「お前は来なくていい」
夫と結婚して初めて迎えた夏休みのことです。
夫の実家は飛行機を使わなければ行けない距離にありました。私は夫婦そろってあいさつへ行くつもりで、早めに仕事の休みを取っていました。
航空券の手配について話をすると、夫は驚いたような顔でこう言ったのです。
「え、お前も来るつもりなの?」
夫によると、義母は「嫁がいると気をつかうし、飛行機代も余計にかかるから来なくていい」と言っているとのこと。実家では昔のように家族だけでゆっくり過ごしたいから、私まで帰省する必要はないというのです。
後日、義母にも直接電話をして気持ちを確認しました。しかし返ってきたのは、夫と同じ答えでした。
「息子だけ帰ってくれば十分よ。あなたまで来ると食事や寝具の準備もしないといけないから」
義母は悪びれる様子もなく、そう言い切ったのです。
結局、夫は私を残して一人で帰省しました。その後も夏休みになるたび、夫は一人で実家へ帰り、地元の友人と遊んだり、義母に世話をしてもらったりして過ごしていたようです。
私は義母の誕生日や母の日に贈り物をするなど、少しでも距離を縮めようとしました。しかし、お礼の連絡はいつも夫にだけ。夫に寂しさを訴えても、義母には悪気がない、私が気にしすぎていると言われるばかりでした。
何度歩み寄っても拒まれるうちに、私は義実家に受け入れてもらうことを諦めました。
娘が生まれると態度が一変
結婚から数年後、私は娘を出産しました。
それまでほとんど連絡をしてこなかった義母は、娘が生まれてから、頻繁に写真や動画を求めるようになりました。
そして、娘が生まれて初めての夏休みが近づいたころです。夫は何の相談もなく、娘を連れて実家へ帰るつもりでいることを伝えてきました。
私も一緒に行くのかと尋ねると、夫は面倒そうに答えました。
「母さんは孫に会いたいだけだから、お前は来なくてもいいって。俺が娘を連れて行くよ」
そのとき娘はまだ生後数カ月。長時間の移動だけでも負担がかかります。
それに夫は、おむつ替えも寝かしつけもほとんどしたことがありません。一人で世話ができるのか確認すると、実家に着けば義母がいるから問題ないと言いました。
娘のことを第一に考えてほしい
私は夫の言葉を聞いて、静かに答えました。
「娘は連れて行かせない」
夫は、義母が楽しみにしているのに、孫に会わせないのはひどいと私を責めました。
私は義母と娘を会わせたくないわけではありません。こちらへ来てもらうのであれば、拒むつもりはないと伝えました。しかし夫は、「母さんが遠くまで移動するのは大変だ」と譲りません。
私は、義母の都合ではなく、娘のことを第一に考えてほしいと伝えました。まだ生後数カ月の娘を、義母の希望を優先して母親と離すことには納得できなかったのです。
それだけではありません。これまで私は「家族だから一緒に過ごしたい」と思って義実家へ行こうとしてきました。それでも夫や義母から「来なくていい」と言われ、家族の輪から私だけ外されているような思いを何年も抱えてきたのです。
私は夫に、「このまま義母を優先し続けるなら、私たちは家族としてやっていけない」と、初めて本音を伝えたのです。
初めて家族で過ごした夏休み
私が本気だと知った夫は、その夜、義母へ電話をかけました。
義母は、孫に会わせないのは非常識だと怒ったようです。しかし夫は、娘のためにも連れて行くことはできないと伝えました。
その年の夏休み、夫は初めて実家へ帰らず、私と娘の三人で過ごしました。
おむつ替えやミルク、寝かしつけを一日中こなした夫は、育児の大変さを初めて実感したようです。そして、義母の気持ちばかりを優先し、私を家族として大切にできていなかったことを謝りました。
私はすぐにすべてを許すのではなく、これからの行動を見ていくと伝えました。
現在、夫は家事や育児を積極的に担っています。義母とはまだ距離を置いていますが、夫は自分たちの家庭を第一に考えてくれるようになりました。これからも、お互いを思いやりながら家族3人で歩んでいきたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう、固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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