。
ブログは削除、店長も謝罪
その後、問題の記事は削除され、運営会社から正式な謝罪を受けました。店長は個人の判断でブログを更新していたそうで、事実と異なる内容を掲載したことについて厳重な処分を受けたと聞いています。
ずっと気になっていた人気店だっただけに、とても残念な出来事でした。
確認のために一言尋ねただけで、「カスハラ」と決めつけられ、ネット上で悪者にされてしまったことは、今でも忘れられません。
ネットの情報は、一度広まると多くの人が事実だと思い込んでしまいます。だからこそ、一方的な思い込みで相手を傷つける発信は、とても怖いものなのだと実感した出来事です。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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