単身赴任が始まって2年ほどたったころ――。今後の不妊治療について夫と話し合おうとしても、仕事を理由にはぐらかされるようになっていました。
あるとき、夫が久しぶりに帰宅する日に合わせ、3カ月も前から夫婦で受診できる専門クリニックを予約。ところが、そのことを伝えると、夫は露骨に嫌な顔をし、「仕事で疲れているのに、そんなところへ行けるか」と受診を拒んだのです。
「お前じゃなければ…」夫の言葉に心が折れて
理由を問い詰めると、夫は「そもそも俺たちは相性が悪いんだよ」とひと言。さらに、「相手がお前じゃなかったら、とっくに子どもができていると思う」とまで言われ、私の心はぽっきりと折れてしまいました。
「わかった……。もう不妊治療は中止にするよ」と告げると、夫は「ああ、それがいいな!」「どうせ、そんなことにお金を使っても無駄だし!」と吐き捨てました。私が泣き出すと、夫は「はいはい、また被害者ぶって」「俺のほうがつらいんだからな!」と、さらに追い打ちをかけてきたのです。
「私は産んでないけど?」夫が青ざめたワケ
3週間後――。「おい、今すぐ病院に来い!」「こんなときに、どこにいるんだ!?」珍しく夫から連絡があり、驚いて何も言えずにいると、さらに私をなじってきました。
「お前が産んだ息子の手術なんだぞ!?」
「母親がそばにいなくてどうするんだ!」
「私、子どもなんて産んでないけど……?」
「え?」
私の言葉で、夫はようやく相手が私だと気づいたようでした。戸惑う夫に、「産んでもいないのに、子どもとか母親とか、何の話?」と問い詰めると、「違うんだ!」「今の話は全部忘れてくれ」と無理なことを言います。
私は思わず吹き出しました。「忘れられるわけないでしょ」「いつの間に、私以外の女性との間に子どもをつくったの?」「早く説明してよ」
さらに問い詰めると、夫はついに開き直りました。「ああ、もう! そうだよ! 隠し子がいるんだよ!」「全部お前が悪い! お前が妊娠しないから!」「今からこいつの母親をやれ!」「病院に来て手術に付き添え!」
夫によると、浮気相手が産んだ子どもは生まれつき体が弱く、手術が必要とのこと。しかし、浮気相手とは今朝から連絡がつかず、どこにいるのかわからないといいます。その話を聞き、これまで「夫との子どもがほしい」と悩んできたことが、急にばかばかしく思えてきました。しかも夫は、隠し子を私に押しつけようとしているのです。もう笑うしかありませんでした。
「あなたの子どもでしょ? だったら、あなたが責任を持って面倒を見なよ」「手術が無事に終わるといいね」そう言って、私はやり取りを終えました。
「奥様ですよね?」突然の電話で知った真実
1時間後――。見知らぬ番号から着信があり、おそるおそる出ると、「あの……彼の奥様ですよね?」と女性の声が。電話の相手は、夫の浮気相手でした。
彼女は、独身と偽る夫と単身赴任先の居酒屋で出会い、交際を始めたそうです。間もなく妊娠し、喜んで報告したものの、夫は苦い顔。子どもが生まれたあと、夫は認知したものの、入籍を迫っても「まだ早い」「今じゃない」とはぐらかされ続けたといいます。
「子どもの病気がわかった途端、彼は豹変したんです……」「『お前が産んだんだから、全部お前の責任だ』って。産後でボロボロなのに、育児も家事も看病も全部押しつけられて……」
その後、夫のスマホを見て妻がいることを知り、私の連絡先を控えたそうです。混乱した彼女は、手術当日の朝、夫に何も告げずに家を出たものの、今は病院に戻り、赤ちゃんのそばにいるといいます。
悪いのは、すべて夫です。「あとは私に任せてください。あなたの分も、あの人にきちんと責任を取らせますから」そう伝えると、彼女は「ごめんなさい」「ありがとうございます」と何度も繰り返したのでした。
夫と浮気相手を交え、話し合った結果
その後、私はすぐに義両親の家へ向かい、これまでの経緯をすべて話しました。そして義両親とともに新幹線に乗り、夫と浮気相手、その子どもがいる病院へ。浮気相手とは、夫と病院で鉢合わせできるよう、事前に落ち合う時間を打ち合わせていました。
夫はひどく動揺していましたが、私たちは近くのファミレスへ移動し、全員で話し合いました。その結果、私と夫は離婚することを決め、後日、慰謝料を請求することに。浮気相手も夫とは結婚せず、夫が子どもの養育費を支払うことで合意し、正式な手続きを進めることになりました。夫はこれまで見たことがないほど小さくなり、ただうなずくばかりでした。
このとき、浮気相手の子どもの手術が無事に終わり、経過も良好だと聞いて、ホッとしました。それから数年後、私はすてきな人と巡り会い、今では母として幸せに暮らしています。
◇ ◇ ◇
不妊や妊娠・出産に関する悩みは、どちらか一方だけが背負うものではありません。夫婦で話し合い、互いの気持ちを尊重しながら向き合うことが大切です。それにもかかわらず、妻を傷つけたうえ、自らの裏切りや親としての責任まで押しつけようとした夫の言動には呆れてしまいますね。
一方で、生まれてきた子どもに罪はありません。手術が無事に終わり、母親とともに新たな生活へ踏み出せたことにはホッとしました。夫は自分の過ちから逃げることなく、慰謝料や養育費をきちんと支払い、最後まで責任を果たしてもらいたいですね。
【取材時期:2026年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。