受付にいたのは、まさかの元カノ
日ごろ頑張ってくれている社員への感謝を込め、全員でシンガポールへ社員旅行に行くことを計画したのです。
ある日の仕事帰り、私は作業着のまま、最寄りの旅行代理店に立ち寄りました。店内に入り、受付へ向かうと……なんと、そこにいたのは数年前に別れた元カノだったのです。
彼女と別れた最大の理由は、あまりにも金遣いが荒かったこと。交際を始めたころ、私が「工場を経営している」と伝えると、彼女は目の色を変えて食いついてきました。しかし、工場の規模が小さいとわかるや否や、「なんだ、ただの町工場じゃん」と鼻で笑い、事あるごとに嫌味を言うようになったのです。
その一方で、「社長の彼女なんだから」と、高級ブランドのバッグやアクセサリーを平然とねだってくる始末。付き合いきれないと思い、私から別れを告げたのでした。
作業着姿の私を見下す元カノ
そんな元カノと、まさかの再会。彼女も私に気づくと、作業着姿の私を上から下までなめるように見たあと、鼻で笑いました。
「え、何その格好? 相変わらず底辺みたいね(笑)」
さらに、こちらの用件も聞かないまま、食い気味にこう言い放ったのです。
「あー、ごめんね! うちでは貧乏旅行なんて扱ってませ〜ん!」
別れたことを根に持っているのか、彼女は完全に私を見下し、まともに話を聞こうともしません。ここで言い争っても時間の無駄だと判断した私は、何も言い返さず、そのまま店をあとにしました。
「私が担当する!」元カノが割り込み…
それから数日後。私は商談帰りのスーツ姿で、再び同じ旅行代理店を訪れました。今回は元カノを避け、感じのよさそうな別の女性スタッフに声をかけます。
「社員旅行で、シンガポールへ行きたいんです。15人分の手配をお願いします」
航空券に加え、宿泊先には一流ホテルを希望しました。さらに、今後も海外出張の際には継続的に利用したいと伝えたのです。
そのやりとりを横で聞いていた元カノは、15人分の海外旅行に加え、今後の継続利用も見込める大口の相談だと知ると、みるみる顔色を変えました。そして慌てて駆け寄ってくると、女性スタッフを押しのけるようにして、強引に割り込んできたのです。
「あ、その案件、私が担当するから!」
店長の前で元カノが横取りに失敗
目の色を変え、急に愛想よく振る舞い始めた元カノ。しかし、私は彼女の目をまっすぐ見て、きっぱりと断りました。
「お断りします。先日、私のことを『底辺』と呼び、『貧乏旅行は扱っていない』とも言いましたよね。そんな失礼な態度を取る人に、大切な社員たちの旅行を任せることはできません」
私の言葉を聞いた元カノは、先日の出来事を思い出したのか、ハッとした表情を浮かべて言葉を失いました。実は、この一部始終を奥のデスクにいた店長が見ていたのです。店長はすぐに駆け寄ると、元カノの接客態度を厳しく注意しました。
そして私に向き直り、「先日は、スタッフが大変失礼な対応をしたようで、誠に申し訳ございません。今回の社員旅行はもちろん、今後の法人利用につきましても、こちらのスタッフが責任を持って担当いたします」と深く頭を下げました。
その結果、最初に声をかけた女性スタッフが、引き続き私の担当を務めることになりました。横取りに失敗した元カノは、顔を真っ赤にしたまま、悔しそうに黙り込み……。
その後、無事に実現したシンガポール旅行は、社員たちから大好評。楽しそうな社員たちの姿を見ながら、これからもみんなと力を合わせ、工場をさらに成長させていこうと決意を新たにしたのでした。
◇ ◇ ◇
服装だけで相手を判断し、見下すような態度を取るのは失礼ですよね。店員とお客さまという関係であっても、信頼は欠かせません。どちらの立場でも、相手の気持ちを考えた言動を心がけたいですね。
【取材時期:2026年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。